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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第五百十四話 ここで会ったが

ジュノの現状を確認した。

人状態で権能は恐らく最低限

禁止事項に制限は無いものの

対象は一名のみというショボさだ。

ダッソと同じだ。

前回はベレン・バリエア市民全員に

禁止事項を行使した強者だったのにな。


俺とビルジバイツは指を刺して笑った。


「ま真に申し訳ございません。」


いたたまれなさそうにジュノは謝罪した。


「いや、スマン。

お前に非がある事じゃない。」


「そうじゃ。今回は大人しゅうしとれ。」


笑いながらなので

ちゃんと言えたか伝わったか

怪しい俺とビルジバイツの弁だ。


「それにしても何で

無人の村で洋服屋をやっとんたんじゃ

まぁお陰で助かったんじゃが。」


俺なら「想定してました」と即嘘をつくのだが

ジュノは正直に話した。


前回の降臨で

洋服屋にハマったそうだ。


「客いないのにか。」


客は居なくても良いそうだ。

むしろいない方が良いらしい。

この色とりどり様々な種類の服

これらに大量に囲まれた

この空間がたまらんそうだ。


「魔界には無いのか。」


そう言う欲求を戦地で満たすのはどうかと


「魔界の衣料事情は・・・。」


偉い人向けのオーダメイド以外は

貨車に適当に積み上げられた古着が主だそうで

新品には滅多にお目に掛かれない。

こんなキレイな状態のモノが大量になど

夢の世界だそうだ。

増してや鏡付きの着替える部屋で

とっかえ引っ掛け試着を愉しむなど

この楽しみを知らない市民がほとんどだと言う。


まてよ

来たばっかりなのは間違い無いが

サボろうとしていたのは事実で

有罪なんじゃないかコレ

でもいいか

竜との戦闘でも役立ちそうもない

今回は大人しくしていろと

魔王の御墨付きだ。

しかしここはベレンに近すぎて危険だ。


俺はクリシアに移動してもらうよう提案した。


「その天舟ムーパーとやらはクリシアまで行くのかや」


行かない。

ベレン上空で現状を確認した後は

バロードでハンスと合流する予定だ。

なので


「バロードからは俺が運ぶよ。」


「それが良かろう。頼んだぞ」


「おお世話になります。」


天舟ムーパーで思い出した。

すかさず計算を始める俺。

ええと進行方向と速度がそのままだとして

・・・・既に上空を通過して

ベレン方面に数十キロの地点だ。


俺と合流出来ていないので

心配しているかも知れない。


すぐさま発とうと提案する俺に

ビルジバイツとジュノは

待ったを掛けた。


「折角じゃから替えももらって行こう。」

「手土産としても良いと思います。」


泥棒なんだが

流石は悪魔軍団、良心が痛む様子は無かった。

俺はレジの辺り、店員が常駐するカウンターの

内側にこっそりと金塊を一つ置いておいた。


「こんなトコロかの」


山の様に衣装が積み上げられていた。

すんごい山、構成する衣装はバラバラなのに

パット見キレイに一直線で積み上げられているのは

ジュノの技能か。


俺はマシンガンの様に

片っ端からストレージに放り込む

わざわざ「ジュノ衣装」と新規フォルダーを作った。


「終わったかや。急ぐぞ」


誰の我儘で時間掛かったと思ってんだ。


「すすいません。」


分かっているのか

小声で謝罪するジュノ。

ええいこの二人組ませると厄介かもしれない。


二人を両肩に乗せ

超音速飛行に入った。

スガソーリには直ぐに追いついた。

やはりナビゲーションランプは

目だって便利だった。


落ちない様に手で肩を押さえる恰好で

二人をホールドしているのだが

それにしてもジュノは

俺の角に捕まる事すら途中で止めていた。


「おい、自分でもしっかりつかまっとけ。」


俺はそう言ったのだが

返事が無い。


「それは無理じゃの。」


代わりにビルジバイツが答えた。

ジュノは途中で気を失っていたのだ。

色んな人を乗せて

反応はそれぞれだったが

この反応は初だな。

しかし序列4位の魔神がこんな様で良いのだろうか。


甲板では優雅に皆がお茶会を開いていた。

巡航速度も50キロ程のノロノロ飛行だ。


「あ、お帰りー。」


ミカリンが笑顔で手を振った。

その言葉に皆、ミカリンの向いた方向に倣う。

俺は甲板に降り立つと

ビルジバイツを降ろし

ジュノは押さえたままだ

仰向けに弓なりになり

俺の背中で逆万歳状態だ。


