第五十二話 準備期間
学園の入試までは
まだ期間がある事もあり
しばらくはエルフの里に滞在し
魔法の指導と自分達の旅の為の
準備に日々を費やした。
アルコは専ら学業に専念だ。
意外だったのは脳筋だと
思っていたのだが本人曰く
勉強が楽しい。との事で
メキメキと習字していった。
これなら筆記も大丈夫ではないか。
ペルナはあの直後に謝罪に
やってきた。
本当に後悔している様子だったので
俺は「お前は見込みがある」と
励ました。
おだての効果か、本当に才能があったのか
エルフ魔法団の中では随一の使い手になった。
転生組は思った程でも無い
変に落ち込ませない為に
プルを含めて一度集会を開き
剣や弓の技能と魔法は相反する事を
教えておいた。
これ以降は鎧を着こむ物理組と
杖とローブの魔法組に分かれて
訓練するようになった。
魔法の運用は弓兵がメインだった
エルフにはその代用的な運用が
そのまま当てはまったので
すぐに軍として形になったが
矢と違い、MPの残量が
キチンと把握出来ずに
訓練中に魔法組は良く倒れていた。
校長先生の話最中の体育館だ。
ミカリンは仮想バング役を
良く買って出て
一人で一軍を相手して
エルフの
MP切れの原因になった。
俺はというと
ドワーフの鍛冶場に入り浸り
部品の作成に精を出した。
何の部品かと言うと
車だ。
魔法の分析から
壁と棘はほぼ同一の呪文だと
いう事が分かった。
作成する形の違いだ。
これを改造し
今は土で様々な形を生成出来る様に
なっていた。
俺はそれで鋳型を作りだした。
鉄を多く含み
珍しく他の石を間違えにくい
磁鉄鉱。
これを8個均等に円筒形に削り
クランクに連結し
一つの軸を回転運動させる。
そうエンジンだ。
直6にするか
V8にするか迷ったが
原動力である俺の魔法「投石」的には
どちらも差が無かったので
パワーの出るV8にした。
エンジン上部のコクピットに
俺が座り投石を磁鉄鉱を選択し
発動し続ける限り
エンジン内部でピストン運動は
終わらないのだ。
エンジンに変速機を付け
前進8速、後退2速
一トンを基本に30度の斜面を
踏破出来るトルクを最低ギアに設定し
上のギア比を決めた。
計算上では時速100kmを
超えられるが
舗装された道路が無いので
止めて置いた方が良いだろう
俺の魔力がどこまで持つかも
不明だしな。
速くテストしたい。
難航しているのは
むしろサスペンションだ。
コイル状のバネが作れない。
普通に針金を巻いただけでは
バネにならず
潰したら潰れたままだ。
焼きを入れてみるが
ポキポキ折れるか
上手くいっても
ハネ具合がバラバラで
均一にならないのだ。
大人しく板バネで妥協しよう。
風呂はなんと入る習慣のある者が
里にほとんど居なかった。
エルフはむしろすぐ湯だってしまうので
イヤがられた。
そういえば前回もそうだったな。
プリプラは中の人が日本人だったせいで
入浴したがエルフの体には無理だと
言っていた。
ドワーフもその習慣が無い。
後の人間達も習慣が無い人ばかりだった。
なんてこった
お前ら人間じゃねぇ
なので
端っこにひっそりと建造した。
三半機関専用になるだろうから
小さめにしておこう
湖の丸太小屋は
天然の地形を利用して
作成したので意図せず
デカくなったが
一から作成となると
小さくても結構大変だった。
なんとか二人位は
足を伸ばせる程度の風呂が完成する。
薪でも沸かせるが
ミカリンのヒートアローだと
数分で適温だ。
うっかりコアを窯から出し損ねると
あっという間にグツグツと
煮えたぎってしまう。
水は俺のウォータシュートが
役に立った。
プラプリが水を引く許可も
くれたのだが工事が面倒くさかったので
魔法でやることにした。
この呪文、大して威力が無い分
使用されるMPも大したことない
いくら使ってもMPは減らなかった。
「うぃぃいいいぃい」
夕方になると俺は
毎日の日課の様に入浴している。
今日も一日の疲れを癒す。
「ブレーキの油圧もアレでいいよな」
湯に浸かりながらアレコレ思い出す。
車はそろそろ組み上げてテストしても
良い頃だ。
「マスター。私も入ってよろしいでしょうか」
表から声を掛けられた。
この声はアルコだ。
俺は快諾する。
アルコは最近上着を着ている。
主にペンなどの小物を入れて
持ち歩く為だ。
上着と色々道具がぶら下がった
ベルトを着替え場で引っ掛ける音が
聞こえ、やがてアルコは入ってきた。
キチンと掛け湯をしてから
湯船に入る。
「うぃぃいぃいいい」
うーん、すっかり覚えてしまったようだ。
「マスター。今日はですね」
その日の勉強の報告が始まる。
俺はそうかそうかと感心して聞いてやる。
お父さん状態だ。
「あー二人だけでずるーい」
着替え場の服から
俺達二人が先に入っている事を
察したミカリンが文句を言っていた。
「どれミカリンと替わりに俺が出るか」
二人用なので三人の時は
一人は体洗いだ。
あっという間に脱衣し
ドタドタと入って来るミカリン。
「ほれ」
俺は賭け湯をしてやると
ミカリンは軽い痛みを訴える。
良く見てみればかすり傷が多い。
「最近では当てられる事が増えて来たよ」
エルフの魔法と弓だ。
弓は練習用に先端が
丸くなっているタイプだが
直撃すれば痛い。
俺は治療呪文をかけてやり
綺麗にしてやる。
「ミカリンに当てるなんて
大したモンだな」
テストでないガチ練習試合で
俺はミカリンに当てた事が無いのだ。
まぁ俺との場合は一対一なんだが
「個々はそうでもないんだけど
連携するとエルフ強いよ」
アルコが上がり、
俺も二回目の湯船を楽しんだので
上がろうとする時
ミカリンが言ってきた。
「今日、夜中ちょっと出られる?」
「構わんが、何だ」
「ラハが来るっぽい」
ミカリンは首から下げた
ペンダントを弄りながらそう言った。
連絡があったようだ。




