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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第四百九十八話 ジュン

その後は現状を理解してもらう為に

敵である竜種の話

今現在の神側、悪魔側の体制を説明したのだが

ハルバイストは明らかに不機嫌な様子に

変貌していった。


俺は説明を中断して聞いた。


「ど・・・どうかしたか?」


苦虫を噛みつぶしたような表情

ミカリンもそうだが

折角の美形が台無しになるな顔芸だ。

その表情でハルバイストは答えた。


「ぃやあ、悪魔側におんぶに抱っこじゃねぇか

情けねぇったらねぇぜ。」


ユークリッドは喜んだ状況だが

ハルバイスト的には気に食わない展開の様だ。


「何の為にミネバイン渡したと

思ってやがんだ。

竜だか何だか知らねぇが

アレなら倒せない相手は存在しねぇ

究極の破壊兵器なんだぜぇ。」


「・・・動けばな。」


人々の間に恐怖が蔓延している現状では

エネルギー的に悪魔側の方が有利だ。


「ぐぅ、確かに燃料バカ食いする欠点は認らぁ。」


「まぁ、それもこれからは変わる。

勇者が雰囲気をひっくり返してくれたからな。」


厳密には勇者じゃないんだが

現状の説明的にはこのままで良いだろう。

希望を得て活気が溢れた今のキャラバンならば

神側も動けるハズだ。


「ただ先も言った通り

一に人類の保護

二に敵の殲滅だ。

二が叶っても一を達成出来ていないのでは

神も悪魔も終わりだ。

そう言う観点では一番重要な部分を

神側に担って貰っているワケだ。」


「・・・んー

何かあんちゃんの話を聞いてるとよぉ

納得なんだが、何かこう

上手い具合に騙されてる気分に

なってくんだよなぁ。」


これは騙しにくいタイプだな。

俺は騙す気は無い

言っている事は事実だし

対応も理には適っている。

ただ、やっぱり俺の本心では無いからだ。

ロジックに目を奪われる事無く

語る者の心を見ようとしている。

しかしロジックで返せなければ

手は無いのだ。


「つまり、まとめると

ベレンとか言う、この近くの廃都が

最後の決戦の場で悪魔側が対処する

神側は離れた西のバリカタまで

人類を保護しながら避難するんだな。」


豚骨ラーメンかって

それはもういいか。


「その通りだ。注意して欲しいのは

キャラバンの方にも王以外の竜は現れる。

安全ってワケじゃないんだ。

ミカを強化したかったのも

そう言う理由なんだ。

キャラバンまでは俺が運ぶ

ハルバイストが人状態なら

問題無いと思うがもし不調を感じたら

直ぐ言ってくれ」


「合点でぃ。善は急げ・・・って

言いてぃトコロだが。」


俺は少し呆れた調子でその先を言った。


「アベソーリの解析か

それなら俺が今度、図面起こすから」


「違ぇやぃ。

ま、それもあるっちゃあるんだが」


あるのかよ。

でも違う理由の様だ。

ハルバイストの視線が遥か先の上空を

凝視していた。


俺は咄嗟にセンサー系を拡大で起動させた。

完全膝カックン耐性が数キロ先の

飛行物体を捉える。


「これは・・・竜じゃないな。」


「迎えなら、ありがてぇんだが

どうも嫌な予感がしゃがるぜ。」


この反応

飛行物体は天使

それも四大天使級だ。

ハルバイストもそれを理解している様子だ。


「嫌な予感とは」


「さっきもチラっと言ったが

ジェミスの野郎だ。」


飛んでいるのは天使だ。

俺は超望遠モードで認識の違いを納得した。

ウルの背に少年が乗っていたのだ。


「おーっアレか

緑色とか珍しい頭髪のガキだな。」


「どんな状態の体で降臨してるか

知らねぇが、ま髪の色は本体に忠実だわな。」


天界での本体と

降臨での姿は異なるコトも

珍しくないそうだ。


「おいらだって本当はこんなガキじゃねぇんだぜ。」


ケイシオンなんて板だしな。

俺は気になっている事を聞いた。


「性別かぁ・・・おいらみたいに

決まってねぇ奴はどっちで下りても

