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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第四百八十六話 ケイシオンの馬車

「緑色の一筋の長い長ーい雲

良いですねぇ、アレは吉兆なのですよ。」


スマン、ユー。

あれは俺のケムトレイルだ。

まだ残ってやがったか

しかも風向きが悪く

キャラバンの方に漂って来やがった。


嬉しそうに空を眺めるユークリッドに

俺はさり気なくキャラバンの出発を促した。


「いえ、今日も無理でしょう。」


振り返ると復活祭のお祭り騒ぎは

何と夜を超えて次の日になった

というのにも関わらず

まだ続いているのだった。


知らんぞ。

水蒸気タップリだから

最悪雨になって襲い掛かって来るかも知れんぞ。


もし雨になったら

知らん顔して

一人で飛んで逃げよう。


すっかり夜中にキャリアに戻った俺は

そのまま簡易ベッドに潜り込み爆睡した。

気を使ったのか

誰も起こしてくれず一人で目を覚ました。


外に出て見ると

テーブルセットの椅子には

ユークリッドだけが座っていたのだ。


ユーの話ではミカリンとヴィータ

ヨハンも今は神々用の馬車まで

呼ばれて行っているそうだ。

ユー自身が

俺の足止め役に派遣されたという事だ。


ウリハルとアルコは慰問特攻だ。


「まーだ方針が決まって無いのか。」


「変化する事に大きな不安を抱える人もいます。

いえむしろそう言う人の方が多いでしょう。

アモンさんのもたらす変化は

常に突然で、しかも途轍とてつもなく大きい

そうそうついて行けるモノではありませんよ。」


うーん

これは褒められているのか

責められているのか

寝起きの頭では分からん。


「変化を恐れるか、分かるよ。

俺も知り合いの司教が

緑のバッタ怪人に変化した時は

恐怖を覚えたね。」


「笑っていませんでしたか。」


「真の恐怖と対面した時

人は意外な反応をしてしまうのさ。」


「アモンさん・・・人でしたっけ。」


「かろうじて。多分」


「確信は無いのですね。」


などと馬鹿話で時間を潰していると

宝珠に反応があった。

以前は分からなかったが

今の俺には感知する事が出来た。

ここでもゲカイに改めて感謝だ。

俺の能力は軒並み向上しているようだ。


ユークリッドは宝珠を取り出すと

隠す様子も無く短い会話をした。


「お呼びですね。

ご足労頂けますか。」


神々の馬車はキャラバンの中央付近だ。

結構距離がある。

俺は歩くのがかったるいので

ストレージからアモン2000を引っ張り出した。


「これ嫌いじゃないんですが

ちょっと注目を浴びすぎて恥ずかしいんですよね。」


運転席に乗り込む俺の後ろ

後付けの後部席に乗り込みながら

ユークリッドはそう言った。


俺は返事替わりにスイッチ1を押した。


「はい、マイケル。」


キャラバンは道を空ける様に

街道の左右に展開しお祭り状態だ。

簡易的な屋台も多く見受けられた。

賑やかな中アモン2000は疾走した。

初見の人もいたのか

歓声というか悲鳴めいた声も聞こえて来た。

その度に俺は応える様に

クラクション替わりのラッパを鳴らし

手を振るが

ユークリッドは恥ずかしいのか

顔を伏せていた。


中心部に近づくに連れ人出が増えた。

初見のゾンビのような小汚く虚ろな者は皆無だ。

活気に溢れていた。

アモン2000に乗っているのが

危険に感じる程、道にも人が溢れている辺りで

俺達は下車し後は徒歩にした。

目的の馬車はもう近くだ。


人だかりの原因が垣間見えた。

ウリハルが熱弁を振るっていた。

あの変な声は距離を物ともせず通る。

更に特徴的過ぎるので他の声に埋もれにくい

嫌でも耳に着くので演説には

思いのほか向いているのかも知れない。


明らかに教会用の馬車

それに随行する資材用の大きな馬車軍団。

それが神々用の馬車だった。

存在を伏せる為の偽装だ。

教会の大事な資産・資材などを搭載しているので

聖騎士のガードも不自然にならない

中々良い隠れ方だと思った。


その内の一つに俺は案内された。


「おぉアモン君、息災じゃったか。」


カシオだ。

偽装用に司教の服装に身を包んでいた。

一番似合っていた。

大司教軍団に若いのが多いせいだ。

トーマスとやらは高齢だったが

こう言っては失礼だが

人の良さは感じるのだが

威厳みたいのモノが皆無だったのだ。

そこへいくとカシオは堂に入っていた。

法王って呼びたくなるな。


「天使に襲われて死に掛けたがな。」


再開の喜びの笑顔が一瞬で曇って

申し訳なさそうな顔になるカシオ。

しまった嫌味から入ってしまった。


「その事に関しては謝罪する。

本当にスマンかった・・・。

ふむ謝って済む事ではないんじゃがな」


「済む。

はっははは許す。

つうか計画通りだ。」


嘘だが

こう言った方がカシオの心労も

少しは軽減されるだろう。

俺は鷹揚おうようとした態度のまま

許可も取らずその辺の椅子に腰かけた。


ウルラハには思うトコロがあるが

ミカリンとブリッペが十分過ぎる程

仕返しをしてくれたからな。

ぶっ殺すのは止めて置こう。


「・・・アモン君は賢い子じゃ

やはり読まれておったか

そしてその思惑にこちらが乗るも乗らずも

そのどちらにも対策は施し済みなのじゃろう。」


対策済みだったら

