表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぞくデビ  作者: Tetra1031
522/524

第五百二十一話 最終戦闘

さて

俺自身に移動スライドする気配が一向に表れない訳だが

その理由が地上から迫って来ていた。


ありとあらゆるもの

全てが移ろい行く中で

バリバリの存在感をと不快感を漂わせ

そいつは真っ直ぐ俺に向かって上昇してきていた。


もう馴れた不快感だ。

これだけで誰だか分かった。


ミカリンだ。


違うとは思うが

念のため言っておくか


「竜の王なら、もう退治したぞ。」


広がる12枚の翼

白い衣装に銀の鎧は

褐色の肌が映えるな。


「そうみたいだね。

ゴメンぶっちゃけ竜とか

どうでも良くてさ。」


そうだ。

そう言う奴だった。


「人類の勝利だ。やるべき事は終了した。」


表情に変化は見られなかった。

節制下の冷酷な顔でも

エネルギー不足の疲労困憊でも

強敵に挑む悲愴な顔でもなく

見慣れた顔。


戦うのが楽しくて仕方ない

ウキウキ顔だ。


もうこれだけで

俺はウンザリだ。


訓練で散々目にして来た表情だ。

この表情のミカリンを相手に

俺はボコボコにされっぱなしだった。

俺にはトラウマな表情だ。


「べき 事はね。

たい 事が残っているよ。

このままじゃ終われないよ。」


当然、ミカリンにも移動スライド

兆候は全く見られない。


「ほーっ何がしたいってんだ。

何もかもが水を被った角砂糖みたいな

この状況で一体何を望むんだ。」


意外な事に得物はレフバーンだった。

ミカリンはそれを俺に突きつけ言った。


「僕たちが本気で戦えば

被害無しなんて無理なんだから

逆に好都合だよ。

今なら何壊しても怒られないじゃん。」


「・・・レイバーンじゃなくて良いのか。」


「アモンを倒すなら

これが相応しいよ。うん。」


そう言って愛おしそうに

レフバーンを眺めるミカリン。


そんな事の為に作ったんじゃないんだが。


「負けた時の言い訳用か?」


「ふふ負けないよ。」


俺の挑発も効果無しだ。

むしろ逆効果だった。

ウキウキ顔が強化された。

・・・・いやだなぁ。


「竜の王を倒したって事は

共闘も終了でしょ。

まぁ叱る神様も移動スライドしちゃって

怒る事も出来ないし

僕にもアモンにも呪いみたいなハンデが無い

正真正銘、どっちが強いのか

決着を付ける千載一遇のチャンスだよ。」


はぁ

やるしかなさそうだ。

覚悟を決めるか

俺は創業祭を生成し構え

わざとらしく大見得を切った。


「我が名はアモン。

魔神13将序列一位。

力も以って全てを破壊する者なり。

立ちはだかる全てを灰塵と化す。

消えたく無ければ即刻消えろ!!」


ありゃ最後、言葉として

ちょっと変だな。


しかしミカリンは笑う事無く

何と乗って来た。


「我はミカ。

全ての天使を従える

四大天使の長にて炎と天を司る者なり。

神の意向にそぐわぬ不浄の者よ。

逃げても無駄である。

大人しく焼き尽くされよ。」


見逃すよと言う悪魔と

許さないよと言う天使

みなさん

どっちの方がヒドイと思いますか。


「「いざ!」」


腰を落とし前かがみ

互いにいきなり超音速突撃だ。


しかし

そう読んでいた俺が加速した方向は

前でなく後ろだ。


世界が形を失い流れる中

俺とミカリンだけが輪郭を持っていた。

近づきも離れもしない

瞬間超加速能力は寸分違わず同じだ。


「うははバカめ。」


俺は悪魔光線を発射するが

着弾直前で炎化したミカリンには

何の効果も無かった。


はぁ

前回もそうだが

ズルいよなソレ。


俺はすかさずストレージから

対ミカリン用の盾

テーン風盾改を取り出し

身をすぼめて隠れた。


絶対、仕返しで撃って来るに決まっている。


俺が隠れると同時に

ミカリンの天使光線が盾に着弾し

七色の光に分解されながら分散反射した。


「何ソレ?!」


盾の表面はクリスタルドラゴンの鱗を

瓦屋根の様に敷き詰めてあるのだ。

悪魔光線を防いだこの鱗

対光学系として使えると踏んだ俺は

内緒で作成しておいたのだ。


「良いだろ。」


ここで逆方向に加速

シールドバッシュを仕掛けた。

光線攻撃の直後だ。

この盾を知らない状況で

まさか一直線に向かって来るとは

想定していまい。

初見のみ有効な貴重なチャンスだ。


物理攻撃が一切無効な炎状態だが

全身を弾き飛ばす広面積の攻撃

これはどう通過するんだ?


