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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第四百六十八話 勇者X勇者

国境付近、ヴァサーの出入口近くまで来た。

俺達は地竜の群れを目撃した。


「魔勇者様!」


「出るぞ。油断するなよ。」


古龍エンシェントドラゴンでなければウリハルでも

遅れを取る事は無い。

むしろ、あの玉砕剣は大型の相手に有効とも言えた。

ここまでの旅路でも地竜と何回か遭遇し

ウリハルの戦い振りを観察した結果

俺はそう判断していた。


俺は馬車の速度を上げ最短距離を

一直線に進んだ。


「何か様子が変ですね。」


抜刀し、いつでも飛び出せる態勢で

助手席で立つウリハルは

前方に目凝らし眺めながらそう言った。


目がイイな。


地竜は群れているが

進軍しているのではなく

一か所を取り囲む様に集まっていた。


「ああ、既に戦闘ちゅ・・・。」


俺の解説を遮る様に集団の中心から

雄たけびが上がった。


「ライジングあっぱあああああ!!」


数匹の地竜、その巨体がつむじ風に弄ばれる木の葉の様に

何体か舞い上がった。

その後すぐ中心から人が真っ直ぐに上昇


「行くぜ!行くぜ!行くぜ!」


空中の見えない天井を蹴り

その人物はビリヤードの玉の様に

滞る事無く瞬時に方向を転換した。


「ライトニングぅなっこぅだあああん!!」



今度は下方向だ。

加速しながら急降下し

舞い上がった地竜を殴り飛ばしながら

雷光の如きジグザクの軌道で落ちていった。


「チャッキー様!!」


はい、正解。

驚きの声を上げるウリハル。

まだ人相を判別出来る距離ではないが

他にいないよな

あんな奴。


「アンドリュー!!」

「はい師匠! Rising Upper!!」


居たよ他にも

しかも発音が良い。


再び地竜が数匹舞い上がるが

見えない壁は習得していないのか

アンドリューは自然落下で

次の攻撃を行った。


空中で方向転換が出来ない。

その事をよく分かっているのかチャッキーは

アンドリューが狙い撃ちされない様に

上手に立ち回る。

倒せそうな数だけ残し間引くという行為まで行っていた。


俺は感心した。

こういうタイプが教育係だと

部下は伸びるモノだ。


「魔勇者・・・様?」


馬車が減速を始めた事を不審に思ったウリハルがそう言った。


「納刀しろ、出番無さそうだ。」


急いでも意味は無いだろう

乗り心地を損なわない速度まで

俺は減速した。


「・・・その様ですね。」


しばらく戦闘を見て納得したウリハルは

剣を仕舞い、助手席に着席して

そう言った。

気合もすっかり抜けていた。


それ程までに二人の戦闘は安定してした。

危なげな様子は皆無だ。

常軌を逸した軌道で行われる高速殴打戦闘。

むしろ迂闊に飛び込めば邪魔になる気すらした。


俺もすっかり気合が抜けてしまった。

発見が遅れたのは

そのせいだ。


「しまった!!」


チャッキーがそう叫ぶと同時に

俺も気が付いた。

外見こそ通常の地竜だが

一匹だけ強いのが居たのだ。

強個体と言う奴だ。


そいつがアンドリューに襲い掛かろうとしていたのだ。


抜刀ブラストオフ!!」


俺の叫びにウリハルは反射的に抜刀した。

同時に立ち上がり戦闘態勢を取った。


偉いぞ。


加速しても馬車は間に合ない。

ええい

投げるか。


「プリンセス・ミッサァァイル!!」


俺はそう叫ぶと半魔化の力で

ウリハルのベルトを掴むと

そのまま前方に投げた。


「参ります!!」


俺の行為に驚く事無く

ウリハルはそう言うと空中で前屈し

玉砕剣の態勢を取った。


つくづく偉いぞ。

我ながら良いコースだ。


「うおおおおお!!」


ウリハルはそのまま地竜に直撃するかと思われたが

流石は強個体と言うべきか

寸での所で首を傾け急所を逸らした。


激突音と共に切断された地竜の角が

回転しながら宙を舞った。


怒りと痛みの咆哮を上げた地竜は

空中に弾かれたウリハルには目も向けず

そのままアンドリューに襲い掛かろうとしていた。


「!」


全力でダッシュしているチャッキーも

俺の馬車も間に合わない。

射線上にアンドリューが居て

危険だがもうここは悪魔光線か。


俺が内圧を上げた時

ウリハルは叫んだ。


「アンドリュー!!」


何とウリハルは使っていなかったもう一本の剣。

あの勇者の剣をアンドリューに向け

空中から放った。


固まっていたアンドリューは

ウリハルの声で呪縛が解けた様に

瞬時に動くと剣をキャッチして抜刀した。


「たぁああああ!!」


眩しい。

銀色に輝く刀身は

相変わらず俺には不吉の塊だ。


そして切れ味も相変わらずだった。

輝く軌道はその通り道に

あらゆる物体を許さなかった。


質量も硬度もまるで意味を成さない。

剣速を落とす事無く

地竜の首は頭ごと切って落とされた。


「お見事です!!」


そう言いながら器用に着地したウリハル。

いや

見事なのはお前だ。

母から譲り受けた大事な剣だというのに

他人に迷うことなく放って渡した。

俺があいつの立場だったら

勿体なくて出来なかったと思う。

何と言うか器の大きさとでも言おうか。

ウリハルに敵わない部分がある事を

俺は悔しさも無く

純粋に羨ましいと感じていた。


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