第五百七話 三半機関継続
ミカリンは人状態だった。
これはユークリッドの言う通り
特殊な目を使用しない方が良いケースなのか
いや
ミカリンが推理を巡らせるハズは無い。
これはきっと見たまんまなのだ。
「おいハイルバイスト
姿そんなに変わってないんじゃないか。」
俺の言葉に慌てるハルバイスト。
「いやや、だから本体はガキじゃねぇって」
そんなハルバイストの言葉に
ミカリンの無情な突っ込みだ。
「小っちゃくなっただけだよ。」
どうも天界と同じで年齢だけ下降したっぽい
「元々は大きいのか、胸とかも」
「胸は変わらないよ。」
俺の期待を挫く突っ込みは最速のミカリンだ。
「ば馬鹿言ってんじゃねぇよ。
おいらは鍛冶師だぜ、鍛冶っていやぁ
槌撃つ仕事でぃ
あんなモノ邪魔になるだけだろうがよ。」
泣きそうだ。
この話題は止めよう。
ミネバはそこそこ大きかった。
ハルバイストは真っ平だ。
足して2で割るとミカリンのバストサイズか
妙に納得した俺だった。
初見でバレバレとは
しかし、会議では一切突っ込まれなかった。
これは誰も気が付かなかったか
みんな気が付いたのだが
ハルバイストを気遣って敢えて
気が付かない振りをしたかのどちらかだ。
「観察するつもりが観察されていたんじゃ・・・。」
俺の言葉に俯きハルバイストは
ブツブツと「大丈夫だ」を繰り返した。
俺的にはバレてようがそうで無かろうが
あまり差が無いので
これは放っておこう。
ミカリンは普通に夕飯に参加して来た。
このキャリア、もう三半機関の家だな。
話は会議の決定事項になり
俺はハルバイスト、ユークリッド
そしてヨハンと最終決戦の場であるベレンに
向かう旨を告げると
何とアルコも同行すると言い出した。
むしろ名前が挙がらなかった事に
アルコにしては珍しく憤慨している様子だ。
「今回のは本当に危険なんだぞ。
里に戻った方が良い、俺が送れば
直ぐなんだし・・・。」
俯き頑なに首を横に振るアルコ。
見かねたミカリンがフォローに入った。
「最後だって言うなら尚更、一緒に居たいよ。
里での様子を知らないけど
多分、僕たちが良く知ってるアルコの笑顔
里の仲間は知らないと思うよ。」
アルコの参入
頼もしい戦力の加入に当時の俺達は浮かれていたが
裏を返せば
あれはベアーマン種族からの厄介払いとも言えた状態だ。
俺達との旅
ブンドンの村で人間社会を見た。
エルフの里で読み書きを覚えた。
ドーマで商売を経験し
ベレンでは学校生活も体験した。
ベレン脱出中では狩りの成果で皆の腹を支えた。
過ごした時間は短かかったかも知れないが
密度は大違いだっただろうし
また自身の価値を見出した旅路でもあったのだろう。
ここまでしておいて
俺が見捨てる様な仕打ちは悪魔の所業だ。
悪魔だがそれは出来ない。
「死なせでもしたらマイザーに合わせる顔が無い。
・・いや、これは体の良い言い訳だな
俺自身がアルコに死んで欲しくないんだ。」
「ヨハンさんは死んでも良いんですか。」
アルコの返事、意味が分からず俺は固まった。
察したミカリンが教えてくれた。
今、戦闘ではヨハンと互角だそうだ。
「そんなに強くなっていたのか。」
ベアーマン化の制限時間も初期の3分から
今では一時間以上、クリスタルの補助を
活用すれば半日程度と比較にならない成長っぷりだった。
ミカリンの解説は続いた。
「特にアベソーリが壊れてからはね~。」
ベアーマン化アルコが盾役で地竜を
押さえていたそうだ。
大地の盾もウルに返却してしまった為
何とアベソーリの装甲を一部外して
盾替わりに使用していたそうだ。
ジェイナス号並みに酷使されたなアベソーリ。
戦闘の話題が好きではないのか
アルコから聞かされるのは
新しい字を覚えたとかが多かった。
俺はアルコの現在の戦力を把握していなかった。
そう言えば最後に一緒に戦闘したのは
いつだったけな
アルコは
戦士としても成長していたのだ。
「それは戦士としての扱いは失礼だったな
ヨハンと肩を並べるなら資格は十分だ。」
少し照れているアルコに俺は続けた。
「一緒に来い。」
「ハイ!!」
うーん
いざとなったら竜の王を無視して
アルコだけ逃がそう。
ちゃんとした盾も渡そうかな。
「三半機関、離脱はミカリンだけって事だ。」
俺は笑顔でそう言うと
ミカリンは笑顔で即答した。
「あ僕も行くよ。」
「駄目だろ。」
「えっ?」
「えっ?」
よくよく話を聞いて見ると
何と会議の後、正式にミカリンに
神側から俺に同行しろと命令が下っていたのだった。
「ミネバ様から直々にだよ。」
嬉しそうに語るミカリン。
神側の戦力低下を懸念する俺に
ミカリンは追加の説明をしてくれた。
「アモンが裏切らないか監視だってさ。」
「なぁんだ。」
神々側の純粋なツンデレなのか
それとも本当に監視の線もあり得ると
俺は思った。
竜の王を倒した直後
「貴様はもう用済みだぁ」って
後ろからミカリンにグサァって作戦かも知れん。
そう言った俺を
三人はそれぞれ異なる反応だ。
ハルバイストは呆れたような憐れむような声で言った。
「あのなぁ兄ちゃん
そりゃ魔界じゃ常識なのかも知れねぇが
腐っても神なんだぜぇ。」
アルコは泣きそうだ。
「ミカリンはそんな事しません。」
ミカリンはあっけらかんとしていた。
「言われてないよ。今のところは」
後半は小さい声だった。
三半機関、解散回避だ。
「でも俺と同時出撃出来ないんだよなぁ。」
「それなんだけどさぁ。」
ミカリンは
互いに可能な限り離れて
遠距離攻撃の挟撃を提案して来た。
「そう言えば試した事無いな。」
「でしょ。」
悪魔光線とミカリンの天使光線の
射程距離なら出来る。
というか前回の決戦時、序盤は
それで互いに相手を消耗させようと
撃ち合いになったんだっけな
あの間に敵を挟む恰好か。
これは良いアイデアかも知れない。
上手く行けば近接出番無しだ。
「そう言えば盾で思い出したんだけどさぁ。
3大天使って・・・もう一人居なかったっけ?」
ミカリンが自信無さげにそう言うと
ハルバイストが突っ込んだ。
「3大天使なんだから3人だろ。
剣・槍・弓。ホレ3人でぃ。」
なおふみ強く生きろ。




