第六十九話 上海上海上海上海
訪雷剣
振れば雷を呼ぶという
ルーンマーセナリーエクスが持つ宝剣
王はこの名と宝剣を代々受け継いで行く
だそうだ。
豪華なローブを身に纏った摂政ルークス。
王無き間、魔族を導いて来たその人に
案内されてこの都市で二番目に大きい建物
その一角、貴賓室と表現すべき部屋に案内された。
ナリ君と俺達は別室に分けられそうになったのだが
半ば命令でナリ君は一部屋に三半機関を集めた。
建物や部屋の作りはベレン風だが
置いてある装飾品、絵画などは
魔族風で明らかにミスマッチだ。
和室に住み込みさせられた外人を連想した。
「だから親父さんが王だったんでしょ」
「幼かったので、認識出来ていませんでした。マスター」
エラシア大陸、中央の山脈を区切りに
西側が聖都をもつ宗教国家バルバリス帝国
魔都デスデバレイズを持つ他種族連合
魔側は一枚岩の一国家ではなく
各種族ごとに国があり
そこから代表が魔都に集まり
連合として機能する政府を形成していた。
魔族は中央の山脈に隣接した国だった事と
身体的特徴、その由来となった悪魔の血縁
この事からバルバリス側と最も熾烈な戦闘を
繰り広げていた。
爆心地は東の端、デスデバレイズだった。
当時、その場にいた俺は瞬間で蒸発するかと
思える程の高温に晒されたが
中央山脈付近ではそこまで高温には
なっていなかった。
しかし、広がり迫る大火になす術も無く
危険を承知で敵国勢力側
山の向こうに逃げざるを得なかった。
少しでも多く生き延びる為に
幾つもの少数の集団に分かれ
場所、時間などを変え
バルバリス側への避難だった。
また一つに集まれる事を願っての逃避だ。
上手くバルバリス兵の目を躱して
潜入出来ても、敵国の民族だ。
次に待っていたのは魔族狩りだった。
摂政ルークスの話は
こんな感じだった。
ナリ君の話から推察するに
ナリ君の両親。王と王妃は
逃げ延びて森の中で少数の集団で
密かに暮らしていたが
冒険者に発見されて
その後の討伐隊に討たれた格好だろう。
物心がつき始めたは
その集落からなので
王の派手な衣装や暮らしぶりは
知らないのだ。
ここで
「なんかさぁ」
ここで
「はいマスター」
俺はナリ君が
羨ましくなった。
「いいね。主人公っぽい設定で
かっこ良いよねナリ君はさぁ」
俺なんか裸チンチクリンで
過去無し身元不明のクソガキスタートだぞ。
「そこに反応しますかマスター」
バックボーン大事だろ
自分が何者であるかを
決定づける重要のファクターだぞ。
「王子と言っても、不幸と苦労の
連続だったのでは・・・羨ましがる様な
半生では無かったと思います。」
差別、いじめで苦労してきた
アルコは共感する部分が多いのか
ナリ君を擁護してきた。
「そうだよ。可哀想だよ」
はぁ?
やだこの子ったら
ちょっとミカさーん
焼き払った張本人が
何言ってんだ。
俺より悪魔に向いてんじゃねえの
「剣は本物だとしても
奪った別人って可能性はあるんじゃないか」
なんとか覆らないか
この設定
悔しくてしょうがない俺。
3人とも何とも言えない表情だ。
我ながらみっともない醜態だ。
だって羨ましいんだもん。
摂政ルークスは
ナリ君が偽物で無い理由を説明してくれた。
角の形が王家独特の形状だそうだ。
ちっ
本物かよ
将軍かよ
更にルークスは続けて語った。
「どのような酷い目に遭われているか
心配しておりましたが
このようなお仲間をお作りなされて
いようとは・・・・。」
んー
会ったばっかりだけど
「車にでも轢かれてやしないか
気が気でありませんでしたぞ。」
ゴメンなさい轢きました。
謝ろうかと思ったが
ルークスは涙が止まらない様子だ。
口には出せなかったが
もう死んでいるモノだと
誰もが思っていたのだろう。
あまりに時間が経った。
生きていた
ただそれだけで
どれ程嬉しい事なのか
ここでまた
羨ましくなる。
俺も生きてんだけどなぁ・・・。
ここまで喜ぶ奴いるかなぁ
居てもウザいだけなんだが
居ないのも寂しい。
一人ぐらい泣いて喜べよ
ちくしょう
あーつまんねぇ
もう行こう。
俺は旅立つ意志を告げたのだが
「マスター。その学園とやらの
入学時期にはまだ期間があります」
そうだけど
それがどうした。
ナリ君は他にも何か言っているが
どうも奥歯に何か挟まった様な感じだ。
俺は人払いを頼んだ。
摂政ルークスは少し考えた様だが
俺の申し出を受け入れて
護衛や侍女を伴い退室してくれた。
王を殺す気ならとっくに殺せている。
金銭その他の要求なら、引き渡す前に
交渉してくるはずだ
何よりナリ君が心を許している態度だ。
一応は信用してくれたようだ。
退室したのを見計らって
俺はナリ君に尋ねた。
「どうした?ハッキリ言え」
「他人が無理です。マスター
三半機関以外の他人と
一緒など我には不可能です。」
独りが長すぎたか。
コミュニケーションとやらは
経験の産物だ。ナリ君は
ぶっきらぼうで言葉が足りなかったが
これまでの経緯を鑑みれば
仕方が無い、むしろまともな方だ。
三半機関での連携戦闘訓練
風呂や食事など
俺達にはなんでも無いコミュニケーションが
彼には高難易度のミッションだったのだ。
最初の頃のギクシャクした感じは
確かに最近こなれて来た感がある。
「ずっとは言いません。ずっとでもいいですが
しばらく滞在してもらえませんか。
我にいきなり国家運営など出来ません!!」
「俺だってした事無いよ」
した事のある奴の方が貴重だろ
「ベレンが目的地だしな」
俺はアルコを見る
アルコが返事をすより先に
ナリ君が食いついて来た。
「目と鼻の先じゃないですか」
「それはそっちも同じだろ」
違うか、王が気軽に
1人散歩で出歩けるとは思えない。
ここでミカリンが現実問題を提示した。
「入学までベレンにどう滞在するの
ずっと魔車でキャンプ?」
「家がある」
俺はあっさり言った。
「ぬぅ!」
「マジで?」
「ベレンにおうちが・・・」
悔しそうにするナリ君。
驚くミカリン。
目が星の様になるアルコ。
「しかも内壁内の一等地だぞ」
「なんとぉ!」
「スゴイじゃん」
「ベレンにお屋敷が・・・」
で、ここで肩をがっくり落とす俺。
「前回の俺のでな。そういえば
今は別人なんだよね。」
「はははっは!」
「なーんだぁ」
「ガーン・・・。」
いや
方法はあるのだ。




