第五百六話 会議というか連絡
神側との会議は滞る事無く
すんなりアッサリと終わった。
自ら反省したのかユノは禁欲の節制を敷き
アホデルタもアーテイムも大人しいモノだった。
人間側の人事には無関心で9大司教2人の離脱も
「はい。分かりました」てな手応えだ。
まぁミネバが完全なら人の手など
当てにはしない感じだ。
そんなワケで議論に発展する事も無く
連絡と言うかお互い今後の行動を
確認する程度となった。
うーん、つまらん。
唯一面白かったのが
いきなり序列10位となった老人
海の神トライトンとケイシオンの会話だ。
以下は会議中に悪魔耳が捉えた二人の会話だ。
「なぁケイちゃん。」
「なんじゃトラ吉、会議中じゃぞ。」
「ワシ・・・柱だったっけ?」
俺は興味を持った。
移動による記憶の改ざん
これがジェミスの移動により
12柱が11柱に減るのではなく
空いた10位に他の神が据えられ
本人が違和感を感じていたのだ。
「大昔・・・12とか増やす前
3とか4とかの時には
ケイちゃんやエっちゃんと
祀り上げられていたとは
思うんじゃが・・・。」
「ほっほっほ、流石はワシと並ぶ
古き神よの、皆感じておらんというのに
違和感を覚えたか。」
「アレか、世界終わるんか。
誰ぞいきよったんかいな」
このセリフから察するに
この古き神連中は過去にも
世界の終わりを経験し
人類を勝利に導いた事になる。
まぁ消滅空間でのケイシオンの話で
大体は想像が着くが
「そうじゃ。時と記録のワシは
その権能故か多少覚えておる。
若い神・・・じゃったかな。」
まぁ
海や時間に比べれば
正義の歴史は短い方だろうな。
そう言えば台所のレイノヒモも若い。
会議にジェミスの件が
全く上がらないのも頷けた。
救世主たるこの俺に
仲間の同意を得ず単身強襲した。
俺は完全に被害者だが
加害者側がこの状態では
俺は全くのやられ損だ。
そんな事件など無いのだから。
ただ頭に来る事は無く
変に委縮されたり
気を使われたりしない分
楽だった。
むしろジェミスも含めて
神側に哀れみさえ感じていた。
一番大きい馬車とは言え
全員が入れるほど広くは無い
ミカリン達、天使は来ていなかった。
ウルの消失をどう捉えているか気になったが
会議中でのユノの言葉の節に
「3大天使も健在」というセリフから
最初から居なかった事になっているっぽい
柱と違い大天使の数は変動するようだ。
それぞれの今後の行動を確認し
最後に神々は俺に深い礼をしたが
心が籠って無い感バリバリだ。
節制も良し悪しだな。
でもこれでいいのか
こんだけの数の神に
純粋に感謝されたら
完全人状態でも多分とんでもないダメージが来そうだ。
もしかしたらユノはそこまで気を使って
節制を行使してくれたのかもしれない。
連日の祭り騒ぎもひと段落し
次の日からキャラバンは
首都バリエアに向け出発となった。
俺の方も今夜はキャリアで
キャラバン最後の夜を過ごす事に決めた。
そして何故か着いてきた神に
今横で料理を手伝ってくれている神
流石、火の扱い上手い神に俺は言った。
「何で着いて来た。」
会議の場で正体をバラす事無く
ハルバイストは終始黙って観察していた。
「何でって兄ちゃん。おいらは助手だろ
着いていかねぇでどうすんだよ。」
「神側の方はいいのか。」
「ああ、今日見た限りじゃ
ありゃおいら抜きで問題ねぇや。
ミネバの奴、絶好調だぜ。
本当に消えかかっていたのかぃ
信じらんねぇぜ。」
これまでの無様、不手際は
全て民の歴史的マイナス感情が原因だ。
今の状態ならば本来の力が出せるハズだ。
ハルバイストはそれを目で見て確信したのだろう。
「お前自身の安全はどうするんだ。
正直、庇っていられる余裕があるかどうか
怪しいぞ。」
「へへーん。コイツがあれば
神器級の鎧が作れらぁな。」
そう言うとハルバイストは
右手を横に翳し巨・・・でもない
まぁ大きなハンマーを実体化させた。
デザインは同一、というか同じ物か
大きさを変える事が出来るのだろう。
「ん?兄ちゃんに見せた事あった・・・よな。
いや、そんなハズは無ぇか」
ハルバイストの記憶の改ざんも進んだ。
もうジェミス事件は覚えていない様だ。
「とにかく責任は持たんぞ。」
「合点承知の助でぃ・・・って
兄ちゃん、こんなに食うのか。
おいらと二人の量じゃ無ぇぞ。
しかも外のでっけぇテーブルに
わざわざ運んでよぉ
誰か来んのかい」
「そんな気がしてな。
まぁ誰も来なければ来ないで
保存食としてストレージにしまうから
無駄にはならないのさ。」
言ってから怖くなった。
誰も来なかったらどうしよう。
冷めていく料理
哀れみの視線で俺を見るハルバイスト。
嫌だ。
誰か来てくれ。
「マスター!戻りました。」
アルコが現れた。
「お帰り!!アルコ。」
「ど・・・どうかしましたか?」
俺の喜びっぷりが不自然だったのか
アルコを少しビックリさせてしまった。
「お腹空いただろ
さぁさぁ頂こう!!」
アルコを交えて3人で夕飯を始めた。
アルコはこれまでの
ウリハル警護の際中の出来事を話してくれた。
人だかりによる転倒などの事故も無く
民衆は皆、熱心に冷静に誘導に従ってくれたそうだ。
「人ってスゴイんですね。
ベアーマンあれだけ集まったら
絶対血を見ずには収集が付かないですよ。」
基本、力による上下の社会だからな
微妙な横とは争いになりやすそうだ。
なんか監獄の食事の量
僅かな差でもケンカに発展するとか
そんな話を思い出した。
「で、こっちの女の子は・・・。」
アルコの問いにハルバイストは俺を見た。
偽装継続か
そう判断して例の嘘を言った。
「マスターがお認めになるのですから
きっとこの子もスゴイのでしょうね。
正直、私ではキカイの作成
組付けとか力仕事しかお役に立てず
心苦しかったので嬉しいです。」
良い子だなアルコは
「で・・・お名前は
何と言うのですか?」
俺を見るハルバイストの視線に
焦りの色が見えた
そうだ。
偽名なんて決めてなかったじゃないか。
「え?名前、そう・・・な名前だよねぇ」
俺が決めんのか
今決めんのか
明らかに挙動不審になる俺。
アルコは不思議そうに首を傾げた。
「な名前・・・は」
俺が言いかけたその時
現れた新規参加者が名前を叫んだ。
「ハルバイスト様!!!!」
「はい、そうです。」
現れたのはミカリンだった。




