第五十三話 Be my angel
ラハが来るにはまだ早いが
俺とミカリンは散歩ついでに
里の外に出た。
騒ぎは面倒なので
里から離れた場所で
落ち合いたい
それにすっかり忘れていたが
ミカリンの天使化の性能チェックも
二人だけでやった方が良いだろう。
「いつの間に出来る様になったのさ」
心待ちにしていた様で
忘れていた事にちょっと怒っている。
「四足歩行のバングのトドメの時だ」
「大分前じゃない」
他に経験値が入ったイベントが無い
分かりそうなモノだが
これはゲーマーの理屈か
「この辺ならいいか」
エルフの巡回からも外れた森の中だ。
俺はメニューを開いて準備する
項目の一部に俺には無い項目がある事に
気が付いた。
「・・・常時許可?」
ああ
奴隷の影響か
ミカリンは今自由意志で変化出来ない設定だ。
これは許可で良いだろう。
今後、別行動などがあった場合に不便だ。
俺は常時許可をチェックし
状態変化の準備をする。
ミカリンはメニューが開けないので
魔法と同様に体感的にコレを覚えて
もらう必要がある。
「心の準備はいいか」
「いつでもOK」
「いくぞ!チェンジ・ミカリン
エンゼルモオオッド!!」
俺は大袈裟にフリックした。
ミカリンは一瞬光ると
下級天使に変化した。
服装、装備も専用になるのか
白を基調としたヒラヒラのアンダーに
銀のプレートを各所にあつらえた
恰好になった。
これは基本、ウルと同様だ。
背中の翼も一対二枚の
カワイイサイズだ。
頭上の輪っかが綺麗に光っている。
姿そのものも発光している気がした。
ミカリンは自分の姿を
キョロキョロとチェックして
感想を言った。
「うーん。下級じゃ飛べるぐらいしか
メリットがないかも。今なら人型の
方が多分強いよ」
はい
俺も同じです。
「どうだ。自分で変化できそうか」
「・・・ちょっと戻してみて」
変化を何回か繰り返した。
変化による消耗やペナルティは
存在しないようだ。
5分と経たずにミカリンは
自在に変化出来るようになった。
「ようし、俺も」
俺も下級悪魔にチェンジした。
その瞬間ミカリンが苦しそうな声を出す。
「うげぇえええ何コレ」
ヴィータの時もそうだったが
互いにダメージが入ってしまう
更に呪いのせいで俺に入るべきダメージが
ミカリンに行くのでミカリンだけ
二倍に苦しむのだ。
「おぉわっとゴメン」
俺は人型に戻ると
距離を取りながら
チェンジを繰り返した。
20m離れればダメージは無い
ただ嫌悪感はあるそうだ
100m離れると嫌悪感は薄れ
俺の居る方向ぐらいしか分からないそうだ。
ちなみに接触出来る距離だと
かなり苦痛だそうだ。
否が応でも
天使と悪魔は相手の存在を
消す方向に動く様に出来ているのだ。
「これは同時にならない方が良いね」
呪いのお陰で俺は嫌悪感だけだが
ここはミカリンの意見を優先だ。
俺は同意する。
そうだ
どうせテストついでだ。
「これは・・・どうだ」
「・・・ん?んー」
ミカリンは顎に指を当て
眉間に皺を寄せて俺を観察する
様にジロジロ見ながら
俺の回りを一周した。
「何か変な感じ・・・何したの?」
おぉ
上手く行っているようだな。
これは前回、もっとも多用した形態
半人化だ。
今回は人が基本なので
半魔化と表現すべきか
「ふふふ、これはな」
俺は得意になって
半魔化を説明した。
「うそ!下級の出来る技じゃないよ」
「初めから終わりまで下級なら
そうかもしれんが俺達はハイエンドまで
行く事が可能だ。」
ちなみにデビルアイ廉価版を使うと
独特の嫌悪感が漏れてバレるそうだ。
これは有難い情報だ。
天使相手にやり過ごす際に
とても大事な事だ。
ミカリンも人型のまま
天使力の行使が出来ないか
チャレンジしてみたが
上手く行かなかった。
やはり前回の経験が生きているようだ。
それとも天使は出来ないのか