「スマン、時間掛かったな。」


心配を掛けたと思い

取り合えず詫びるが

心配していたのはハルバイストだけだった。


「ホントに心配要らねぇんだな。」


俺が遅いので捜索をしようと提案するも

誰一人相手にしなかったそうだ。

まぁ正しい対応だが

お前らも大概にしろ。


「って今誰が操縦してるんだ。」


本来、操縦するべきハルバイストが

甲板に居る事に驚いた俺は

そう尋ねると

何とアルコが動かしているそうだ。


「安定飛行中なら簡単なモンよ。

流石に離着陸は無理だろうけどな。」


俺も操縦を教わっているので

ハルバイストの言っている事は理解出来たが

他の面々は良く平気だな。


「本当に単独行動の後は

誰かしら連れてきますねぇ。

紹介していただけますか。」


俺の横に並んだビルジバイツを見て

ユークリッドがそう言った。


ユークリッドの事だ

大体の見当はついているのだろが

こちらが何と言って来るか

それに興味があるようだ。


「ん?」


ハルバイストの目が青く光っていた。


「ぬ?」


ビルジバイツは赤く光らせていた。

互いに走査しあって

同じタイミングで見抜いた様だ。

揃って声を張り上げた。


「腐敗の魔王ってかぁ!!」


「誰かと思えば、鍛冶神か

ただでさえ憐れな存在なのに

そんなちゃっちい体とは・・・。

神側は困窮しておると聞いておったが

ここまでとはの。」


いきり立つハルバイストに

哀れみの笑顔で答えるビルジバイツ。


「そう言うお前さんも

脆弱な人間の体じゃねぇか。

それじゃ権能の大半は使えねぇんだろ。

そこ行くとこちとら権能は全開よ。」


ハンマーを実体化させてそう煽るハルバイスト。


「それはその通りじゃが

お主と戦った時も妾自身の力は使こうておらぬ

呼び出した眷属で十分じゃったな。」


「てやんでぃ、蠅の王が

ここで会ったが百年目

いつぞやの降臨の恨み晴らさせてもらうぜ。」


俺は速射出来るレベルで全開の

悪魔光線を真上に発射した。


強烈な爆音と光に

その場で全員硬直した。


すごかった

俺もビックリしたが

努めて落ち着いて言い放った。


「協定破るようなら

その場で蒸発してもらう。

居ない方が両陣営にとって有益だろう。」


オーラも軽く放出しておいた。


ミカリンが小声でハルバイストに助言していた。


「あれ本気ですよ。

アモンは取り返しのつかない事でも

怒りに任せて平気でやります。

直ぐ忘れるので後悔も反省もしません。

本当に平気なんです。

ここは引いてください。」


いや

後悔ぐらいするぞ。

他人から見ても分からないレベルだが


「あああああんちゃんの顔に免じて

ここは引いてやらぁ

いいい命拾いしたな。」


ガクガクだぞハルバイスト。

悪魔光線を間近で見たのは初か。


「解せぬのぉ

勝手に絡んで来ておいて

引くのに恩着せがましいとはの」


だからヤメロっての


「ビルジバイツもそうやって

煽るからいけないんだぞ。」


俺の怒りが自分には向かって来ないと

思って居たのか

ビルジバイツは急にシュンとなってしまった。


「・・・今後、気を付けるのじゃ。」


まぁ相手がハンマー出したのに対抗して

ベブちゃん生成しなかった事には感謝だ。


「ん?ビルジバイツだって?」


ヨハンが俺の言葉に反応した。


「ああ、そうだぞ。

知って・・・セントボージか。」


俺の不在の期間にヨハンと

その仲間たちが毒の沼に沈んだ城を解放した。

ビルジバイツは

その毒の原因だったんだっけな。


「まぁ俺が見た姿は

胎児の状態で意識も無かったんでな

知り合いとは言えねぇかもだが

へーっ、本当はそんな美人だったのか。」


「ぬぉ?!もしや

そなたはヨハンなのかや。

爺から聞いておる恩人じゃ

直に礼を言いたかったぞ

会いたかったのじゃー!」


目をキラキラさせてヨハンに迫るビルジバイツ。


「って苦労してイクスが封印したってのに

解放した不逞野郎が居るとは

聞いちゃあいたがお前さんだったのか!」


目に炎を宿しヨハンに迫るハルバイスト。


「え?え?え?」


迫りくる二人を交互に見て

対応に困るヨハン。


「あ兄貴助けてくれ。」


見届けよう。

俺は暖かい笑顔で頷いて見せた。


「その・・・背負ってらっしゃる女性は」


ユークリッドはジュノが気になっている様だ。


おっと

忘れていた。

取り合えず下ろすか。


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