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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第八十七話 パチパチしてや

魔導院はドーマの中心部に

位置していた。


城の様に水を蓄えた堀に

囲まれ外周を円形に壁が囲っていた。


出入口は一か所で橋は掛かりっぱなしだが

建物と比べて木製で脆弱だ。

いざと言う時は籠城するつもりなのか。


橋を渡った先で車を停める。

客車から下りて来た二人は

高い壁を見上げ考え込んだ表情だ。


「んー僕行かなくてもイイかな?」


分かる。

ドーマは俺が居心地が良い

これは反対にミカリンには

居心地の悪い場所だ。

そして、その中心部

この魔導院から感じる何かは

まさに根源ではないかと思える程だ。


完全人化していても

ミカリンには嫌だろう。


「ああ、無理しないでイイぞ

パレードでも見てこい」


俺は快諾する。

使いはするものの

魔道そのものの探求に

ミカリンは興味が無いようだ。


「ゴメンね。そうさせて」


謝るミカリンの横で

今度はアルコが気まずそうだ。


「そうなりますと私は同行

必須ですよね。」


嫌がっている。

魔法の危険な匂いとやらを

獣の本能で感じるのだろうか。


「アルコも無理しなくていいぞ」


「しかし、マスターの護衛が」


そんな事を気にしていたのか

俺は笑って続けた。


「摂政の書状を持った者に

危害なんて加えられるワケ無い

俺の身を案じる必要は無いぞ。」


少し考えてから

申し訳なさそうにアルコは言った。


「すいません。では私もパレード見物に

行かさせてください。」


これも快諾だ。


「ああ、滅多に見れるモノじゃない

行っておくといいよ」


出店で適当に昼飯にしろと

俺はお小遣いを二人に渡し

二人とはここで別れた。


さてと

行ってみますか。


俺は門番をしている者に

ルークスからの書状を見せた。

「しばらくお待ちを」と門番は

横の通用口から中に

引っ込んでしまった。


15分ぐらいか

結構待たされた。


やっと帰って来た門番に

通用口から中にいれてもらうと

1人の人物が俺を待っていた。


黒いローブを纏い

顔は見えない。

その人物は俺を見ると

静かにお辞儀をして

自己紹介を始めた。


「始めまして。私はココで

副院長をしております。

マリーと申します。」


声からすると女性だ。

マリーと名乗った人物は

緊張しているのか

警戒しているのか

感情の読めない冷淡な印象だ。


「宜しくお願いします。

えっと面接が必要とか」


俺もお辞儀をしてから

そう言った。

もう敷地内だけどいいのかと

気になっていたのだ。


「フフ、それは必要ありません。

入れない者は既に引き返して

しまっていますもの。」


面接などと言う

上から目線は

引き返しやすくする為の方便か


「ですね。」


現にミカリンとアルコは

引き返してしまっていた。


「あなたも無理なさらないで下さい

気分が悪くなる前に立ち去る方が

賢いですよ。」


「なんか、そう言う結界みたいな

仕掛けしてるんですか。」


俺はワクワクで聞いた。

簡単な魔法陣とかで出来るなら

寝る時、布団の下にすれば

快眠できそうだ。


「・・・平気のようですね。

では、ご案内いたします。」


あれ

俺の質問スルーですか。


その後も、あちこち連れまわされたが

ストレスマッハだ。

やれ、ここは秘密だ。立ち入り禁止だ。

俺が興味を引くトコロが全部ダメ出しだ。

マリーの態度も最初と変わらず

冷たいまま、招かれざる客を

仕方なく相手している感バリバリだ。


あーもう

お前じゃ話にならん。


「ストレガに会いたいんだけど。」


俺は唐突にそう切り出した。

マリーは一瞬硬直して

返事をした。


「何故ですか」


「理由次第では会わせてくれるのかい?」


「いいえ、出来ません」


なんだこいつ

ストレスの助走から

一気に怒りにジャンプした


出来ないのに

俺が会いたがっている理由だけは探る。

何も与えず、自分が得るばかりか。


「なんで、出来ないの」


「お答えできません」


「出来る人と替わってくれないか」


「出来ません」


やばい

俺の中の本質

ドロドロした黒い怒りが

薄っぺらい表層意識を

軽く突き破りそうだわ。


愛想笑い

礼儀

親切

常識

これらが詰まった表層意識

みかんでいえば皮程の比率しか無い

薄っぺらい表向きの俺

大半を占める実であり身である

俺の醜い本体が出ちゃいそうそう

久しぶりにキレそう

ここ

屋上あるのかな。


悪魔騎士デモナイト状態になったろうか

などと考えていると

マリーの背後の扉が開いた。


「おぁ副長、いた!」


「きゃっ・・・ビックリさせないで」


今の「きゃ」は少しかわいい

怒りが少し収まる。


「駄目っすよ。全然分からないっす」


「閉めなさい馬鹿!」


出て来た眼鏡っ娘はローブの

フードを被っていない。

マリーに扉を閉めろと言われても

慌てる様子が全く無い

何で、どうせすぐ出入りするのに

そう言いたげな表情だ。


おい、副長の言う事聞け


普段ならそう思ったが

今の俺はマリー好感度マイナスだ。

いいぞ、もっとやれ。


「ん?バングか」


閉めろと言われた扉。

ついさっきも立ち入り禁止と

言われた部屋だった。

まぁだから閉めろと言っているのだろうが

その開きっぱなしの扉の向こう

部屋の中には昨夜のバング

その一体の仮面部分が見受けられた。


そういえばルークスが

ここにも運び込まれたって

朝教えてくれたっけか

ああ

その解析作業中か

それは忙しいだろう

これは俺の間が悪かったな。

客の相手なんてしてる場合じゃないよな。


怒りが急速に消失し

申し訳ない気持ちが芽生えるが

それならそれで日を改めるだけだ

ぞんざいに扱わないで言って欲しい


そんな事を考えていると

マリーが俺に振り向きざま

今までと打って変わって

落ち着きを無くした状態で言った。


「あなた、バングを知っているの!?」


「知ってるも何も、俺が倒したんだぞ」


そうだ。

だから二つは俺ののハズだ。

・・・。

そうか、だからルークスは「貸し」と言う

言い方をしたのか。

本来なら二つの仮面の所有権は

俺にあるのに勝手に行先を

相談も無く割り振った。


ふざけんな返せ・・・いらないか。

コタツの仮面は全長1mを超える

邪魔だ。


「ありゃ、噂は本当なのかにゃ」


眼鏡っ娘の方が反応した。


「噂?」


俺が聞き返すと眼鏡っ娘は

気前よく教えてくれた。


「魔族の王が全て倒した。これは嘘で

王が倒したのは一体だけで

二体は王に魔法を教えた師匠だって」


しまった。

そう言う風に流布させる目的で

地味に倒したんだっけ

でもここならいいか


「噂でしょ。こんな子供が

魔法の師匠なハズが・・・。」


マリーの言葉を遮る目的で

俺は高速圧縮言語による最速呪文

静電気セーター」をぶっぱなす。

発音的には「セッ」これだけだ。

速い。


静電気セーター

本当に只の静電気を発生させるだけの魔法

威力は0で、小さな火傷すら負わせられない。

標的も指定出来ない。その替わりに

逆に標的誘導の文言が無いため

呪文が短いという利便性がある。

用途しては

脅しかイタズラ程度で

最も俺に向いている呪文と言えた。


細い紫電はドアノブに飛んだ。

音は静かな場所なら結構派手だ。


「こんな子供が・・・何だって?」


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