カルエルもいくら教えても出来なかったしな
でも、ヴィータの話だと可能な
ハズだが・・・。
うーん
俺の根拠の無い推論だが
これは騙すという行為に対する
耐性が天使と悪魔では
異なるという事では無いだろうか。
嘘を付ける存在かそうでないかだ。
ミカリンはしばらく
頑張ったが音を上げた。
「ダメだぁ出来る気がしないよ」
久々に
ちょっとだけ優越感だ。
レベルは俺のが上だが
ミカリンのが強いのだ。
いいなぁ火系統。
便利だけど地味なんだよな
土系統って
「んーそろそろかな」
「見つけやすいトコロに移動するか」
山と言う程では無い
ちょっと小高い岩を指さして
俺は言った。
「お先どうぞ」
察したミカリンは早速、天使化して
おっかなびっくり飛行した。
下もちゃんと穿いていた。
て、何をチェックしているんだ俺は
ミカリンが到着し人化してから
今度は俺が悪魔化して飛行する。
前回は飽きていたが
今回の飛行は楽しい。
速度にもよるのかもしれない
音速飛行は楽しく無かった
圧縮される大気の爆音と熱の対策
移動間の安全確保
自由に飛んでいる感覚は
低速の方が味わえる。
「よっこらっせ」
岩の頂上付近で
水平気味になっている箇所に
着陸し半魔化した。
しばらく待つと
月に小さな黒い点が二つ現れ
ゆっくりと大きくなっていく
「二つ?」
飛行してくる天使は二体だった。
俺達を確認したのだろう
一体が急加速して
こちらに突っ込んで来た。
「ミカリンを返せええええ外道があああ」
脳天の辺りから発声しているのだろうか
やたらカン高い声
ショートボブの青い髪に
童顔丸顔タレ目
その幼い顔に似つかわしくない
成熟したボディ
あいつか・・・・
「死ねおりゃああ」
槍は前回の豪華なのではなく
なんか給食のスプーンの
比率を弄って槍にしたような
かわいい槍になっていた。
例によって下級にグレードダウン
武器も同様なのだろう。
「ブリ?なんで」
驚くミカリン。
という事はラハだけが来る
予定だった事が窺える。
ラハがミカリンの所に行くと
知って無理やりついて来たのだろう
槍を構えて
俺目掛けて突っ込んで来るブリ
殺す気だ。
俺は冷静にタイミングを計り
スパイクで迎え討った。
俺の目の前
ドンピシャのタイミングで
串刺しになるブリッペ。
バカめ
なんで岩山で待っていると
思っているんだ。
ここに居る限り俺は強いぞ。
地面ではないのでデスラーホールは
使用不可能だが
飛行する天使にはどうせ使う機会は
無いだろう
それよりも壁も棘も
良質な材料が豊富なのだ。
さらに斜面も岩なので
横からスパイクを発動させる
事も可能だ。
「お腹に穴がああああ」
血液は流れない替わりに
光の粒子が傷口から
ゆっくり上昇している。
強制解除されたスパイクは
生えて来る時の逆再生の
様に地面に戻って行く
スパイクの移動に合わせ
ブリッペは地面にへばりついた。
焼き鳥みたいだった
羽もあるし
もう一体の天使が弓を構える。
信号機の青みたいな
緑と青の中間の髪の色は
ウェーブが掛かり長目だ。
顔はウルと違い善人面だが
なんか腹黒い感じがする。
うまい
俺のスパイクが届かない位置で
滞空した。
前回もそうだが
こいつは味方が酷い目に
遭ってから自分の行動に移る。
賢くズルいタイプだ。
弓も魔法少女が使いそうな
かわいい感じの小さめだ。
「だから連れて来るのは嫌だったんです」
そう言うとラハは俺の予想外の
行動に出た。
倒れ伏したブリッペの腕や足を
射貫き始めたのだ。
「ぶへぇ!がはぁ!」
声のせいか
どこかコミカルだが
おいおい残酷だな
ラハはやべぇ奴だ。
俺は自分用に準備していた
石壁を位置を変えて唱え直した。
壁は射線を遮り
ブリッペをガードした。
弾かれる甲高い音を発する。
強度は十分だな。
「止めろ。そして下りてこい」
俺は命令口調でそう言った。




