第五百十七話 複雑な縁の宴会
ハンスを交え報告&作戦会議だが
報告はまぁ問題無かったが
作戦はどうにも
相手の事が一切分からないので
会議以前の問題だった。
自然と雑談へと脱線して行ったが
咎める者は居なかった。
本線に戻っても
どうにもならないのだから。
「ええと・・・ヨハンさんと
チャッキースさん。」
「おぉジュノか、久しぶりだな。」
「ハンスです。
あんなのと間違えないで下さい。
後 ス はどっから出て来たんですか」
気絶から立ち直ったジュノも参加した。
前回、ヨハンとハンスには面識があったっけな。
ユークリッドの提案の罠だが
ビルジバイツに一蹴された。
魔王を集合させる位なので
効くハズ無いと断言した。
「それが効くなら妾一人で十分じゃ。」
ゲカイと違い
上位には効果を成さない力だ。
人間ボディの脆弱さを考えて
戦線から外れるべきと言い切った。
巻き添えで無駄死にがオチだそうだ。
言葉では申し訳ないと言ったジュノだが
表情は明らかに安堵の色が見えた。
「そうですか。ヴィータ様はバリエアですか」
ユークリッドの報告に
ハンスは残念そうだった。
最終決戦を共に迎えたかったようだが
疲弊した民衆を一気に活気づけた話には
とても喜んでいた。
「ヴィータとウリハルを向こうから
外す訳にはいかない。」
今や民衆だけでなく
神々の支になってしまっているのだ。
「そうですか。ウリハル様も
ご立派になられて・・・。」
囮とした事に後悔は無いのだろうが
思う所はあるハズだ。
それが囮どころか
勇者の名声を獲得するまでに至った事は
ハンスの心を揺さぶった。
薄っすら浮かぶ涙。
万感の思いが見えた。
「後、チャッキーもバリエアに向かっているぞ。
何か弟子も一緒だったな。」
俺はすっとぼけてハンスにそう言った。
「そ・・それは益々心強いですね。」
淀むな、普通にしろハンス。
「アイツはどこで何をやってたんだ。」
そう言うヨハンに俺は適当に答えた。
「さぁチャッキーだからな。」
ヨハンはそうかと笑った。
「キャラバンより先行していると
言う事ですよね。
上手い具合に敵を減らしてくれると
有難いですねぇ。」
総戦力はどう考えても
キャラバンの方が上なのに
酷な事を期待するユークリッド。
鬼だ。
「お待たせしましたー。」
そう言いながらストレガが
料理を乗せたワゴンを押しながら現れた。
居ないと思ったらメシ作ってたのか。
やたら喜ぶヨハンとユークリッド。
あぁ旧俺んちが会議場になってしまった
理由がコレだったんだっけな。
料理を運ぶのをハルバイストが手伝う。
それを見たミカリンも慌てて参加した。
「なぁ兄ちゃんの妹・・・
ありゃあ一体何でぃ?
悪魔でも無ぇし、ましてや天界の者でも無ぇ
当然・・・人間じゃねぇ。」
俺の所へ料理を運んで来たハルバイストが
ヒソヒソ声でそう言った。
手伝いはカモフラージュで
それが聞きたかったのか。
「妾も気になっておった。
少なくとも妾の知るいずれにも
該当せん存在じゃ。
まさか
疑似魔法生命体の完成系ではあるまいな。」
席が隣だったビルジバイツも参加して来た。
「俺の妹は蠅じゃないぞ。」
疑似魔法生命体は蠅に限定しないそうだ。
うんボケだよ。
分かってるって
元々はオーベルの作った
スケルトンなんだそうだが
この話しぶりからすると
ビルジバイツはその事を聞いていない様だ。
「完全な新種だよ。」
以前、ゲカイに
そう言われたとストレガが言っていた。
それで通そう。
それにしてもこの面子。
それぞれ複雑な縁を持った集団だよな。
その後は酒も入り
ただの宴会になっていった。
ハンスが泣き出すんじゃないかと
ハラハラしたが終始ご機嫌な様子で安心した。
泣き上戸ってワケじゃないね。
「アモン?!」
「何だ。」
ミカリンが不意に大声で
俺を疑問混じりで呼んだ。
俺はすかさず返事をして
ミカリンを見るが
ミカリンは俺の方を向いておらず
天井を見ていた。
変な酔い方をする奴だな。
そう思った直後
それは襲って来た。
壁や窓ガラスが細かく振動し
直ぐに何も無かったかのように
収まった。
一瞬だけだが
間違い無い
これは悪魔オーラだ。
上の方
それもかなり遠くからだ。
司教3人は酔いが醒めた様に
硬直していた。
「集合って言ってたっけ
魔王でも来たのか?」
俺はビルジバイツにそう言ったのだが
ビルジバイツも腑に落ちない表情だ。
「今のは・・・お主のオーラじゃが
ここに居るし・・・・。」
え
オーラにも個人の特徴が出るのか。
って事は
「ああ、もう一人居るんだ。」
「一人でも問題なのに。」
ユーどんな問題だい。
ってふざけている場合じゃない。
シンアモンが来た。
これは竜の世界での用事が終わったと言う事
同時に竜の王の現界が近いと言う事でもある。
「ちょっと行って来る。」
腰を上げる俺にミカリンが天井から
俺の方に向き直った。
「僕も・・・って無理かぁ。」
そうだ同時出撃は無理だ。
「妾がと言いたいトコロじゃが
虫の羽では届かん高さじゃな。」
マンションも上の方の階だと
蚊いないそうですよね。
「お兄様、私なら」
ストレガがそう申し出たが
俺は断った。
「多分火薬が足りん高度だ。」
残念そうになるストレガ。
「一人でいいよ。
敵じゃないんだし」
なんならココに連れて来ると言って
俺は外へと出た。
急いだ方が良い。
あのオーラは俺を呼んだって事だ。
俺は悪魔男爵化すると
発信源に向けて一気に上昇した。




