第六話 目的
鉄は手に入らなかったが
鈴・亜鉛・青銅などは入手出来た。
平目の岩にひたすら擦り付けて
錆を落として様々なアイテムに加工した。
幌を切り刻み服を作る。
ノコギリで倒木や細目の樹木を
切って簡単な丸太小屋を作った。
直ぐに旅を始めなかったのには
二つの理由がある。
万が一死亡した場合
またここに戻る可能性があるので
雨風を凌げる最低限のキャンプを
作っておきたかったのと
もう一つが
まぁこっちの理由が主だ。
「うげええええええ」
「あーあ折角作ったメシが・・・。」
初めて食ったモノは
ミカリンの体には大体受け付けなかった。
「なんで同じモノ食べて僕だけ
こうなるのさー」
上から下から大騒ぎ
鳥の卵の時は
全身に発心と痒みでのたうち回った。
「前にも説明したがな・・・」
受肉は初めてなミカリン。
恐らく本来この年齢なら
手に入れていて当たり前の
腸内細菌が居ないのだ。
赤ちゃんと同じ状態の腸内なのだ。
「不便すぎるよぅ」
項垂れるミカリンに
戻ったら神に文句言っておけと
言いながら
今日も俺は掃除とミカリンの看病だ。
こいつの腸内プラグインが
揃うまで旅は無理だ。
食い物だけじゃなかった。
免疫だ。
直ぐに高熱を出す。
「ホレ動くな-----はい」
俺はミカリンに回復呪文を掛けてやる。
「んーあー楽になる。ありがとう主様。」
回復呪文のお陰で
死亡に至る事は無い
HPが減ると俺が掛けてやるからだ。
俺はパパスかよ。
レベル1の人間状態で
唯一使える呪文だった。
始めは一々メニューを開いていたが
開かなくても出来た。
面白いのは杖を装備すると
効果が上がる。
その時のクラスはソーサラー
ジョブは僧侶に自動に変化する。
装備で左右されるようだ
杖も落ちていた枝ではダメだが
何らかの加工、持つ場所に
布を巻いただけでもOKだった。
加工が凝れば凝る程
効果も上昇が認められた。
金属の装備を着用すると
回復呪文は効果が落ちた
特に刃物を装備した時は
発動しなかった。
その時は
クラスがファイターで
ジョブは空欄だった。
腰から下げている状態では
発動した。
装備でなく所持と判定している様だ。
使いたい魔法やスキルに応じて
戦闘中に持ち替える必要がある。
逆に転職などと言う事を
しなくて良いので便利ではある。
それはそうだ
覚えた呪文を戦士に転職したら
記憶から無くなり
全く忘れてしまう方が不自然だ。
簡単ではあるが
我ながら突貫工事にしては
自信作のベッドに横たわり
俺を見上げて重ねてお礼を
言ってくるミカリン。
「本当にありがとうアモン」
涙ぐんでいる。
これは何の涙だ。
超越した存在だった大天使から
無力な人間に墜ちた事を嘆いているのか。
敵だった俺に看病されている。
感謝
屈辱
後悔
どれだ
まぁなんでもいいが
「寝てろ。夕飯、捕まえて来る」
良い実験台になっているのは
内緒で行こう。
三か月位するとミカリンは
森のモノなら何食っても
平気になったようだ。
そんなある日の夜。
俺はミカリンに話した。
「今後の・・・今回の目的なんだが」
目が光るミカリン。
神の指令の実行部隊である天使
やっぱり目標とか目的で
火が付くタイプなのか
「何?何!何ーっ」
すんごい食いつきだ。
「いいかよく聞け」
前回は殆ど
いや全てと言っていいかも知れない。
セオリーから外れていた。
しかし、今回はどうだ
メニューは開く
魔法は使える
アイテムストレージも使用可能だ。
そして何より
開始直後の裸の美少女だ。
イケるんじゃないか?
俺は真顔で言い切った。
「ハーレムを作るぞ。」