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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第七十八話 懺悔室の恐怖

「神に仕える者が嘘をつくとは。」


俺は大袈裟に天を仰いで

演劇調に嘆いてみせた。


どうですか月影先生。

ガラスのやつは

いつ終わるんですか。


「嘘などではありません!」


怒った様に返事をするゲッペ。


「神に誓えますかな。」


「な・・・なんですか子供のクセに」


俺は口調を軽い感じから

脅すような重いトーンに変えて

もう一度言う。


「神に誓えますかな。」


「ええ、誓えますとも」


俺は指をパチンと鳴らして

ミカリンに合図を送る。


さぁ見物だぞ。


「見た目が子供というだけで

魂の質を見誤る未熟者め。

これより始まるは

神の裁きなるぞ。

我こそは大天使ウル様より

命を受けこの地に馳せ参じたモノ

覚悟せよ。」


俺のまるで宝具でも発動させるかの

ような大袈裟な口上に合わせて

ゆっくりと扉が開く

光が。

黄金の輝きが宙に浮いている。

翼で身を隠すかの様に

縮こまっていたソレは

シャランとか音を立てて翼を広げ

姿を現し部屋の中まで

ゆっくり漂い入ってきた。


天使だ。


痛てててて

完全人化なのでダメージは

入らないのだが

あの黄金の光は俺の記憶から

リアルな痛みを呼び起こす。


宙に浮いたミカリンは

普段の顔つきとは違い

神々しくも冷たい非情な感じだ。


神側ずるいな

だいたい元が美形なのが多い

中身がどいつもこいつも

どうしようも無いのが

欠点なのが救いだが

やっぱり、こうシャンとすると

綺麗だ。

ズルい。


「・・・ぉぉお。」


ゲッペは目の前の出来事に

完全に心を奪われた状態だ。


言葉にならない何かを

喉から漏らし

ただただ

ミカリンを見つめている。


いいリアクションですよ

ゲッペさん

ウケるー。


ミカリンがチラりと俺を見やる。


ああ

ゴメン

続きだよね。


「愚かなる。

そして哀れなる神の子よ。

これより、一字一句に注意して

発言するように

偽りは即、神の愛を失い

そなたを地獄に送るであろう。

これより裁きを行う。」


再び演劇調で俺は言った。

が、ゲッペは呆けてミカリンに

目を奪われたままだ。


「控えぃ!」


無視されたようで

ちょっとイラついた俺は

叱責した。


「ははっははいいぃ!!」


電気ショックでもくらったかの様に

ゲッペは控える。


「グレアに暗殺を指示したのか?」


「断じてその様な事は頼んでおりません。

魔族の王様が戻られたのを先程知ったのに

どうして昨日、頼めましょうか」


だよね。


「ではグレアに今まで命じた事を述べよ」


「命じた・・・など・・・そのような

高圧的な事では」


「黙ーらしゃい!妹を人質に

グレアを手駒にしていたのは

お見通しだ。おみとおる」


「・・・!そんな人質など」


ゲッペは泣きながら

最初から思い出せる限り

話し出した。

もう必死だ。


そんなに切羽詰まったのか

言葉も時系列も滅茶苦茶で

理解に苦しんだが

こちらの質問には

迷いなく即答してくれた。


纏めるとこんな感じだ。


ゲッペは学園で教鞭を取ったことがあり

グレアの妹とはそこで知り合う。


魔族保護地区ドーマに教会を

出張させる事になったが常駐を

誰もが嫌がり、半ばパワハラで

ゲッペに押し付けられた。


教会からの指令は二つ

1.ドーマ在住の信者の相手

2.ドーマの情勢調査


「しかし、シスターである私に

正直に話してくれる魔族はおりません」


そこで困り果てたゲッペは

正面の雑貨屋に買い出しに

来ていたグレアと会い

そこでの話から例の生徒の

姉だった事に気が付いた。


それで頼んだというのだ。


「危険の無い範囲で

どんな事でも構わないと

私は、決して彼女を

そんな・・・。」


もうボロ泣きだ。


俺とミカリンは

泣き崩れるゲッペを背に

しゃがみ込んでヒソヒソ話を始めた。


「アモーン。罪悪感ハンパ無いよ」

「だな。これ無実だろ嘘言ってるワケないな」


「なんでグレアはこれで暗殺って発想になったの」

「余程、教会に恐怖しているんだろ

これまでの戦いの酷さが窺われるわな」


ゲッペは頼んだ。

グレアは脅された。


両者の思い違いは

気を使って雑貨屋を間に挟んだ事が

裏目に出てしまい

悪い方悪い方へと加速していったのだ。


会って話せば5分で気が付くような

思い違いなのだ。


激しい号泣がピタリと止まった。

嫌な予感がして

俺とミカリンは振り返った。


「・・・私を地獄にお送りください」


落ち着いて静かな声だ。

怖い

本気だ。


「そしてどうか私の命と引き換えに

グレアをお救いいただけないでしょうか。

ええ、こんな汚れた魂でお願いなど

無礼千万極まり無い事は分かっております。

神の怨敵である悪魔の末裔を助けろなど

おかしいとも分かっております。

でもただああ、彼女は悪くない悪くないのです

全部私がみんな私が愚かだったせいで

あああああああああ」


からかっちゃいけない人だった。

ごめんなさい。


「分かりました。グレアを救いましょう」


ちょっと本気で助けよう。

俺は演劇調に戻ってそう言った。


「神の子よ。そなたの信仰は

ここに証明された。」


血が出そうな程

祈りの拳は強く握られていた。

目を見開いて俺の言葉を聞いている。

顔はこの短時間で良くそれだけ出たな

と思える程、涙で濡れていた。


俺は優しい口調で続ける。


「そのまま励みなさい。

間違った裁きから救い出し

ここにグレアを必ず連れてきます。」


「・・・・。」


声になっていないが

唇の動きで分かった。

「神よ」それを繰り返している。


「そうと決まれば急ぎましょう。

手遅れになってからでは遅いですよ」


ミカリンが少しエコー掛けて言った。

何それ

地味だけど効果高いね。


俺は元の世界の

ウグイス嬢の物まねを連想した。


「そうですね。行きましょう」


もう

とっとと、ここを去りたい

俺もミカリンも思いは同じだ。


扉から出る際

俺は振り返ってゲッペに釘を刺しておく


「ああ、我々の正体は秘密ですよ」


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