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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第八十話 ゲアとの会話

ミカリンに続いてアルコの槍だ。

俺も久々にフルアーマーで一緒に参加した。

槍のスキルは全く鍛えていなかったので

ここで学べるのはラッキーだ。


最初は二人とも吹っ飛ばされてばかりだった。

特にアルコは鎧や盾で受け流す感覚に馴れず、

どうしても格闘の様に回避しようとしてしまい、

二手三手目で追い詰められていたが

一度感覚を掴むと形勢はあっという間に

ひっくり返りバッタバッタと魔族槍兵を

突き飛ばしていった。


筋線維自体が人とは異なる。

一見すると女性の細腕だが

繰り出される突きは洒落にならない

破壊力だ。飛ばされた魔族槍兵は

皆、信じられないと言った表情になっていた。


無双モードになってきたアルコに

比べ俺の方はさっぱりだ。

やはり、このチンチクリンの体重と

筋力で重装歩兵は無理だった。

何も出来ずにボッコボコだ。

久々に見事な負け犬だ。


「あーオトモの二人が強いだけね」


そんな心の声が聞こえて来た。

俺よりも指揮官の方が焦っていた。

別に威張るつもりはないのだが

救世主に威厳が無いのは

マズいらしい。


「魔法をお使いになられると

伺っておりましたが・・・。」


「それが使えない状況で

お荷物にならない為の訓練ですよ」


俺は素直に言っただけだが

指揮官は大袈裟に感動していた。


「おぉ流石は救世主殿、魔法以外でも

最強を目指されますか。」


なんか部下にアピールするように

大声だな。

その声を聞いた部下達は

口々に魔法を見たがった。


「今後、魔法を使う敵と戦う為に

是非、お力になってはいただけませんかな」


ベンチで打ち身や痣の治療をしていると

指揮官から、そう依頼された。

体はボロボロだが魔法の疲れは

運動の疲れとは別だ。

問題無い。

と言うか魔法で疲れた事が無い。

エルフのポロンやナリ君みたいな

マインドダウン症状になった経験が無い。

MPが多めのキャラのようだ。


俺は快諾するが、先に講習を申し出た。

このまま始めても相手は

何も分からず気絶してしまうだけだ。

魔法は物理と違って寸止めが出来ないばかりか

ワザと外す事もままならない。

近くに別の標的を設定しないといけないのだ。

開けた場所ではデコイに当たる物が無い。


カカシの様な的を並べてもらい

解説をしながら発動させる。

分かっていれば対処出来る

耐えられる魔法も多いのだ。


「まずはポピュラーな火球ファイアボールね」


ミカリンのより俺の方が威力も小さく

弾の速度も遅いので

より分かりやすいだろう。


俺は火球ファイアボールを打った。


カカシは木っ端微塵に粉砕され

無数の火の粉に変身した。

火球はそれでも治まらず

カカシを貫通した後も飛行を続け

修練場の壁にぶち当たり飛散した。

石造りの壁に炭の巨大な痕跡が残った。


あれ

俺のも威力が上がってるな。


「さぁ次は盾で弾いて見ようか」


「「出来る訳ありません!!」」


強引に続けようとしたが

魔族兵は皆嫌がった。


後で聞いたのだが標的に使ったカカシも

使い捨てでは無く

かなり頑丈に出来ている代物だそうだ。


結局、魔法のお披露目で終わった。

スパイクやボルトなども

威力の向上が見られた。


これ暴走陣使ったらどうなるんだ・・・。


一通り終わる頃には

兵の表情に恐怖の色が見えた。

特に槍の訓練で面白い様に

俺をぶっ飛ばしてくれた兵は

震えていた。


「ちなみに王の雷撃は俺より強力だぞ」


ナリ君を持ち上げて置く事も忘れない。

畏怖の念は俺より王に向けられる方が

良いだろうし、実際に俺より強力なのだ。


「アモンそろそろ戻ろうよ」


まだ日は高いが

すっかり泥だらけだ。

祝賀会にこれはマズい

準備の時間も含めると

確かに戻った方が良い。


俺はミカリンの言葉に素直に

従い、指揮官にその旨を申し出た。


帰りも整列して敬礼だ。

来た時よりも気合が

入っている感じがした。


やはり話だけ口だけより

実際にやってみせて

力を目の当たりにすると

説得力が違うのだ。


「槍も面白いですね」


入手出来る金属が

自らの爪より柔らかい

ベアーマンは格闘に特化せざる

を得ない境遇だった。


ここなら鉄製の武器が入手出来た。

その頼もしい硬さと感触に

アルコも喜んでいた。


ただ、俺としてはまだ不満だ。