俺は前回より成長しているぞ。


ドワン!


「っご?!」


予想外の抵抗衝撃に思わず変な声が出た。

派手な金属の衝突音だ。


視点変更で見たミカリンは

炎化を中止して大地ガイアスシールドを構え

シールドバッシュに対しシールドバッシュで返した。


・・・前回と異なるのは

ミカリンも同じか

今回の旅で盾覚えたんだよな。


それにしても


「ウルが行ったのに

何で盾が残ってんだ?!」


そう叫ぶ俺に

ミカリンは納得した表情で答えた。


「・・・やっぱり僕のじゃないのか。

だよね四大天使って言うんだから

他にも三人居るハズなんだし。」


ちぃ

旅での使用が長すぎて

ミカリンにも所有権が発生しているようだな。

残ってやがったか。


「ははは良い

やっぱりお前は良いよ!!」


強いなぁ。


「それは僕のセリフだよ!」


良い笑顔で襲い掛かって来るミカリン。

はぁ戦闘系天使はこれだから。


どの位の時間だろうか

俺達は全力で戯れた。


ベレンの街は瓦礫と化し

取り囲んでいた川の水が干上がり

北の森は燃え

南の荒れ地はめくれがって

所々に丘が出来上がった。


「アモン!」


「ミカァアアア!!」


エネルギーの供給源

人間が一斉に移動スライド中だ。

精霊も同様なのだろう魔法も効果が薄くなって行く

ちなみにいつもの調子で連雷撃ボルテッカを撃ったら

目まいがした。

ババァル電池が無いとこんなになるのかコレ。


とにかく消耗は予想以上に早かった。

これが互いに最後の一撃だろう。


ミカリンのレフバーンは俺の首を

確実に捉える一撃。


俺の創業祭は股間から頭頂部まで

切り裂く一撃。


互いに不可避の一撃だった。






「・・・何で斬らないのさ。」


俺は寸前で得物を捨てた。

落下していく創業祭。


「前回ならともかくな

一緒に旅をしてお前を知ってしまった俺には

もうお前を斬る事は出来んのだ。

お前の希望は叶えてやりたい

だから、せめてこうするのが一番だと思ったんだ。」


レフバーンは首を少し食い込んだ辺りで

止まっていた。

あのタイミングと勢いで

良く止めたな。


「ズルいよ・・・。

ズルいよズルいよズルいよ!!」


戦闘狂の顔はどこへやら

ミカリンは大粒の涙を溢し

俯いて連呼した。


「僕だって・・・出来ないよ。」


・・・・何で挑んで来た。


「馬鹿!!」


良く言われる。


「鬼!!」


それはユーさんだろ。


「悪魔!!!」


そう、それは正解だ。


「ニトロプラス!!!」


何だとぉ!!

あそこまで非道じゃないぞ。

それは言い過ぎなんじゃないか。


この最上級の罵倒

これには黙って居られず

流石に言い返そうかと思ったが

続くセリフと行動に止められた。


「大好きっ!!」


唇から激痛が走った。

互いに頑張って維持しようと試みるが

お互いの顔面に罅が入っていった。


「ぐあぁああああああああ無理無理無理!!」

「痛でででえででででええ痛ーっい!!」


リアルで視界に星が舞った。

互いに顔面を押さえてのたうち回り

マシな距離まですかさず離れた。


「ミカリン。俺達やっぱり無理だって・・・。」


「え~何とかなんないのかなぁコレ・・・。」


うわぁ

顔、割れてんぞ物理的に

痛そう。

って俺の手の平にも

俺の顔面の破片があった。


「って・・あれ?」


ミカリンがそう言うと

ミカリンの外殻から黄金の粒子が

立ち上り始めた。


やるべき・・・いや

やりたい事が終わったのね。


戦闘だったのか

愛の告白だったのか

或いはその両方か。


「ねぇ次の世界でも

僕は天使なんだよねぇ。」


「ああ、間違い無いだろうな。」


「でアモンはやっぱり悪魔?」


俺は少し考えてから答えた。


「いや呪いの人間化から考えると

ただの人間になる可能性もあるんじゃないか。

分からんけど」


「本当!!」


輝くような笑顔のミカリン。


「いや、だから分からんって

可能性の話だ。」


「もし、そうなら

僕が迎えに行くね!!」


パトラッシュ・・・何だかとっても


「待っててよ!絶対だよ!」


「ああ、待ってるぞ。」


俺は手を振った。

ミカリンも振り返した。

そうしてミカリンは消えて行った。


俺は顔を押さえて

痛みが消えなければ良いのにと

生まれて初めて

そう思っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