第七十二話 招かれざる
その後もルークスは
俺の質問に快く答えてくれた。
いくつか失礼な内容もあったのだが
怒る事無く正直に教えてくれたが
今後の予想に関しては
どう転ぶのか推移を見守るしかないとも
言っていた。
俺の正体に関しては
まぁいずれと言っている。
只の子供では無い事は
確信されている感じだ。
俺は今後の推移によって教える
と誤魔化しておいた。
程よく酔って
眠くなってきたというルークスは
退室していった。
一杯だけと言って注いでもらった
俺のワイン、残りを飲み干すが
やはり苦い。
これが美味しく感じる大人の肉体に
速くなりたい。
アモン速く大人になりたいな。
酔いも凄い。
このまま寝るかと
再びベッドにダイブする。
「・・・静かだな。ここは」
今までが騒々しかった。
今までもエルフの里やブンドンなど
屋内で寝る事もあったのだが
外の音というものはあった。
ここは建物の格が違う
外の音など殆ど聞こえない
後、空間が縦も横も広い
うーん
仲間も、これは感じているのでは
ないだろうか
ミカリンやアルコが
「寂しいの・・・一緒に寝てイイ?」
なんてやってきたりしてな。
そう思っていると
扉がノックされた。
もしかして想像した通りか
ふふ
しょうがない娘達だなぁ
「どうした、寂しくて眠れないのか」
俺はそう言いながら扉を
開けてやる。
「はい。マスター眠れぬ我がやってきましたよ」
ナリ君だ。
お前かよ。
「静かすぎて落ち着きません」
摂政の次は王かよ
俺が外交官なら大喜びなんだろうが
女の子の方がいいなぁ
しかし、気持ちも分からんでもない。
俺はナリ君を招き入れた。
「つか、良く出歩けたな」
24時間体制で警護が敷かれてるモンだと
ばっかり思っていたのだが。
「我の雷の前には護衛など」
倒して来たのか
「バカヤロウ何て事すんだ
ちょっとここで待ってろ」
俺はナリ君から部屋の場所を聞き出すと
ダッシュで向かう
彼の言う通り部屋の前でピクついてる
護衛二人に回復呪文を掛け
王が俺の部屋に来た事を伝える。
「一言言ってくだされば良い物を」
頭を振りながら護衛はこぼした。
ごもっともだが
ここは意地でも下手に出んぞ
もう
こうなったら逆に攻めに出る。
「背後に無警戒過ぎると
王は嘆いておられた。
私の所の方が安全だと
そう判断されたのだぞ」
「・・・。」
「・・・。」
「後ろからは来ないだろう
そう言いたいのかも知れないが
王は今までたった一人で
生き抜いて来られた。
君たちと違って屋根も
暖かいスープも無しでだ。」
護衛達の不満気だった表情が一瞬で
後悔の色に変わった。
「私と合流して、初めて眠れた気がすると
いつだったか申しておられたな」
嘘だけどね
「・・・そんな事を」
「そうだよなぁ・・・俺達は馬鹿だ」
効き過ぎたか
まぁこれで騒ぎにはなるまい
「私の部屋の前をそれとなく
警護してくれるか。賊が動くのは
今夜の可能性が高い」
後悔の表情から
今度は驚愕の色に変化する護衛達
良い反応だね
楽しいぞ。
「「賊?!」」
「あぁ先程、ルークス殿が私の部屋を
訪れてな、心配しておられたが
優・秀・な・護・衛・を付けたから
大丈夫だと仰っていたぞ」
更に釘を刺しておく
これで言いつけられまい
フヒヒ
驚愕から今度は
青ざめる護衛
ホント器用だなお前ら
やばい笑いそうだ。
「王の帰還を内心面白く思わない
勢力がいる可能性が捨てきれない」
「そんな我らはずっと王を」
「そうだそんな不届き者は魔族にいない」
必死で訴える護衛
俺はワザとらしく満足気に頷き
続けた。
「君らの様な者がほとんどだと私も
ルークス殿も同意見だ。
だが、長年に渡るバルバリスの享受に
甘んじ、この生活も悪くない
そう感じている者がいたとする。
誇り高き魔族だ。頭の隅にその考えが
