第六十六話 バロード到着
バロードの村
一言で言えば貧しい村
農業が主な産業だが
やせた土地で実りは少なく
病気が蔓延していた。
はずだった
少なくとも前回はそうだった。
近づくに連れて
俺は目を疑った。
道を間違えているんじゃないかと
思ったほどだ。
前回は手つかずの荒れ地も開墾され
豊かな実りを蓄えた広大な農地
所々に見える農家も立派な屋敷だ。
村のかなり手前から
精度の良い平な石が道に
敷き詰められた街道。
お陰で乗り心地はすんげぇ良いぞ。
たまにすれ違う馬車も豪華仕様が多い
見かける人もボロを纏った者など
皆無だ。
俺は不安に駆られ
何度も人にバロードの場所を
尋ねまくったが
何度聞いても道を間違ってはいない。
まだ到着まで距離があるのに
この有様だ。
バロードの村中心部は
一体どんなになってしまっているのだろうか
「マスター。ベレンが近いのですか」
ウキウキした顔でアルコが
そう言って来た。
俺もそうなのかと勘違いするほど
中心部に近づくに連れ
都会の様相を呈してきた。
「いや、ベレンから馬車で一日の
距離にあるバロードの村だ」
村と呼ぶには失礼な発展具合だ。
城壁が見えて来た。
城は無いのだが強固で立派な壁が
村を囲んでいる。
つくりはベレンのそれと似ていた。
門があり検閲だ。
まだ、かつての村まで距離があるのに
ここまで拡大していたのだ。
危ない物は詰んでいない
ブンドンの紹介状の効果も抜群で
検閲自体はスムーズだったのだが
門番は弱っていた。
「これを貼り付けた方がよいぞ」
冒険者協会の紋章だ。
どうしてか尋ねると
この車が珍しすぎ
「売ってくれ」と取り囲まれるのが
目に見えるそうだ。
「昔は貧しい村だったんですよね・・・。」
俺はそれとなく門番に聞くと
快く教えてくれた。
「ああ、それが今じゃバルバリスでも
5本の指に入る経済力の町だ」
門番は指で頭上を示す。
見上げてみると
でっかい文字で「女神降臨の地」と
書かれている。
いや降臨の地は中央の山脈だろ
そう思ったが、バルバリス国民の前に
初めて姿を現したのはここか
なんか納得。
「ベレンより聖地に相応しいのは
本当はこの町だよ」
自慢気に語る門番は
誇らしげに町での奇跡を教えてくれた。
3人の従者と一人の天使をお供に
女神はこの地に降臨され
病に苦しむ人々を救い
悪魔を退治し
痩せた土地に奇跡を起こし大豊作
めでたしめでたし
と、この村に伝わる逸話が
昔話形式で完全にテンプレ化しているようだ。
だいたい合ってる。
アルコの絵本も見習ってほしい。
ともかく初降臨の地としての
観光地って言ってはバチがあたるのか
巡礼者の数がハンパじゃないそうだ。
それと女神ダイレクトアタックの
豊穣効果もすごく
今やバルバリスの食糧庫と揶揄されるほどだ。
人・物・金・信仰
この四つが貧しかったバロードを
この十四年で一大発展に導いた。
ヴィータ
お前はやっぱり豊穣の女神だよ。
そんな訳で
二束三文だったバロードの地価は
うなぎのぼりになり
いまや成金だらけになっているそうだ。
貧乏だった頃の反動か
物欲の加速が止まらない状態になっている。
分かりもしないくせに
絵画・彫刻・宝石なども買い集めまくり
80年代の日本かよ
芸術・文化にも投資が始まり
バリエアの崩壊で失われた大劇場に
バリエアより先んじて劇場を造るなど
気を使わない金は正義との発展ぶりだ。
「そんなんでな・・・あんた達が
嫌と言っても金貨袋投げつけられて
車強奪されても不思議じゃないんだ。」
門番は移民してきた口じゃないのか
この風潮を嫌悪している様子だ。
「それはどうも御親切に
助かります。是非貼って下さい」
冒険者協会と教会
それとベレンの暫定政府関係。
この三つは成金達も迂闊に
手を出せない組織だ。
ブンドンの村長はそのまま
冒険者協会のブンドン支部長だ。
紹介状の効果で協会の紋章を
貸出せる事になった。
こんど立ち寄った時は
何か土産を持っていくか
本当に助かったぞ。
成金ゾンビに囲まれる姿を
想像して俺は震えた。
違うこうじゃない
成金の腹の出たおっさんにたかられたいんじゃない
俺は美少女に囲まれたいんだ。
「ナリ君。その宝剣も仕舞った方が
いいかも知れないな。」
「いえ、これは肌身離さずなのだ」
成金がそんな様子じゃ
かっぱらいも大量にいるぞ。
俺ならパクって即売って逃げる。
なんの特殊能力も無く
放り出されていたなら
そうしていたかも知れない。
俺は雷撃を気軽に出さない様に
ナリ君に注意をしておく
チャッキー君騒動の時の
全方位雷撃防御
あれを街中でやられたら
死人が何人出るか分からない
アンドリューはチャッキーに
鍛え上げられている様子だ。
俺も30後半のレベルで
かつ雷撃耐性の高い土属性だ。
その二人があの有様だ。
戦闘員でない庶民じゃ
多分、いや死ぬ。
「御意マスター」
本当に分かってるのかなぁ
「本当に分かってる?」
俺の心の声をミカリンが言ってくれた。
「ああ、問題無い」
そう言ったナリ君の背から
ミカリンは宝剣を引き抜き
そのまま車窓からダイブして
車外にでると走り出すマネをした。
「なにをする!!」
雷を纏うナリ君。
それを見てミカリンはすかさず剣を返す。
俺は接地の呪文を中断した。
危ないよ。
「こういうスリだっているよ」
剣を渡しながら言うミカリン。
「・・・マスター安全な隠し場所は」
少し考えてからナリ君はそう言った。
「床下に鍵付きの金庫があるよ」
「マスターの空間にしまう魔法なら
もっと安全なのでは」
「最もだが、それなぁ・・・。」
自分の物・所有権の無い物は
ストレージに入るのだが
他人の持ち物は仕舞えないのだ。
まぁ
これが可能だと泥棒し放題になる。
俺はそう説明し
ナリ君と一緒に隠し金庫に
宝剣をしまいに行った。
開け方閉め方を教える。
余程大事な物なのだろう
説明を聞いた後に自分で
何度か出し入れを実行して覚えていた。
「これならアモンが死んでも
取り出せるし、こっちの方が良いよ」
ミカリンがそう言った。
確かにストレージの出し入れは
俺しか出来ない。
俺が死亡したら・・・どうなるんだろう。
「成程、ごもっとも。これなら
マスターが死んでも大丈夫か」
なんか泣きそう
お前らそれ止めろ




