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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第四百八十一話 悪臭の元

「有り得ねぇえええええ!!」


悪魔状態だと味覚が分からない。

この事に俺は初めて感謝した。


バロードの前に問題のベレンに行って見たのだ。

ガスが発生している様には見えないが

センサー系、特に嗅覚のセンサーは

計測不能な値を叩き出し

全て振り切っていた。


初めはどんな匂いなのか

嗅いでやろうと思って居たのだが


絶対に人化したくない。


舐めてた。

コレはヤバいわ。

根性とかそう言うレベルじゃない。


浄化作業用に気密性を上げたVバングなら

調査可能だと思っていたのだが

ここまでスゴイと外装に染みついた匂いですらも

絶叫レベルになるだろう。

マリオとノアに会っても責める事はしないでおこう。

会う前に来てみて良かった。


町並みは復興事業が如何に順調だったのかを

証明するように綺麗に新築が並び

歩道のアチコチにこれから組み込まれる予定だった

レンガやタイルが規則的に積み上げられていた。


しかし灯りは一つも無い。

聞こえて来る音も無い。

ゴーストタウンだ。


ついでだ。

調査してやろう。

一体何がこの匂いの元なのか

興味が俄然沸いて来た。

匂いをモノともしない俺こそが

この調査に最も適任だろう。


地上30cm程度に滞空し

ノロノロと低空飛行でセンサー系を

にらめっこでフラフラと漂った。

異質とも言える魔力を感知。


「何だコレは・・・生き物でも悪魔でも無い感じだ。」


ドラゴンでも無い

取り合えずすんごい臭い竜王と言う線は消えたか。


その反応はベレンの例の噴水公園だ。

地図的にほぼ中心だ。

ここから十数キロに渡って匂いの結界を張った

張本人が居るのだ。


俺は工作員スキルを動員し

公園に向かった。


そして原因を目にした時

折角の工作員スキルが台無しになる程の

絶叫を上げてしまった。


迂闊?

