第五百十二話 移動式シャワーってこうじゃない
ここに残ると言うなら
俺だけ失礼するとして
ビルジバイツにそう申し出ると
「空飛ぶ舟じゃと?
見たい見たい連れてってたもれ」
よっぽど退屈だった様で
興味深々で食らいついて来た。
「んー人状態とは言え
神一人と大天使が一人いるぞ。」
仮にも魔王だ。
近づくのは宜しくないんじゃないのだろうか。
俺はそう思いビルジバイツに注意をしたが
「妾自体が人状態じゃ
何人居ても平気じゃぞ。
大体、魔神のお主が居られるのじゃし」
言われて見ればその通りか
しかし、このままでは連れていけない
理由がもう一つあった。
「匂い?」
魔界の住人には
フレグランスな香りなのかもしれないが
ベブちゃんのバラまいた異臭。
ビルジバイツにもキッチリ染み込んでいるのだ。
「風呂に入って行けば良いのか。」
「ベレン自体が臭いから
ここで洗っても効果無いぞ。」
「お主はどうやったんじゃ?」
俺はケムトレイル式洗浄を説明した。
「妾もそれで洗っておくれ。」
出来るかなぁ。
悪魔ボディなら沸騰した水蒸気の
スチーム洗浄効果が期待出来たが
生身で耐えられる速度で
ウォーターシュートの水が
どれだけ加熱・分散するのか。
上手く計算出来ない。
「水でも構わんぞや。
チト待っておれ」
ビルジバイツはそう言うと
近くの家屋に走って行き
直ぐに出て来た。
「これで洗いながら行くぞ。」
手にボディブラシとシャンプーが
入っていると思われる容器を持って
そう言った。
幾つもベルトを繋いで
パラシュート降下部隊の様に
肩や腰、太ももの付け根などに巻いた。
これなら一つ位外れても
即落下と言う事はないだろう。
「いつでも良いぞ。」
準備が出来
鼻の穴を膨らませて
ビルジバイツはそう言った。
服ごと洗う気か
いや服にも当然染みついているから
これで良いのか。
「止めて欲しかったら
直ぐに言うんだぞ。」
当然、こんな事をした事は無い
テストもしていない。
俺は不安に駆られているが
ビルジバイツはワクワクしっぱなしだ。
「分かっておる。
万が一落ちても権能で羽を生やせば良いだけじゃ
心配いらぬ。」
そう言えば
人ボディなのにどうして飛べるのかと
不思議だったが
疑似生命体羽のみを背中にくっつけていたのか。
重力操作を使っていないのは
使わないのでは無く
単純に使えなかっただけだ。
色々納得した。
墜落死の心配が無いなら
面白半分でも良いだろう。
俺の不安も解消され
俄然、面白みに支配された。
「ようし。行くぞ」
まず速度が問題なった。
生身だと50キロでも苦痛だ。
まぁ風速で考えれば大きな台風クラスに
なってしまうからな
ウォーターシュートの水を
40度程度になる速度で
大気操作を調整し20キロ以下の
風になる様に調整しなければならない。
全神経を集中して
それに努めた。
俺は今後、全く役に立つ機会の無さそうな
技術を習得した。
空飛ぶシャワールームだ。
「ひゃほードゥドゥッピドゥー」
快適になった様で
ビルジバイツは鼻歌を歌いながら洗い始めた。
これ
俺の方は全く面白くない。
でもまぁ美人がご機嫌になるなら
悪い気はしない。
俺はそのまま飛行を続けた。
センサー系で天舟との距離
及び相対速度を計算して
残り時間を割り出し
そろそろ乾燥に移った方が良さげな時間だ。
ビルジバイツにそう告げようと
俺は振り返ると
脱力で落下しそうになった。
ビルジバイツはすっぽんぽんだった。
「何してんの!?」
「カーッカッカいやな
服の下も洗おうと思ってな
カーッカッカ脱いだら風でな
みーんな吹っ飛んでしまってのぉ」
自分の壺に入ったのか
ビルジバイツは狂った様に笑い続けていた。
ババァルもそうだったが
何
魔王ってのは裸で平気なのか
本人がいくら平気でも
これじゃ
連れていけないよ。
後、一つ発見。
女性の裸。
どんなに美人でも
こんなにナイスバディでも
大爆笑されると
これっぽちも色気を感じないものだ。
「取り合えず何か着せないと。」
俺が生成出来るとなると
鎧だが裸の上に着ると
アチコチ挟んで危険だ。
ストレージの中の衣装だが
ビルジバイツの今の体格に
該当しそうなのが無い。
サンダルなら許容の幅は大きいので
多少のサイズ違いは良いか
足はコレでいいとして
うーん
上はストレガにあげた
カーボンローブで取り合えず隠すか
そうだ。
先程、通過した村らしき集落があった。
避難済みの地域だろうから
そこから何か頂くとするか
あの辺りなら匂いも
今はほぼほぼ無い状態だ。
俺は反転降下し
通り過ぎた村の近くまで戻り
身を隠せる林に着地した。
冒険者ゼータになると
ストレージからバスタオルを出し
まだ笑っているビルジバイツの
頭からゴシゴシ拭いていく。
「何じゃ、妾はあのままでも良いぞ。」
「周りが困る。」
「そうか、人間も居るんじゃったな。」
頭髪を拭き終わると
ビルジバイイツはバスタオルを
体に巻き付けた。
ヤバい
何て破壊力だ。
すっぽんぽんより来るぞ。
「お?この方が良いのか」
何が漏れたのか分からんが
俺の感情を察知したビルジバイツが
からかうのでは無く
純粋にサービス精神でそう言って来た。
今が夜でここがホテルの一室なら
是非、お願いしたいが
真っ昼間の屋外だ。
いくら俺でも無理だ。
「ととととにかく
何か着ないとだな。」
俺は努めて冷静にストレージから
サンダルを出して履かせ
ローブを生成して被せた。
ふーっ
これで大分、破壊力は軽減されただろう。
そう思ってビルジバイツを見るが
ありゃ
ストレガのサイズだとちと小さかったか
余白が少ないせいで
中身の我儘ボディが浮き彫りになり
裾もミニスカの辺りだ。
流石は魔王
この程度では
破壊力が軽減されていないぞ。
「ふふ。」
何を思ったのか
ビルジバイツは華麗なターンを披露した。
遠心力に従い
花びらのように展開していくローブ。
もう
襲った方がいいのかな。




