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ぞくデビ  作者: Tetra1031
73/524

第七十三話 隙間がね

朝、賊が捕まったとの

知らせで起こされた。


なんで俺を呼ぶんだ。


この子供の体は爆睡が可能で

前回ほど寝起きが良く無いのだ。


もっと寝かせろと思ったが


起こしに来た兵は

絶対にお連れする様にと

厳しく言われているとの事で

ガンとして出て行かなかった。


くそ

分かったよ

起きるよ。


根性を最低限絞り出し

体を起こす。


ナリ君が居ないな。


昨夜は・・・確かそのまま

ベッドで二人とも横になったハズだ。

ダブルサイズなので二人余裕だった。


それにしても

一緒に寝るなら

やっぱり女子の方がいいなぁ


じゃない

ナリ君どこ行った。


俺を待っている兵に聞くと

既に現場に向かったとの事だ。

俺待ちだそうだ。


急いで身支度をして

俺は兵に連れられ

現場へと向かった。


「ルークス様とゼータ殿の仰る通りでした。」


現場になったのは

ナリ君が泊まる予定だった部屋だ。


入るなり昨夜の護衛が

ネズミを捕まえた猫が

飼い主に褒めてもらうのを

待っているかのような

キラキラした表情だ。


部屋には例の護衛二人と

ナリ君、ルークスと

手足を縛られ床に座り込んだ女性の

5人だった。


この人、昨日俺を案内した人じゃないのか

えー

指令次第じゃ俺ぬっ殺されてたかもだ。


入って来た俺にスッと素早く

歩み寄るルークスは小声で囁いた。


「恩に着ますぞ。ワシは暗殺の警戒など

しとらんっかたのに・・・。」


「まぁ上手く口裏合わせでお願いします」


俺も小声でルークスに囁く

魔族を纏めてもらう為にも

ルークスはカリスマがあった方が良い。


俺は護衛に経緯を聞いた。


なんと、護衛はアレから

交代の際にナリ君になりすまし

この部屋で鎧着たままベッドに

潜り込み、襲撃を待ち伏せたそうだ。

そして

明け方近くに暗殺者を見事

逆襲して捕えたのだ。


そこまでしろとは言っていなかったのに

彼等なりに考えた上での行動で

もちろん彼等の上司の許可を得ての事だった。


「流石、ルークス殿が信頼を

置いている部下ですね。お見事です」


護衛二人はしてやったりの

満面の笑みだ。


「凶器はコレを」


護衛がナイフを差し出してきた。

魔車の備え付けのナイフだ。

はぁ

やっぱり俺を犯人に

仕立て上げる気だったんですね。


俺はナイフを受け取ると

現状を尋ねた。


尋問はこれからだそうだ。

と言うか

尋問を始めるに当たって

どうしても俺が必要だったそうだ。


何で?


思わずそう言いそうになる俺だったが

俺のセリフより速く

摂政と王が言って来た。


「で、いかがいたしますかな」

「どうしますかマスター」


おいおい首脳陣

それでいいのかよ。


なんか護衛二人も期待たっぷりの目で

俺を凝視してるし

あー小物っぽい事しずらい

俺は表向きは余裕の笑顔で

脳はフル稼働で考える。


「他に暗殺の事を知っているものは?」


俺の質問に摂政ルークスが答えた。


「ここに居る者が全てですな」


俺は横を向き護衛の一人を

指さして言った。


「今、この部屋に誰もいれないように

えーっと名前を聞いて無かったな」


「ハッ!ロウと申します。了解であります」


ロウはそう言うと、ガシャっと音を

立て廊下に出て行った。


俺は「頼んだぞ」と言った後

もう一人の名を聞いた。


「はっ!ラングと申します」


名前を聞かれた二人の

恐縮と喜びっぷりが

見ていてカワイイ

でも、こう言うの大事だよな。


さて

どう尋問を始めようかと

思っていると

廊下からロウと女子の

言い争う声が聞こえて来た。


「だ駄目であります」

「なんでさアモン居るんでしょ」


ミカリンだ。

俺がここに居るって

何でアイツ知ってるんだ。


「ミカリンは良いだろう

・・・ラング」


ラングは短く返事をすると

素早く行動しミカリンと二人で

部屋に入って来た。


「何?ナニ?朝から何してんの」


ミカリンがウキウキだ。

ルークスが頷いて見せて

ラングは俺にしたのと

同じ説明をミカリンにした。


床に座り込んだまま

身じろぎもしない女子の

回りを歩きながら俺は

ルークスに尋ねた。


「彼女の経歴は」


「名前はグレア。ここではまぁ雑用係ですな

両親は兵でしたが保護区に入る前に・・・」


ナリ君の顔が曇る。

同じ境遇だ。


「今は妹と二人。妹の方は学園の寮ですな」


説明を聞きながら俺はグレアの周りを

グルグル歩き、背後に回った時に

ソレに気が付いた。


昨日は二人とも立っていた。

グレアは俺より背が高いので

昨日の時点では気が付かなかったが

今、視点を上からグレアを

眺めると


見えそうだ!!


