第四十七話 石火春雷
「だから弱いと言ったじゃないですか」
「貢献出来ず申し訳ございません」
「魔法は変な疲れ方するから、もうやだよ」
あああ
うるせえ女共だな。
エルフの里まで帰還する馬車。
その車内で俺と同席した
3人は馬車が動きだすと
一斉に話しかけて来た。
戦いの分析をしたかったが
仕方が無い
考察は後にして
各自のフォローを優先するか。
今すべき事と
後でも問題ない事
これを自分の好みや
自分の損得だけで選択を誤ると
必ず破滅が訪れるのだ。
まずはプルからか
「バングに対して風の魔法が有効かどうか
それを知りたかったんだ。
今の人員でそれが可能なのはプル
君だけだ。低い攻撃力なのを
承知で最前戦に立たせるのは
心苦しかったが、他に頼れる者が
居なかったんだ。
怖かったと思う。許して欲しい
でもお陰で貴重なデーターが入手できた。
プルの功績だ。ありがとう礼を言わせてくれ」
おっと
笑顔を忘れた。
が、プルの反応を見る限り
「あっその・・いえ私そんな」
真っ赤になって手をブンブン振っている。
これは洗濯肢がベリーグッドだったんじゃないか
もしかして笑顔いらないのか
ミカリンにも
真顔で「気持ち悪い」と言われたしな
気持ち悪いですよ。
キモいじゃなくて気持ち悪いですよ。
えーと次はアルコか
「馴れない盾役なんで正直不安だったが
想像以上にイイ出来だった。
良くやってくれた。
相手にダメージを与える事が最優先の
攻撃役とは色々と勝手が違うというのに
どこで覚えたんだ。ビックリだぞ。
お陰で安全に魔法に集中する事が出来た。
ありがとう。爪は大丈夫か
回復しようか」
あ
また笑顔を忘れた
あ
いいのか
「・・・・。」
何か言ったようだが
声が小さくて聞き取れない
満足そうに照れている様子から
これもベリーグッド選択できたようだな。
ふーっ
フォローは大変だが
とても大事だ。
自分の仕事を正しく見てくれる。
こういう人が居るか居ないかで
その人の仕事に向かう姿勢は
大きく変わるのだ。
ん
なんだ
ミカリンが尻尾を振ってこっちを
見ている気がする。
仕方が無いので
ムツゴロウ先生を見習って
よーしよーしと
大袈裟に可愛がってやった。
決してセリフを考えるのが
面倒くさかったワケでは無い。
しかし、予想外に
ミカリンは嬉しそうだ。
もしかしてこれもベリーグッドな
選択だったのか。
その後は
直ぐに三人とも寝てしまった。
馴れない相手に
馴れない戦闘は
俺の想像以上に負荷があったようだ。
緊張感からの解放と
程よい揺れが眠気を助長した。
馬車も行きとは違い
ゆっくりと走行してくれている。
気を使ってくれている様だ。
疲れたし
俺も寝るか
いや
これは絶好の
パイタッチのチャンスじゃないか
ふと見ればプルは寝息を立てる程
熟睡している。
先程の感触が右手に蘇る。
たわわな実りがおいでと
誘っている。
もう一度・・・
宝具にNPがスゴイ勢いでチャージ
されていくのが分かる。
上限突破で
着込んでいくタイプもいるが
俺は脱いでいくタイプだ。
「一刀にて証を示す」
ふっ所詮
俺にはコレしかないんだ!!
嫌な予感がしたので
ふと隣を見ると
慌てて薄目を閉じるミカリンが
嘘寝息を立て始めた。
ストップだ。せんどうさんの目はまだ生きてる
止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ
強靭な精神力で伸ばしかけた手を
自分の膝に当て「あーかいい」とか
白々しく独り言を言いながら掻いた。
ちぃ
ヴィータの再来か
天由来はその辺に鋭いのか
単純に俺の邪気が駄々洩れなのか
うん
多分どっちもだ。
くそドコもみたいに止めちゃえよ
どっちーもなんて
なんかチャージしたせいで
眠気も吹っ飛んじまった。
ヒマだ。
何かやる事ないか
って
冒頭で何か言ってなかったっけ俺。
・・・・。
戦いの分析だ。
俺は順を追って思い出す。
まず頻度だ。
これがおかしい。
これまで会った人の話からするに
マイザーもプラプリも
一度だ。
クロードなんて会えてじゃないんじゃないか。
この14年でそんなモンだ。
俺達はこの短期間で二度もだ。
そして明らかに目的が違う別種だ。
目的があればだが・・・。
単純に頻度が上がった
だけかもしれないが
それはそれで原因が知りたい。
問題になるのは
原因が俺あるいはミカリンに
関係する場合だ。
アルコは俺らに合流するまでは
遭遇した事が無いのだ。
すんごい毛の逆立ち方だったな。
タンポポの綿毛みたいだった。
逸れた戻せ。
ただ跳躍していたため
この世界に存在していなかった時間
最終決戦から湖全裸リスタートまでだ。
この間にも現れていたので
単なる偶然か
俺らには関係の無い増加理由の可能性の
方が確立は高そうだ。
魔法。
ストレガが頑張ってくれたのだろうか
この14年で認識は変わった。
オカルトから実在になったが
まだまだ認知は薄い。
これは使い手の少なさに
起因しているのだろう。
学校。
この出身者でもない限り、という
発言があった事から、
ベレンの学園で学ぶ事が出来るが。
輩出した魔法使いの数は
バルバリスに対して
圧倒的少数なのだろう
お目にかかった事が無い者が
まだまだ大多数だ。
使い手が各所にいるなら
バングの弱点が魔法だとすぐに
気が付きそうなモノだ。
・・・前回、ストレガを魔法使いに
させて置いて本当に良かった。
そうでなければ絶望的状況だ。
ドワーフ戦士がどの程度の実力かは
知らないがベアーマンであのザマだ。
鈴や亜鉛ぐらい抉り取るアルコの爪で
ひっかき傷程度だ。
鉄製の武器が貴重なこの世界で
物理だけでバングと戦うのは
大損害を覚悟しなければ
ならなくなるだろう
教会には秘術の使い手がいるが
物の数に数えられない。
数が違い過ぎる
バルバリスもドルワルドと
同じ運命だったであろう
今現在、ネルドが対バングの
最前線だという
そこに卒業した魔法使いを
集中させているのであろうか
で、あればバングを
食い止めていられるのも納得だ。
まぁこの辺は判断は早い
その学園とやらに入ってから
得る情報でおいおい分かるであろう。
車外から歓声が聞こえて来る。
着いたようだ。
外はすっかり夜になっていた。
俺は横のミカリンに
肩タックルを軽くかます
「ぶあ」
薄目は起きていたのではなく
寝てても目、開いちゃうタイプだったのか
ミカリンは本当に寝ていたようだ。
「着いたぞ起きろ」
「はう」
俺は正面のプルを起こそうと
腰を少し上げ
肩を揺するため手を伸ばそうとした
その時
馬車は停車して
俺は
その反動で
また
やってしまった。