でもこれはしょうがない

後で思い返しても反省は出来ない。

これは仕方が無い。


そこに居たのは

地竜よりデカイ蠅だった。


「何じゃこりゃあああああああ!!!」


キモイきも過ぎる

無理無理無理

ウワーアアア手ぇこすったり

複眼キレイにしてたりしてやがる。

不衛生な綺麗好きだ。


俺の悲鳴が聞こえたのだろう

そりゃ聞こえるわな。

そのデカい蠅の頭部で

上体を起こす者が居た。


良くそんな場所で寝られるな。


「ん?・・・何じゃ。」


紅い髪にナイスバディ

美人には違いないが妖艶過ぎだ。

清楚さの欠片も無い。

行き過ぎだ。

完全にテイクオーバーだ。

帰ろう、俺の求めるモノは

一切ココに無さそうだ。


「おーアモンではないかー。

よぅ来たのぅ。」


俺に気が付いた美女は

そう言って背中の虫っぽい羽を高速振動させると

無警戒に俺の前まで飛んで来た。


第一印象の妖艶さとは裏腹に

美女は話すと一気に気さくな人懐こい感じだ。


・・・メイクと衣装をもう少し控え目にした方が

良い様な気がしたって


「・・・ビルジバイツか。」


初めて見る大人バージョンだ。

やはりババァルに似ているな


「遊んでおくれ、退屈で仕方が無いんじゃ。」


「遊んでっておいおい、何してくれてんの?」


俺は頭痛を堪えるかのように

手を額に当てながら言った。


「何とは」


何って・・・異臭の他にある訳無いが

魔王の常識が普通のはずも無い。

丁寧に確認して行こう。


「確認するぞ。この異常なレベルの異臭は

お前の仕業なんだな。」


ビルジバイツは偉そうにふんぞり返って答えた。


「はーはっはは、どうじゃスゴかろう。

妾というよりベブちゃんにやらさておるのだがな。」


ぅお胸デカいな。

ふんぞり返ると更にスゴイ。


「ベブちゃん・・・てのはあの巨大な蠅の事か。」


魔法生物

ビルジバイツは魔力で

疑似生命体を作成する事が出来るそうだ。


召喚や使役の様に失敗のリスクも無く

本来なら存在しない生き物も作成可能。

飼育の必要は無いので手間も費用も発生しない。

破壊(死亡?)されても跡かたなく消えるので

後始末も無い。

メリットはかなり多い。


デメリットとしては

学習、成長はしないので

同じ失敗は必ず繰り返すそうだ。


自慢気に説明するビルジバイツ。

今回の異臭もこの魔法生物の能力だそうだ。


「あれ程、苦労して浄化したってのに・・・。」


台無しだ。


「苦労で言えば妾が一番貢献したハズじゃが。」


「・・・・そうだ。勿体ないと思わんのか。」


快活に笑ってビルジバイツは答えた。


「カーッカッカッ人間共が苦労して作物を

育てるのは、いずれ刈り取る為じゃろう。

お陰で久しぶりの完全体じゃ

どうじゃ色っぽいじゃろう」


そう言ってセクシポーズを取るビルジバイツ。

好きな人にはたまらないのかも知れないが

俺の趣味では無い、来ない。

来ねぇ。

こなっていくよ。


悪臭による大勢の悪感情で一気に

エネルギーを補給したのか

しかしこれでは予定と違う。

ベレンの市民権をミガウィン族に獲得させ。

これから政治経済にどれだけ食い込めるかの勝負に

なったハズだが、これではビルジバイツ一人の利益だ。


流石、悪魔自分さえ良ければ良いのか。


多分すんごい蔑んだような顔になったのだろう

ビルジバイツは笑うのを止めると

俺の顔を覗き込み続けた。


「・・・先程からの言動みるに

爺に命じたのは地上で無い方のアモンという事か。」


オーベルの予知夢にアモンが現れ

この作戦を指示したそうだ。


「自分勝手にやったのかと思ってた。」


「妾をどう思っとるんじゃ・・・。

そこまで勝手ではないぞ。」


膨れた表情は子供の時と同じでカワイイ。


「しかし、良く潜入出来たな。」


教会関係者も既に多く滞在し

復興ついでにバリエア並みの聖域を

展開出来るように都市改造する予定と聞いていた。

完全では無いだろうが基礎は進んでいたハズだ。

このような巨大な悪魔力を中で行使するのは

不可能と思えた。


「カーッカッカッ!ただバカ正直に

浄化作業をしていたのではないぞ。

浄化ついでにあちこちの魔法陣に

ちょいと細工を施しておいたわ。」


悪魔と食事をするなら長いスプーンで

とは言うが・・・流石に抜け目が無いな。


「人間の都市に勝手に何て事を」


「謎の地下道を掘りまくったお主が言うか。」


そうだ。


「俺もか!カーッカッカッ」


「そうじゃ!カーッカッカッ」


うーん、所詮は同じ悪魔か。


「それに責められる謂れは無いぞや。

大事な大事な人間様を一人も殺めてはおらん。

毒を撒く方にしてみれば

こっちの方が難しいんじゃぞ。」


確かにファーの報告でもそうだった。


「それもシンアモンの指示なのか。」


「じゃろう、何でこんな面倒な事をと

最初は妾も疑問だったんじゃがな。」


「・・・最初はと言う事は

今は理由が分かったって事か。」


ビルジバイツは

目を閉じ腕を組んで

ゆっくりと頷くと

空を指差した。


「アレが原因に相違ない。」


俺はビルジバイツの指さした方向の空を

走査したが何の反応も無かった。


「あー探査系は無駄じゃぞ。

行って見て見るのが一番じゃ。

案内しよう、ベブちゃんに乗るが良い。」


飛べるのか

そりゃ飛ぶか

蠅だしな。

でも

いやだ。

どんなに便利でもそれは嫌だ。


「それは遠慮する。自分で飛ぶ」


俺が翼を展開すると

ビルジバイツも背中の羽を振動させた。


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