浮かんだとしても決して
流される事は無いだろう」
自分だけで無く
ルークスも含めて説得力を補強。
さらに魔族を持ち上げて
認めているよとこちらの好感を
先に植え付けておく
畳みかけるのは
ここからだ。
「だが、相手はあのバルバリスだ。
その一瞬の隙を見す見す逃すと思うかね」
「「・・・・。」」
「ドーマは事実上完全に
バルバリスの監視下だ。
慌てる事は無い、注意深く観察し
こちら側に協力してくれそうな
人物をゆっくりと選別出来る。
金・地位・利権などもチラつかせ
裏切るのではない、
説得してくれないか
誘導してくれないかと
頼み込むのだ。
ここで大事なのは裏切り行為ではないと
認識させる事だ。」
「「・・・。」」
真剣に聞いてるよ。
俺は笑いがバレない様に
少し背を向け
続ける。
「激しい戦闘で大切な人を
失った者も多い、その後でこの安寧だ。
どうだ・・・餌として極上ではないか。」
「そんな・・・嘘だ」
「悪魔みたいな手腕だ」
いや
お前ら魔族のご先祖悪く言うな。
つか
俺が考えたんだから
悪魔の発想という評価は正しいか。
「仮に
いいか仮にだ。
裏切者、その集団がいたとして
彼等にしてみれば王の帰還はどうだ。
嬉しいだろうが
安寧という観点から
決して喜ばしく無いのだよ。
王の帰還で民が活気づき
今こそ独立を
バルバリスに反旗を
などと言い始めたら・・・。
一度その流れが決壊しては
もう取り戻しが付かない。
そしてそれはスパイの身の安全が
消える事を意味する。
ドーマ、バルバリスの両方から
消される危険性を有しているんだ。
王が居ない方が安全なんだ。
暗殺するしかない
そして今夜なら
その犯行は全て流れ者の
私に押し付ける事が可能だ。」
今度は戦慄する護衛。
俺は笑い出すのをぐっと堪え
最初に繋げる。
「その危険な状況下で
君ら二人の職務に対する姿勢
万全と言えたかね。
そんなはハズは、まさかそんな事が
王が殺害されてしまってから
そう言うのかね」
ドシャ
装備品が音を立てるくらい
勢い良く土下座する護衛二人。
おおジャパニーズ謝罪ポーズだ。
魔族は日本文化なのか
「申し訳ございませんでした!」
「我々が甘かったです」
すごい
その後も口々に俺やルークスを
褒め称え、自らの認識の甘さを
つらつらと後悔しはじめた。
やだ
全部、俺のでっち上げなのに
本気で信じてるよ。
もう
嘘って言えないわ
なんかちょっとだけ罪悪感。
そして最後にはこう言ってきた。
「どうかもう一度機会を」
「汚名を返上させてください」
俺は口元を緩めて答えた。
「だから、最初にそう頼んだろう
私の部屋の前を警護するのだ」
「「はい!!」」
その後、俺は警護二人を
引きつれて部屋に戻った。
なんか悪の幹部にでも
なったかの様な絵だ。
部屋に戻ると
ナリ君がソワソワしていた。
「どどどど」
「童貞ちゃうわ」
「どうでしたかマスター」
俺のボケに構っている余裕は無い様だ。
「あぁ大丈夫。もうなんの問題も無い」
・・・もしかしたら
大きくなってしまったかも知れない
「あの二人は・・・その後」
自分が倒した護衛二人が気になるのか
そうだな。
ここは共犯になってもらうか。
俺はナリ君に演技指導をして
護衛に労うように言った。
素直なナリ君は
俺の予想以上の演技でやってのけた。
恐ろしい子。
ゆっくりと扉は開かれた。
素早く反応した護衛二人は
隙間から現れた人物を見て
膝をついて畏まる。
少しの間
護衛の二人には永遠とも思える時間だ。
その間が空き
ゆっくりとそのお方は言った。
「・・・任せたぞ。」
「「ハッ!!」」
夜だ。
大声は出せない
短く小さめの返事だが
鬼気迫る程の決意が
その返事にはこもっていた。
俺は顔を枕に思いっきり押し当て
爆笑しながらベッドを転がった。




