第六十三話 雷系習得
その日はブンドンに滞在し
翌日、エルフの里では入手出来ない
品物を入手した。
この資金は協会が持ってくれた。
冒険者登録は出来ないが
バングを2体も葬っている
報酬代わりだと支部長は言っていた。
遠慮なく世話になっておく
ボーシスさんとはここでお別れだ。
何処となく名残惜しそうな
ボーシスさんとナリ君だが
さっさと出発した。
南に進路を取る。
ベネットやヴィータが
コントを繰り広げた
毒の沼に沈んだ城を
目印にする。
この城なんだが
なんと復活しているそうだ。
支部長の話では
勇者ガバガバが城の地下に
封印されていた魔物を
退治して毒の霧は消え失せ
ベレンに避難していた
民の子孫が戻る事が出来たそうだ。
流石は勇者だ。
あのデタラメな体力と
ハルバイスト製作の極悪な切れ味の剣
大概の事はあいつなら
どうとでもなるだろう。
前回、歩きでは二日程掛かったが
車だと速い、森の中なので
スピードを出せなくても半日ほどで
エッダちゃんと別れた辺りまで来た。
夕方近く、まだ日は出ているが
前回も滞在した場所なので
多少の土地勘がある。
今日はこの辺りで泊まることにした。
食材探しついでに
レベル上げの戦闘もした
色々問題点が浮き彫りになる。
「だからさぁー味方に当たるって
言ってるじゃん」
「・・・済まない。」
ミカリンが怒っている。
ナリ君の雷撃は指向性があるのだが
着弾地点周囲にも電気が広がる。
発動までも、例のポエムが長いので
前衛が引くタイミングが難しいのだ。
俺は初めて後衛で良かったと思った。
「マスター・・・私、無理かも」
アルコは電気の痛みに恐怖している。
猪避けの柵なんかにも使われるくらいだ。
動物系には効果てきめんなのかも知れない。
「ナリ君。電気一旦封印ね」
孤軍奮闘、孤立無援、独断専行
森の中で独りで生き抜いて来た彼には
いきなり連携を取れと言っても
それは無理だろう。
俺はミカリンとアルコに
そう説明し、ナリ君には
今夜、特別訓練をマンツーマンで
やると告げた。
まだ彼の雷のカラクリを把握していないのだ
どうしても覚えたい。
ここでは封印するが
夜に思いっきりやってくれ。
夕飯の後で特訓を行う。
すっかり電気が嫌になったのか
アルコもミカリンもついて来ない。
野郎二人で森の中だ。
月明かりの十分差し込む
少し開けた場所で始める。
半魔化してデビルアイを起動させた。
ん
範囲や精度が上がっている。
前回の性能には遠く及ばないが
最初よりずっとマシだ。
思えば俺もレベル30台後半に
突入している。
各種の能力が上昇しているのだ。
「漆黒の・・・」
「あ、それ無しで行こう」
「えっ?!ちょ詠唱は必須だ」
「いや、実はな」
俺はナリ君の雷撃が魔法で
無い事を説明した。
その詠唱は発動には無意味な詩だ。
本人の気分を盛り上げる効果はあるが
魔法では無いので無くても出来るハズなのだ。
脳内でイメージして剣を振るだけで
発動する練習をしてもらう。
予想通りというか
彼の雷撃は魔法というよりは
MPを消費するスキルだ。
元々の雷属性が両親から譲り受けた
剣の助力で指向性を持つ雷撃に
なっているのだ。
剣も見せてもらったが
現時点での解析能力では判別不能だった。
ただ、金属では無く
宝石なのかな
黒く透き通った、なんか飴っぽい材質で
強度と靭性にすぐれ
割れたガラスの端っこの様に
縁には切れ味がある。
剣として使う事も出来る宝珠
そんな表現でいいと思う。
剣術に関しては独学の
良い所と悪いところが成長しきっている
とのミカリンの弁だ。
矯正は難しいかもとも言っていた。
ただ彼とこの剣の組み合わせは
通常の剣術では不適切とも思えた。
試しに打ち合ってみたが
鍔迫り合いは当然
いなしですら