予想よりも低い品質だ。

悪く言えばナマクラだ。


軍は認めるが装備は

低品質に抑える。


そんな作戦なのかと勘繰った。


戻るとアモン2000は

車輪を含む足回り以外は

元通りになっていた。


座り込んだゲアは

ダンパーを手にしげしげと

観察していた。


「直って無いよー」


ミカリンが露骨に不満を口にした。


いや、戻すのに一時間と

掛からない状態だ。

だが、そんなのは整備できる者しか

分からないか。


女子の方が準備に時間が掛かるし

車の知識も無いので手伝える事が無い

俺は二人を先に行かせると

ゲアの所に行った。


「なぁ兄ちゃん。こいつは

ハメ殺しだよな」


嵌め殺し

一度、組み立てたが最後

もう分解出来ない構造物の事だ。


「流石だな。壊さずに気が付いたか。」


ダンパー

スプリングや板などで

路面の衝撃を吸収するが

コレだけだと車はボヨンボヨン

いつまでも撥ね続けてしまう。

一度引っ込み、元の長さまで

復元したら、もう一度引っ込まない様に

制限する部品が必要なのだ。

それがこのダンパーである。

注射器の様なシリンダーで

抵抗があり撥ね続けないように

押さえてくれるのだ。

アモン2000で採用した

ダンパーは中に硬めのオイルを

封入してあり、分解の必要が無いので

上記のハメ殺し設計だ。


「これは直ぐにでも流用出来るなぁ」


俺の説明を聞いたゲアは

喜んでそう言っていた。


二人掛かりで組み立て作業を

しているとゲアはボソボソと

話しかけて来た。


「暗殺未遂があったそうだな」


「誰から聞いた。箝口令かんこうれい徹底出来てないぞ」


「おいおい、兄ちゃん。俺ぁこうみえても

ドーマの首脳陣なんだぜぃ」


そういえばドーマの建物・設備の

設計・設置・整備の総責任者だったっけか。


「教会まで行って確認したが・・・。」


俺はゲッペの話をした。

それを聞いたゲアは

やるせなさ全開で嘆いた。


「上手くいかねぇモンだなぁ

何にしろ今回は未然に防げて良かったが

何もかも台無しになりかねない事態だぜ

俺からも礼を言うぜ救世主様よ」


「防いだのは俺じゃないよ」


作業の手を緩めず

俺は気の無い返事をした。


「だーから俺ぁ首脳陣だっての

あのルークスがあそこまで

他人を評価するなんて初めてだぜ」


これは全部知ってるな。

まてよ

ゲアは魔族じゃない。

バルバリス側で尚且つ

魔族の事情に詳しい

これは相談相手として

うってつけじゃないか。


俺はゲアに今までの疑問を

全てぶつけてみた。


作業を終え座って一服しながら

ゲアはゆっくりを答えてくれた。


「はー兄ちゃんは賢いが

他人を、特に善意っを信じなさすぎ

だぜぃ。疲れねぇか」


繰り返される戦いとイタズラの日々が

俺をこんなにしてしまったのだ。


「まず、今のバルバリスに他国と

戦争する余裕は無ぇ。

魔族に布教は諦めているし

望んでいるのは無難に独り立ちだ」


これが本当なら

軍や武器の所有も納得だ。


「窯に関しては?」


一番の懸念だ。

バルバリス側の戦力が不足しているなら

なおヤバい

出入口の封鎖だけで実行が可能だ。

少数でもいいのだ。


「その発想が怖いわ。どんな人生

歩んで来たんだ。壁に関しては

ベレンと同等の防壁だぁ

敷地が狭いで窯に見えちまうかもだが

そんな使い方を・・・するつもりなのか?」


おいおい

お前が俺に流されてどうする。


「無いと思うんだよなぁ

入り口の向きに関して・・・・

うーん、これは言っちゃマズいのかな

兄ちゃん・・・魔物でな」


ゲアは急に話を変えた。

質問の内容から

バングを知っているかどうかを

探っているのが直ぐに分かった。


「バングなら、二体倒してるぞ」


回りくどいのは嫌なので

俺は先読みして、そう答えた。


「何!?嘘だろぉ」


嘘じゃねぇよ。

話を聞いて見たら

ブンドンの報告はまだ

ここまで届いていない様子だ。

俺は細かく説明した。


「凄いじゃねぇか・・・」


そこまで分かっているなら

話は速いとゲアは防壁の

説明をしてくれた。


ドーマの防壁は対バング用だ。


ネルドが突破された場合

立地的にベレンより先に遭遇してしまう

なので南側には大きな門が無い

いざと言う時に

最速でベレンに避難出来るように

設計したそうだ。


「これは本当だぜ。トーマス直々に

俺にそう言って来たんだからなぁ」


誰それ?

機関車ですか。







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