胸元が結構パッカリ開いた衣装で

少し前かがみになっているせいで

隙間が

ああ

隙間が

くそ

こっちか

逆か


俺は何とかその白い活火山の

火口が拝めないものかと

立ち位置を視点をガンガン変える。


くそ計算された衣装なのか

見え・・・ない

くそ


俺の挙動を不審に思ったのか

普通思うわな

ルークスが聞いて来た。


「どうかなされましたかな」


「隙間がね」


しまった

つい、正直に言ってしまった。

俺の馬鹿。


「ほいほい隙間だね」

「キャ」


ミカリンが素早く

聖地に手を突っ込んだ。


ええ

うらやま


「・・・コレ?」


ミカリンが聖なる谷間から

何かを取り出した。


「「それは!」」


ルークスとラングが声を上げる。

ミカリンの手には

ペンダントが握られていた。

教会の紋章がきらめいている。


「そうよ。自殺は出来ないの

殺しなさいな」


グレアは開き直って

そう言った。


「言われいでも」


ラングが剣を引き抜く動作を

しようとしていたので

俺は素早く抑える。


「禁止しているのか」


俺はルークスに尋ねた。


「公な決まりはございませんが

怨敵に御座います。その紋章の旗を

掲げた者とお互い多くの血を流して

きた歴史がありますゆえ」


タブーなのか

ルークスの声色もおっかないモードだ。


「お放しくださいませ。ゼータ様」


その気になれば振り払えるのだろうが

俺に狼藉が出来ない。

その考えから固まっているラング。

俺はラングを無視して

ナリ君に声を掛けた。


「ナ・・・王よ。ここで始末するかい」


ナリ君はカッコよく手を頭に

回して髪をかき上げた。


それ無駄な軌道を描いているよね。

普通に腕上に上げた方が速いよね。


「マスターの意のままに」


「じゃ生きで」


納得の行っていないラングは

食い下がって来た。


「ゼータ様!」


「王もああ言っておられる

それよりも、このタイミングで

斬るのは君マズいぞ」


「何故でございますか」


「だって、これじゃあ

王を殺されかけた事より

信徒だった事の方が

怒るべき事、

王より大事だったって事になるぞ

王が第一じゃないのか」


ラングの手から力が

抜けていくのが分かった。


「いえ、そういう訳では・・・」


「分かっている。ラングの

忠義を疑っているのでは無い

ただ、そう評価する外野が

どうしたって出て来るのさ

俺はそれが嫌だ。」


「お・・・恐れ多い」


俺の為?

違うんだけどそう思ってくれたようだ。

力がドンドン抜けていくラング。


「殺すのはいつでも出来る。

勿体ない、彼女には利用価値がある」


俺の言葉にルークスが反応した。


「ほう、是非お聞かせ願えますかな」


強めの口調でグレアが割り込んで来た。


「無駄よ。私は言いなりはならない

殺しなさい」


いい

リアルくっころ

いい

なんとも言えない珍味が

俺に流れ込んで来る。


俺は〇安の演技を参考に

小悪党っぷり全開で言った。


「妹の首を前にしても

同じ事が言えるかぁ」


一同ドン引きだ。

なんか

ザーッって音が聞こえてきそう


「そんな・・・やめて」


さっきまでも強気は一瞬で消え失せ

か細い声でグレアは訴える。


か細い声の方が声質に合っている。

いや

今、思えば「本当は弱いのに無理して

強がっているの」感もなかなか良い。


「アモン・・・最低だよ」


がっかりした顔でミカリンが

俺に言う。


はーい最低でーす。

だから平気でーす。

フヒヒ


あんまり間を開けるとヤバい

俺は態度を元に戻して

キッパリと言い切った。


「これが裏切りの原因だよ」


ルークスは成程といった感じで頷く。


「そうか・・・妹はベレンの寮に」


ラングは複雑な表情になった。

彼にも親兄弟はいるのだ。

斬らなくて良かったな。



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