表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぞくデビ  作者: Tetra1031
462/524

第四百六十一話 インスペクター

「ご案内を担当致します。

インスペクターのアラハと申します。

案内以外の用事も承りますので

何でもお申しつけ下さい。」


「何だ?インスペクターって」


千葉の暴走族か


「平たく言うと監視役でございます。」


アラハはそう言って会釈した。


「監視役って・・・監視対象に言っちゃって良いのか。」


「はい、聡明なお方なので

こちらの事情も酌んで頂ける。

下手に隠して暴かれるより

始めから明かした方が好印象との指示です。

と、言う訳で所内でも最も嘘が下手と言われた

私に白羽の矢が立った次第でございます。」


ちょっと待ってくれ

考えさせてくれ

んーと

俺は馬鹿にされているのだろうか。


俺は王城内のやたら広い部屋に宿泊させられた。

寝室だけでダンスホールぐらいある。

部屋のど真ん中に柱付のベッドがあるのだが

そこに行くまでが面倒くさい

スケボーでも生成したくなる距離だ。

夜は会議無しの宴だった。

最初と同じ限られた面子だったが

今回はセドリックだけでなく

俺にも大臣が押し寄せ

お酌に応えているだけで

酔いつぶれてしまった。

変な事言って居ないと良いんだが

どうも記憶も曖昧だ。


最後の方はウリハルが珍しくキレて

群がる大臣を蹴散らしていた気がする。


その最中、俺はバリエア観光を申し出て

案内その他、バリエアでの風習など

余計なトラブルを避ける意味でも

案内人を付けるとエロルが言っていた。

それで来たのがこのねーちゃんだ。


まず

デカい

デカいだけでなく

ガタイが良い

戦士系だろうな

それとも服の下に鎧でも着込んでいるのか

肉弾戦なら良い線いきそうだ。

こちら側から対戦相手を選出するなら

アルコ一択だろう

人間種に限定されたら棄権だ。


目つきも怖い

殺し屋か

なんて形相で人を見るんだ。

超三白眼だ。


しかし、悪感情は漏れてこない。

むしろ怯えに近い緊張と歓喜の味だった。


俺はここで悪魔の自分に感謝した。


この能力が無ければ

外見からの印象でアラハを誤解していただろう。

この人、見た目の怖さと中身が

恐らくかけ離れた善人だ。

クラス替えから2か月くらい経つと

「良い人だったんだね」と言われるタイプだ。


まぁ恐らくは重大な任務だ。

抜擢されれば喜びと緊張は当然だろうな。

ただ、それで強張ってしまい

ただでさえ怖い顔に拍車が掛かっているぞ。


言うと傷付くだろうから

これは思わず言ってしまわない様に

注意しないとな。


「何でもお世話って例えば?」


脱げって言ったら脱ぐのかな。


「何でもです。

言わせて頂ければ

自害など

宗教上禁止されている行為は

命令しないで頂けると有難いですが・・・。」


本気だ。

俺はぞっとした。

バルバリスが俺の扱いに関して

適当にするはずは無いだろうが

それにしてもそこまで覚悟させて

送り出すとか

もう戦時態勢じゃないか。

・・・・戦時態勢か。


「ふうん、あまりに役に立たないようなら

悪いが命じるかも知れんぞ。

何が出来るんだ?特技は?

習得している技能は?」


「はい!!よくぞ聞いて下さいました。」


寝起きで機嫌が悪いのか

俺にしてはイジワルな言い方だったが

なんとアラハは待っていましたとばかりに

自分の技能を語り始めた。


それがもう出るわ出るわ。

読み書き(この世界の習字率では特技になる)から

計算、外国語の学業系全般。

運動系に至っては剣の扱いから

乗馬、馬車の御者。

毒や野草の知識、罠の基本から動物の裁き方など

サバイバル技能も網羅していた。

こいつの親は一体この娘にどうなって欲しかったのだろうか。

それとも、こいつ自身の性格か

資格マニアか。

必要に迫られて取得するのではなく

取れそうなモノは片っ端からチャレンジしていくタイプか。


説明の勢いから推察すると後者だ。

もう熱弁だ。

頬を紅潮させて語り、止まる気配が無い。

これも怖さを加速させていた。


興奮して喋るアラハ。

あまりに長いので俺はそれをBGMにして

着替えを終えた。

まだ自分語りが続いていたので

終わるのを待った。


「ハァ・・・ハァ・・・以上ですっ!!」


「そうか、まず朝飯だ。」


演説ご苦労だ。

ジークアラハ。


「はっメニューは何を希望されますか!」


ハァハァ言う程、横隔膜を酷使した直後だと言うのに

直ぐに復活するアラハ。

若いにしても体力もありそうだ。


「宮廷の味はもう十分だ。

貴族などでない庶民の味を知りたいな。」


「ではダウンタウンの市場付近です!

安くて栄養満点の定食屋が

凌ぎを削る激戦区ですっ!

飛び交う怒号!!

飛び散る肉汁!

他店舗との差別化を図る為に

毎月繰り出される期間限定

ゲテモノギリギリの特殊メニューは

捨て値価格なので絶対のオススメですっ!!」


何か今まで回りに居なかったタイプだ。

俺は気圧けおされつつ

まだまだ続きそうな解説を遮った。

そうしないと自己紹介の様に

結構な時間を要しそうだ。

昼飯の時間に突入してしまう。


「任せる。ただ定番で頼む。」


ゲテモノとか勘弁してくれ。


「はっ!では

源の肉盛り停のド定番、朝の令がオススメです!」


夕方には変わりそうなメニューだな。


「それで良い。案内しろ」


「下に馬車が準備済みでございます。

少しトバしますが間に合わせて見せます。」


「ええい、絶対に間に合うと言わんか」


「間に合います!!」


「よし行くぞ!!」


「はっ!!」


俺も引きずられて

変なノリのまま出発した。

本当にトバすトバす。

軍馬でも選りすぐりのを用意しているのだろう

小さいサイズなのに二頭引きなのも相まって

すんごい速度だった。

郊外と違って市内だとスピード感もスゴイ。


ダウンタウンまで停止したのは

壁の検疫だけで

それもピットストップみたいな慌ただしさで通過し

源の肉盛り停とやらに

俺達は滑り込んだ。


「ハァ・・・・ハァ朝の令!!

二つお願いします!!」


「ハァ・・・ハァ・・・見事だ。」


アラハは身分証を警察手帳の様に店主に見せた。

俺も貰ったばかりの身分を証明する指輪を見せた。

店主は驚き呟いた。


「お城のお方かい・・・それだったら

時間外でもお作り致しましたですよ。」


無駄に疲れただけだった。

でも定食は美味かったのでいいか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