問題無ぇが性別固定されている神は

順じねぇとデメリットしかねぇ。

基本そのままだな。」


アホデルタを女性に出来ないものかと

考えてしまったが

やややや

無理無理無理だ。


本筋に戻そう。


「ジェミスだと何が嫌なんだ。」


あんちゃんの話から想像すると

今のアイツにもエネルギーが充填されてら

んで、これからを考えると

弱体化の一途だ。

やるなら今しか無ぇんだよ。」


何をやるのか

聞くまでも無いかと思ったが

ハルバイストは説明を続けてくれた。


「アイツが冠するのは正義だ。

悪魔と共闘なんてあり得ないんだ。

でも今はそれが正解なんだが

どうにも正義ってやつは

頑固でな

融通が利かねぇんだ。」


「まぁ正義がコロコロ変わっちゃ困るわな。」


「そう不変。

奴を構成する根源にソレがある以上

あいつだけは死んでも協力しねぇ

しないだけならまだしも

見過ごす事も出来ないんだ。」


悪魔と共闘しようとする神々を

我関せずと放置も

え?そんな事してたのと

知らぬふりも出来ない。


どちらも悪の所業だ。


「ユノの節制でどうにかならないのか。」


「温かい氷が食いたいからと

火で炙る様なモンだ。

仮に強制すれば

アイツは消滅しちまぅだろうな。」


やるしかない様だ。


「こんな事に力使っている場合じゃ無いってのに」


セリフの内容とは裏腹に

俺は落ち着いた声でそう言ってしまった。

呆れても

怒ってもいなかった。


俺は不思議と落ち着いていた。

悪魔と戦う神

これが本来の姿だ。

世界の消滅

人々の移行スライド

通常と状況は異なる

異例の事態だが

正義が曲がる事は有り得ない。

有った場合

もうそれは正義とは言えないのだ。


「致命的なまでにアイツは詰んじまってるんだ。

正義に順じ

正義に殉ずる気なんだよ。」


それまで

静かで

どこか優し気な口調だったハルバイストだが

ここからは語気を強めて続けた。


「身内の不始末だ。

あんちゃんに迷惑は掛けねぇ。

おいらが責任をもってアイツを倒すぜ。」


そう言うとハルバイストの手に

巨大なハンマーが出現した。

物理的に異様な光景だ。

風船でもなければ

そんな姿勢で持てるハズが無い

つまり


「それハルバイストの神器か?」


「本来なら武具を作るモンだが

対象を変化させるっつう意味合いで

武器としても優秀だぜ。」


当たり前だが

ただの打撃では無いようだ。

権能は使用可能と言うことか

だとすると

気になる点は一つだ。


「防御力のほうは大丈夫なのか。」


人状態

それも華奢な少女だ。


「当たらなきゃどうって事無ぇよ。」


それは

裏を返すと

当たったらお終いと言う事です少佐。


図星だ。

ハルバイストは額に

薄っすらと汗を浮かべ始めた。


「止めろ。

そいつは役に立つモノを創造する為のモンだろ。

鍛冶師として見てられん。」


厳密には俺は鍛冶師では無い

突っ込まれる前に俺は続けた。


「それにお前も戦士じゃない。

得物も持ち主も本来の使い方を

逸脱している。

お前も鍛冶師なら分かるだろ。

正しく使用されなかった場合

ロクな結果が待っていないって事を」


あんちゃん情けだ。

言ってくれるな。」


分かった上で実行。

そして勝てる自信は無さそうだ。

なんとか刺し違える気かも知れない。


「情けなんかじゃねぇよ。

俺にやらせろって言ってんの

乗り物の方、ウルには借りがあってな

晴らすチャンスだよ。」


俺はそう言うと悪魔男爵バロン化して

飛び立った。


ジェミスの事を言いたい放題の

ハルバイストだったが

恐らく当のハルバイストも

頑固さでは相当だと思った。

問答よりも有無を言わせぬ実行の方が良いだろう。


どうしてもやりたきゃ

俺を追い越して見ろ


そう言ってやるつもりだったが

俺の口から出た言葉は違ってしまっていた。


「先に謝っておく

助けられなくてゴメン。」


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