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ぞくデビ  作者: Tetra1031
504/524

第五百三話 据え膳食う前にひっくり返った

「ゴメンなさいね、おばちゃんで」


おばちゃんはこういう

肯定も否定もムズかしい

クセ球を放ってくる。


「会いたかった。」


ここは

あえて相手の言葉の表層に着目せず

言葉の裏の真ん中に

力いっぱいのストレートだ。


「まぁ!」


両手を頬にに当て

斜め45度面舵になるユノ。


左側の顔

しかもその角度の顔が

一番のお気に入りなんですね。

恥じらいと美を織り交ぜた

巧みなリアクションだ。


まさに老獪。


更に、美人度が増している。

アホ野郎の権能を搾り取っただけの効果はあった。

肉体年齢だって全然若いし

これはイケるぞ。


いや

行くな俺。


しかし、こんな事の為に

民衆活気づけたんじゃないんだけど・・・。


「いつぞやは失礼しました。

突然、飛び出していってしまって」


「気になさらないで

ユークリッドから聞いていましてよ。

緊急な用事とか、こちらこそ

お忙しいのにお引止めしてしまって

申し訳ないわ。」


ユークリッドがフォローしたのか

まぁ知らんとは言えないか


「中へどうぞ。

狭くて汚いんで心苦しいですが」


「あらあらまぁまぁ

ユークリッドに怒られますよ。」


クスクス笑うユノ。


「茶でも入れましょう。」


俺はそう言って椅子を引いて

ユノを誘導した。


「まぁ嬉しいわ。」


ユノは馴れた優雅な動作で

椅子に腰かける。

自信が無かったが俺は上手く

動作を合わせられたようだ。


見下ろすと

うなじから肩のライン

その細さに見とれ

そしてどうしても

胸元を見てしまう。

悲しい男の性だ。


不自然でない限界時間

まぁそれでも一瞬だが

絶景を堪能すると

俺は奥の部屋に移動した。

簡易キッチンがあるハズだ。


「なんで入れるのだわ。」


ドア付近

覗いていたな。

ヴィータがヒソヒソ声で抗議して来た。

俺もヒソヒソ声で答えた。


「追い返せるかよ。」


茶を入れようとしたが

ヴィータが替わりにやってくれた。

それを手伝いながら

俺はヴィータに聞いた。


「なんか良いアドバイスくれないか。」


作業を続けながら

振り返る事無くヴィータは

そっけなく投げ捨てる様に言った。


「綺麗だよ。抱きしめたいって

言ってあげれば良いのだわ。」


ああ面倒臭ぇ。


「それはお前用だよ。

波風立てずにご退場願うアイデアが欲しいんだ。」


ヴィータの挙動が明らかにガクガクし出す。


「そっ・・・そっそ・・」


ソクラテスかプラトンか

(古すぎる)


「ユノ様はああ見えて

少女っぽいトコロがあるのだわ。

営みを開始する方向より

プラトニックな方がロマンチックだよ~って

誘導すれば効果的な牽制が期待できるかも」


ああ見えてとは

具体的にどういう状態か気になったが

今は時間が無い

後半の作戦はナイスアドバイスだ。


丁度、出来上がった茶をトレイごと受け取ると

俺はヴィータに言った。


「それで行くよ。

やっぱりお前は頼りになるな。」


何かヴィータの様子も

変な方向に変化したが

構っている暇は無い

俺はユノの待つ部屋に即、移動した。


トレイを落っことしそうになった。


なんか薄暗い。

見ればカーテンは今までのレースだけではなく

遮光用の厚手のカーテンがオーバーコートされ

照明用の光苔パネルも蓋が閉じられていた。


ユノは俺が案内した席に居らず

ソファの前で立っていた。


背を向けているので

表情は見えない。


げっ・・・・扉が施錠されているぞ。


「・・・ユ・・・ユノさん?」


俺はトレイをテーブルの上に置き

置いてから持っていた方が

安全だったんじゃないかと後悔した。

かと言って

一度置いたのにまた持つのも不自然だ。


「・・・誰にでもこんな事する女だと思わないで」


そう言うとユノは薄手の肩掛けの様な上着を脱ぎだした。


おいいいいいい

これのドコが少女っぽいんだよ。

風呂入るとか

魔法少女に変身する時以外は脱衣しないだろぉ!!