彼の剣にこちらの剣が触れるだけで
電気が襲ってくる。
木製の祈年祭ですらだ
あんまり痛くて頭に来たので
接地を展開したら
数分とせずにナリ君はマインドダウンした。
これでは練習にならない。
「ルソゥー!!」
MP譲渡で目覚めるナリ君。
「うーむ我は強いのか弱いのか・・・。」
「どっちかっていうと強い
ただ、こう言っては悪いが
強いのは君の技術や腕力でなく
纏っているその電気だ」
冬場の超静電気体質の人だ。
そいつに触れることは死を意味する
ドッギャーン
バングといいナリ君といい
つくづく自分が土属性で良かったと思った。
そうでなければ死んでいただろう。
俺は前回、ストレガに渡した
雷属性のスティックを思い出した。
エンチャントインクで
なんて書いたっけなぁ
何とか思い出して
呪文の文章を組み立ててみる。
地面に書きとめると
ストレージから簡錫を取り出し
俺は読みながら試してみた。
「雷撃」
雷撃が杖の先端からほとばしると
標的にした岩に命中した。
脳内でピロロロロンと音が聞こえた。
「おぉ!!なんと?!」
驚いているナリ君を尻目に
俺はメニューを開き確認した。
雷系の魔法が開放されていた。
やった
開発が出来る仕様なのだ。
そこそこの効果率だった。
四行相克
火←水
↓ ↑
風→土
最適属性の効果が100とすると
俺の場合土が100
水が80、火が50
天敵の風に至っては20とか30になってしまう。
まぁ同じ威力同じMP使用量で揃った呪文が
ないのでなんとなくだが
同じMP20を使用した場合のダメージ差が
そんな感じになる。
雷はどこに分類されるのだろう。
元の世界のファンタジーでは
風に含まれると聞いたことがあるが
この世界では違うようだ。
土に対して圧倒的に弱く
水を違う物質に分解できる事から
この間に入れていいんじゃないかな。
そう考えれば
今の雷の高効果率も納得だ。
そう思う事にしよう。
後、専属の天使は居ないのか
四行それぞれに天使がいて威張っているが
雷を司る大天使はおらんのだろうか
今度、ミカリンに聞いてみるか。
俺は呪文を所々修正しては発動し
効果が高くそれでいて詠唱が短くて済むように
最適化していった。
「・・・自分だけの特技だと思っていた」
俺が雷をバンバン撃ち始め
それを横で見ていたナリ君はガッカリしている。
「いや、俺のは魔法だから」
最初に説明したMPを使用するスキルと
魔法の説明をし、
今しがた出来た雷撃の魔法を
ナリ君に伝授した。
「俺より適正が高いんだから
もっと強いのが撃てるハズだ」
「ハッ、マスターやってみます」
ナリ君は数回呪文を復唱して
覚えると魔法の準備に入る。
「-----雷撃!!」
ナリ君が叫んだ瞬間に辺りは
一瞬、昼間になった。
音速を超えて膨張する大気は
文字通り引き裂かれ雷音が響く
標的の岩は鈍い音で割れる。
「おああ!」
思わずデカい声をだしてしまう。
「スッゲー!!」
笑っちゃうぐらい凄い破壊力だ。
しかし、これは洒落にならない威力だ。
巻き込まれたら死ぬぞ。
俺の脳裏に骨が透けた後
ブスブスとこんがり焼けた姿の
ミカリンが思い浮かぶ。
滅茶苦茶怒るだろうな。
「凄いじゃないか!ナリ君」
ナリ君は倒れた。
ステータスを見るとMPが0だ。
一発で全部いったのか
おかしいなぁ・・・
そんな呪文じゃないハズなんだが
まぁ今後、テストを繰り返して
修正していけばいいだろ。
俺はナリ君にMP譲渡を
しようとした所で異常に気が付いた。
標的の岩の辺りから
火の手が上がっていた。
いかん
こっちの対処が先だ。
俺は慌てて駆け出し
ウォータシュートで消化作業に入った。
戦闘では使い道がないが
なんだかんだで
一番多く使用している呪文かもしれない。




