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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第四百八十 話 祭の夜は長い

ミカリンが落ち着いた様なので

解放するとミカリンの後ろには

いつの間にかヴィータが並んでいた。


「交代なのだわ。」


「何のイベントなんだ。」


俺はそう言って着席させた。

ヴィータの後ろにパウルまで並んでいたのだ。

渋々ながらも席に戻ったヴィータは続けた。


「そう言えば力の方は返して頂けるのかしら。」


「はぁ?」


どうも騒ぎの冒頭の俺のセリフ

まさか本気にしているのか。


「道理で何の権能も無いと思ったのだわ。」


「いや、豊穣の力で肉っておかしいだろ。」


「借り受けし~」は

神への信仰心向上の為の方便で

全部俺の力だ。


「ででわ私の力はドコに行ってしまったというのだわ。」


知らんがな

それこそ上司にでも聞け。


「そう言えばミカリン。孤軍奮闘って言っていたが・・・。」


地上ならアルコを始め

頼もしい人材はいるが

ワイバーン相手だと飛行出来ないと厳しい。

ウルラハは節制の制御下で前線に出られない。

ただ四大天使はもう一人いる。

そしてそいつも制御下を逃れたハズだ。

まさか逃げたのか

俺は嫌な予感がしたので尋ねたが

外れた。

回復優先のためブリッペは戦闘どころでは

無かったそうだ。


「人数が人数だからね。

ある意味僕より大変だったんじゃないかな。」


今は始まってしまった祭に出す

料理に手が離せないそうだ。

まぁ急いで会う必要も無いか。


「も戻りました~。」

「疲れたぜキリがねぇ!」


その時キャリアの扉が開き

ウリハルとヨハンが戻って来た。

時間のある限り避難民を元気づけようと

ウリハルは祭の中、慰問特攻をしていったのだ。

ヨハンは護衛だ。


ウリハルが休みたいと申し出た。

丁度よいタイミングだったので

話はそこでお開きになり

各自、それぞれの馬車に戻って行った。


「僕、ここで寝てももいいかな。」


ミカリンの申し出を快諾。


「当然だ。

三半機関の馬車なんだからな。」


そうなるとアルコにも声を掛けて来るか。

俺はそう言ってキャリアから出た。

救世主として群衆に取り囲まれるかと思い

服装も念のため変えてこっそりと出たのだが

派手な女神と勇者に注目が行ったのか

イケメンなゼータアモンの姿では無いからか


誰も寄って来なかった。


助かるのだが

何か寂しい。


哀愁に黄昏る俺の背中に声を掛ける人物がいた。


「ボス。」


振り返るとそこにはクールビューティな眼鏡っ子だ。


「おぉファー!無事だったか。」


かつてガルド学園のイジメを裏から牛耳っていた調停者フィクサー

名門の戦士の家系ホーネット家の落ちこぼれだ。


「落ちこぼれはあんまりです。」


「声に出てたかスマン。」


「いいえ、それよりご報告したい件が

山の様に溜まっています。」


報告?

何だろう

ファーには

確か裏三半機関を任せてドーマに残した。


「そうか、俺も聞きたい事がある。」


お開きになったせいで

聞きそびれたドーマ組

その安否が気になっていたのだ。


祭の喧噪が邪魔にならない程度に

人混みから外れ俺達は適当に腰を下ろした。

はたから見ればただのカップルに見え

怪しまれる事は無いだろう。


ファーの報告はパウルの話を裏付けた。

それにしても

一学生だというのによく調べ上げたモノだ。

節制の効果は覿面てきめんで民の間で

神の存在は噂レベルも行っていなかったそうだ。


「それで・・・アレ?あれ嘘・・・何で私。」


報告の途中、様子が急変するファー

見ていれば大粒の涙を溢していた。


あれ程の戦闘力を誇るミカリンでさえ

ああなのだ。

多少腕に覚えのある程度のファーにしてみれば

これまでのストレスは相当なモノだっただろう。


俺はファーの頭を撫でながら優しく言った。


「よく頑張ったな。見事だぞ。」


その一言で堤防が決壊

ファーは泣きながら抱き着いてきた。

俺はよしよししてやりながら

ファーが落ち着くまで待った。

もちろんアリアの鞭や

クワン先輩のドロップキックの警戒を

怠る事はしない。

まぁいないとは思うが


落ち着いたファーは預けていた体を放し

元の調子になって言った。


「ありがとう。もう大丈夫。」


「俺がまだ大丈夫じゃない」


そう言って押し倒そうとするが

悲鳴を上げられそうになって

慌てて止めた。


「ちぇ、しょうがない。」


俺はそう言って下ろしたズボンを履き直した。


「・・・で、ボスの方から聞きたい事とは」


俺はまずドーマがどうなったのか聞いた。

そして呆れた。


「臭いくらいで放棄するかぁ!?」


朦朧としたミカリンの妄言だと思いたかったのだが

どうやら本当のようだ。

ドーマもベレン同様、放棄されていた。


「耐えられるレベルじゃありませんよ

アレは・・・ぉぇ思い出しただけで・・・。」


呼吸する以上、とても耐えられない

生きていけないレベルだそうだ。

それ程の強力な異臭にも関わらず

不思議と毒性は皆無で

逆に言うとそれが故

正常な思考と健康が保たれ

逃れようのない責め苦が休む事無く続くそうだ。


「で発生源は何なんだ。」


原因があるだろう。


「それが・・・。」


不明というか

調査も行われては居なかったそうだ。


「もう逃げるに精一杯でした。」


ベレンを中心に隣接するドーマは勿論

近隣、数キロは嗅覚を持つ生き物は

自発的立ち入り禁止区域になった。


「魔族とか魔導院の連中はどうなったんだ。」


ファーの集めた情報によると

バルバリスのキャラバンに加わったのは僅かで

大半の魔族・亜魔族はクリシアに避難の

キャラバンを形成したそうだが

一部の者は対処の為

バロードに居ると言う事だ。


ストレガとアリアはそこに居そうだな。


俺はファーに礼を言い

しばらくはキャラバンに滞在する旨を伝えると

そこで別れ、アルコを探し出した。


アルコはさながら野戦病院と化した

屋外テントキッチンで大量の料理と

終わった食器を忙しく頼もしく運搬していた。


どこまでお利口さんなんだ・・・。


俺はアルコに声を掛けた。


「少しは休んで良いんじゃないか。」


その位出来る者は他にもいるだろうに

アルコにしか出来無い戦闘の為

こう言う事は他人に任せた方が良い。


「常に人手が足りないモノでつい

それに休むなら私より・・・。」


アルコの促した視線の先

キッチン回りの者も皆フラフラだった。

中心でゾンビの様になったブリッペも

「料理は愛情」をブツブツと繰り返し

調理を続けていた。

戦闘以外では積極的な奴だったな。


元気のある者が優先して任に当たっていると言う事か

アルコの体力はハンパ無いからな。


俺はしばらくキャラバンに滞在する事と

今夜はキャリアにミカリンも居る事を伝え

アルコも良かったらと誘っておいた。


輝くような笑顔でアルコは喜んだ。


「はい、是非。何か懐かしくて

泣いちゃいそうです。」


初期組はそうか。

でもそれだって一年経ってないんだが

色々起き過ぎたな。


「まぁ朝には戻るつもりだが俺はちょっと出かけて来る。」


俺の異常な行動範囲を知っているアルコは

不思議がる事もなく普通にドコへ行くのかだけ

聞いて来た。


「バロードにストレガとアリアが居るかもだ。」


アルコも心配だったようで

是非にと頼まれた。


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