上着を脱ぎさると

胸元が強調されたタイトなドレス姿だ。


考えてやがる。

最初っから見せるよりも

隠していたのをドーンって方が来るんだよな。


振り返り

ユノはゆっくりと俺に歩み寄って来た。


こんな時だと言うのに

俺は初期も初期

ミカリンと狩りに出かけ

特大な猪に遭遇し

やり過ごそうと息を殺して

二人で潜んでいた時を思い出していた。


猪が迫る。

じゃない

ユノが迫って来た。


なんかピンクの蒸気が噴霧されているっぽいぞ。

何かのスキルかバフを使用しているのか

そのせいなのか身動きが取れない。

多分、今の俺は蛇に飲まれつつある蛙だ。


どうする

困った時の悪魔光線か

でも圧が下の方に逃げて撃てそうもないぞ。


ここからプラトニックラブにうっちゃる

有効手段を思い浮かばないでいると

ドアがノックされた。


救世主だ。


しかしユノに先制されてしまった。


答えようとした俺の唇に

人差し指を当てて封じたのだ。


この俺が指一本で動きを封じられるとは

これが序列二位の柱の実力か

見えた脇も綺麗だった。

くそ

こんな時に何を見てるんだ俺は

それともここまで計算しつくされているのか


まぁでも

こう言うドレスって

その辺の事を計算して作られているのは

間違いないよね。

ネックレスだって視線を顔や胸方向に

誘導する為のモノだし

って、まーたどうでも良い事に思考が逸れた。


ここで

唇に触れた指先からユノの震えが伝わって来た。


「お願い・・・こんな勇気

二度と出せないわ。」


くそう

カワイイじゃねぇか

このおばちゃん。

妖艶かと思わせて

コレか

ここに持って来るか

コレは耐えられんわ。


素でも演技でも

もうどっちでもいいや。

後の事は後で考えるか。

舞台は完全に整えられてしまった。

据え膳食わぬはナンタラって状況だ。


俺が決心を固めた瞬間

来客は思わぬ行動に出た。


ガチャ!!ガチャ!!


ノックの返事が無いというのに

ドアを開けようとしたのだ。


これにはユノが驚き「えっ?」とか

声を出してしまっていた。


二人共、音を立てない様に固まった。

俺は小声で呟いた。


「ユークリッド本人か?」


それならば自分の馬車だ。

この行動も理解出来る。


「いいえ、ユークリッドは今

ケイシオンが足止めして下さっているハズなのよ。」


おばちゃん犯行を自白した。


そして来客は

更に予想外の行動に出た。


ガッ・・・キリキリ・・カチカチ


ピッキングだ。

鍵以外の物で施錠を解除し始めたのだ。


キャー


ラブロマンス物から

サスペンス物に

雰囲気は一瞬で激変してしまった。


美味い。

途端に溢れ出て来たユノの恐怖に

瞬間的に溺れるが

ここは紳士として行動しないとな。


「危ないです。奥に」


俺はそう言って

ユノをお姫様抱っこで抱きかかえた。


軽っ

これなら片手でドアを開けられそうだ。


運動してないんだろうな

おしりも程よく柔らかいや。


不自然でない時間

その感触を味わい

ユノを奥の部屋に移動させると

「静かに」と念を押して扉を閉めた。


扉の向こうで小声同士の悲鳴が聞こえた。


・・・あ、そうか

ヴィータとハルバイストが

まぁしょうがないか

緊急事態だ。


俺が奥の部屋の扉を閉めると同時に

来客

いや侵入者は施錠を解除する事に成功した。


ピッキングの常識を知らないが

これは速いんじゃないか

相手は盗賊とか忍者かも知れない。


9大司教の馬車に入る賊の目的

ロクなモノじゃないだろう

俺は臨戦態勢に入り

視神経を悪魔化し

侵入者を確認しようとした。


賊は150cm位のかわいい女性だった。

臆することなく

堂々と室内に入りながら

俺を確認すると言った。


「やはり、居たか。」


目が青く光っていた。

先程までのピンクの蒸気と

合わさり紫掛かって怪しく輝いていた。


「確か・・・アーテイムの」


巫女と呼ばれた女性が侵入者だった。



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ソクラテスかプラトンか 


      40年位前のサントリーのCMソング


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