あんな瀕死になるハズが無いのだが

ユークリッドが微妙な表情だ。

突っ込まれる前に

話を進めててしまおう。


俺は話題をさっさと移した。


「で、他の神は

俺への対応は決まったんじゃないのか。」


この馬車にはカシオしか居なかった。

他には身の回りの世話をすると思われるシスターだけで

後は入って来た俺とユークリッドだ。


何人揃ったのか知らないが

まぁこの広さじゃ全員は入れない。

しかし全員雁首揃える必要も無いだろう。

代表してカシオだと思ったのだ。


まぁ地位的にも俺との親睦的にも

最適だろうからな。


他にも来るか念のため聞いておいた方が良いと

考えたのだ。


「それがの・・・決まっておらんのじゃ。」


じゃ何で呼んだ。


俺の心の声に応えるかのように

カシオは続けた。


「まずアモン君が如何なる要求を

突きつけて来るか。

皆それを先に知りたいとな。」


「・・・そう言う事をお互い交わすのが

会議っつうモノじゃないのか。」


俺だって神側の要求を先に知りたいんだが。


またも俺の心の声に応える様に

カシオは続けた。

つか読んでるのか

消滅空間での会話

石板には耳も口も無かったんだしな。


「こちらの要求は単純じゃな。

アモン君と敵対したくない。

先に攻撃を仕掛けて置いて

何ーっを言っとるのかとも思うじゃがな。」


「なら話は簡単だろ

俺に攻撃の意志があるなら

こんなお祭り騒ぎ起こさないぞ。」


外の喧噪はすごい

ウリハルの演説のせいで

大盛り上がりだ。


「俺からの要求は一つだ。

大人しくバリエアまで行って匿ってもらえ。

エロル皇帝にはもう話を付けてある。

何人だか知らないが

神々全員超国賓待遇で迎えてくれるさ。」


「エロルに会ったのですか!?」


やたらと驚くユークリッド。

ウリハル連れてる時点で

予想出来そうなモノだが


「言って無かったっけか。」


「ヨハンの引き継ぎにも

先程までの私との会話にも

一言もありませんでしたよ。」


単独で動くと

こう言う事が多いな。

普段はミカリンやらアリアなどが

事前に解説してくれていたのだろう。

有難い事だ。


俺はバリエアでの顛末を話した。

ウリハル家出事件は特に影響が無いと思ったので

割愛しバルバリス側の受け入れ態勢と

来るべき竜との戦いにおける

防衛体制構築中の話をした。


「ああ!!一番大事な事思い出した!!」


でかい声が出た。

二人共驚いていた。


「ここから先は天使及び神々も

絶対に単独行動はするな。

特にミカリンの偵察

アレはヤバイ!!」


俺の提案に苦言を呈するユークリッド。


「・・・とは言え聖騎士の偵察では

ワイバーンに対し致命的な遅れを生んでしまいます。」


「ワイバーンも地竜も心配要らん。」


俺は名前を伏せて

魔神と魔王の防衛体制を説明した。


「人を減らす真似は絶対にしない。

これは断言出来る。

悪魔側も死活問題だからな。

ただ神や天使はその範疇に無い。

竜のついででやりかねない。

だから常に人の中に紛れるように・・・。」


カシオは呆けた様になると

しどろもどろに話し始めた。


「皇帝に話を付けたり

首都の防衛体制を構築したり

わしらが彷徨うておる間に

どれだけ仕事をこなしとるんじゃ・・・。」


「いやぁコレは教会関係者として

恥ずかしいですね。本気で・・・。」


ユークリッドも珍しく恐縮していた。


「いや、俺には難民などと言う

足手まといは居ないからな。

その分、自由に動けただけだ。

それに悪魔側の防衛は俺個人だけの

采配じゃあ無いんだ。」


最後のは言わなくても良かったかも知れない。

むしろシンアモンは伏せるべきで

言ってはいけなかったのかも知れないが

何か悪くてつい言ってしまった。

まぁ大丈夫だろう。


「そして出歩くなの助言。

黙っておれば悪魔側に有利に働いたろうに・・・。」


そうだな。

そこはきっとヴァサーもベネットも

あわよくばと思っていたに違いない。


ただ

どっちも甘い。

まだ分かってないのか。


「勘違いするな。

悪魔だけで竜に勝てるならそれが最善策なんだろうが

悪魔が竜相手に全滅って事も有り得るんだ。

そうなった時はミカリンやミネバインが頼みの綱だぞ。

そしてソレがキチンと最大限の力を発揮してもらう為にも

民衆には、あんな死んだような顔してもらっちゃマズいんだよ。

俺は悪魔だ善意なんて無いからな。」


「そう言う事にしておくのが

アモン君にたいする最大の敬意になるなら

そうしようかの。」


ん?

カシオ、もう少し分かりやすく。


「それにしても悪魔にしておくには勿体無いですねぇ。」


緑のバッタ怪人も

相当勿体ないと思うが

それに何に対してどう勿体ないのか。


「いや、悪魔という立場でなければ

こうはいかんかったろう。

そう考えれば悪魔で良かったのじゃが・・・。」


首を捻り唸る様に言うカシオに

ユークリッドは冷静に言った。


「勿論、悪魔だから可能だった。

それは事実ですが

彼なら置かれた現状や立場で最適に動いたでしょう。

司教であったなら司教で出来うる

最大限の功績を上げてくれたと思います。

そう言う意味で勿体ないと」


「そこは同意じゃな。

何で天使や神になってくれんかったのか」


いや

最初は天使でスタートする予定だったんですよ。


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