第五百二十話 嫌な総集編
これではどこを探しても見つからないし
いくら魔法を使用しても魔力が枯渇しないハズだ。
出来るとは思えなかった時間停止だって余裕だわ。
ずっと一緒で中から俺を助けてくれていたんだ。
納得だ。
そして歌の歌詞じゃないが
世界が終わるなら
もう離れても良いのか
って
バスケのマンガなんだから
世界じゃなくて
試合にしておけと当時は思っていたが
歌としての規模が縮小しすぎか。
「助かりましたわ。」
俺の背中から出て来たババァルは
指で涙を拭いながらそう言った。
ああ
オーベルが見たのは
このシーンか。
「アモーン!!」
紅い瞳と赤い髪。
程よくタプタプのナイスバディ
会いたかった。
ずっと探し続けた。
その旅も今終わるのだ。
喜びと感動の声を上げ
ババァルは俺の顔を蹴ると
シンアモンの胸に飛び込んで行った。
シンアモンは優しく迎え
抱き留め熱い抱擁から
二人はキスをした。
はーっ
ここに来て
このオチですか。
これは二度目のプロポーズの
返事は聞くまでもないな。
いつもの俺なら二人共々
シン悪魔光線で焼き払ってやろうかと思うトコロだが
不思議と怒りは沸いて来なかった。
全身ボロボロのシンアモン。
彼が何故ここまで頑張ったのか。
本当に幸せそうな顔のババァル
嬉し泣き
その涙の美しさに見とれ
なんか素直に
良かったと思えたのだ。
ただ顔は蹴らないで欲しかった。
「あー・・・まぁ
その・・・これで良いんだ。」
キスを終えたシンアモンは
照れくさそうにそう言った。
そっちはな
まぁでも同じ気持ちだ。
これで良かったんだ。
「酷い目にあいましたのよ。
内側から嫌でも見えてしまうのです。」
キスを終えた
ババァルはそう言って
総集編を語り出した。
そうか
俺の内側から俺の行動を
見ていた状態だったのか
救世主が世界を救う戦い
特等席だな。
それは良かったんじゃないのか。
しかしババァルが語り出したのは
戦いの話では無かった。
「初潮もまだの少女を裸に剥いて舐めまわしたり。」
ミカリンか
良い味じゃなかったな。
「人妻の胸を偶然を装って触ろうとしたり。」
ジゼルさんだ。
未遂でホント良かった。
「ダークエルフの胸なんて
5分くらい揉みっぱなしで」
プルかぁ
あれは良かったなぁ。
「暗殺者の魔族の胸を執拗に覗こうとしたり」
グレアだ。
今でも見たいです。
「穴の魔法で落下する危険から守る振りして
おっぱい掴んだり。」
ブリッペか
デカかった
いや
デカったわ。
「恩を着せた弱い立場の相手から下着を要求したり
洋服を脱げと脅したり。」
宝物だよシャーリー。
モナちゃんは可哀想だった。
クフィールは存在が可哀想だった。
「状態変化を利用して裸を見ようとしたり」
オコルデか。
ストレガに邪魔されて結局見れなかったな。
「全裸で女騎士に襲い掛かったり。」
ブットバスか
アレは事故だろう。
「部屋に忍び込んで下着を・・・盗んだだけでなく
かかか被ったのですわよ。」
ふぉおおおおお
イライザの一件
今思い出しても何であそこまで
一生懸命だったのか自分でも分からない。
「真面目な娘相手に度々裸で迫ったり」
うーん
それは結局お互いさまに
・・・言うまい。
「悪魔力譲渡に託けて幼女相手に性交渉をしようとなさったり。」
ビルジバイツを助ける為に
仕方が無かったんだ。
結局、俺の方の粘膜が皮で完全コートされていたせいで
出来なかったしな。
「古くなったので廃棄しようとしていた上級生の
制服を反射的に受領したり。」
・・・クワン先輩か!
何でストレージの中にあったのか
全く覚えて居なかったがそんな事があったのか。
捨てるモノということで所有権が無くなり
それでストレージに収容可能になった訳だ。
謎が解けた。
「かと思えば大して色気の無い眼鏡に
迫られてタジタジになったり。」
ファーか
攻められると弱いんだ俺は。
「服の上からとは言え
ナニを握らせて何だか分かるかって迫ったり」
あそこでウリハルが銀色の輝きを
出していたら消滅していたな。
まぁ勇者じゃないから杞憂だったが
当時はその認識は無かった。
危ないギャグだったな。
「先ほどまで凍死寸前だった人と
始めようとなさったり。」
ヴィータかー
ストレガの強襲でこれも未遂だったなぁ。
悔やまれる。
「最後の方ではもう普通の刺激では
満足なさらないのか
筋肉ダルマや男性と3人で始めようとしたり。」
いや
見てたんなら分かるだろ
俺は襲われた方だろ。
しかし
こうして振り返ると俺は
「ロクな事をしていないな。」
シンアモンに言われた。
「それで良く世界が救えたものだ。」
全くだ。
「いや、言わせてもらえば
世界を救うより
ラッキースケベの方が
難易度としては上だった。」
確かに男子の性癖を
否が応でも見続けるのは
地獄だったに違いない。
これは申し訳ないな。
つか
俺が恥ずかしさで死ねる。
こんな世界無くなってしまえば
って
無くなるんだよね。
笑う俺とシンアモン。
ババァルはまだ泣きながら
続けた。
「危険な目に何度も・・・
私なんかの為に
何度も・・・何度も・・・死に掛けて・・・。」
「「男とはそう言うものだ。」」
被った。
でもこれはそうか
当たり前の事だ。
ババァルも黄金の粒子に包まれ始めた。
「え?まだお伝えしたい事が
山ほどありますのに・・。」
「時間の許す限り言うが良い。」
シンアモンに促され
物凄い勢いで話始めるババァルだが
元々話し方の上手な方では無いせいか
感極まって取っ散らかっているせいか
滅茶苦茶で半分も理解出来なかった。
まだ話が途中だというのに
「さらばだ。」
シンアモンの一言で
二人は消えた。
二人の消えた空間を俺はしばらくの間眺めた後
シンアモンの言葉を繰り返した。
「そうだ、これで良いんだ。」




