第四百六十 話 ユニット配置は勝敗を左右する
「ウリハル本人にその覚悟があるなら同行を認めよう。」
俺はどう言えば一番カッコ良いか
その基準だけで話始めた。
「最悪、場合によってはバルバリスを
犠牲にする選択をするかも知れないが
その時はお前が判断しろ。
姫としてバルバリスを救う為に離れるか
勇者として同行を続けるかだ。」
全員の顔色が変わった。
「誰も依怙贔屓しないと言う事は
そう言う事でもある。
等しく切り捨てる可能性をも含んでいるんだ。
勿論、全て救えればそれは理想的だ。
そう理想だ。
だが現実は理想通りにはいかない。
むしろままならない事の方が多い。」
姫としての責務
勇者としての責務
これが相反する事態
十分に有り得るのだ。
俺はウリハルだけを
しっかりと見つめ続けた。
「俺に付いて来るとはそう言う事だ。
その時にキチンと自分で決断するんだ。
これが同行する条件だ。
そして
どちらを選んでも間違いでは無い。
選ぶと言う事は
選ばなかった方を諦めると言う事だ。
そして覚悟が不十分だった場合
その負い目は呪いとなって
一生付きまとうだろう。」
ウリハルは強い意志の篭った表情で答えた。
「はい、覚悟しておきます。」
まぁ鉄壁の防衛網だ。
その時は来ないと思うが
もし来てしまったら
ウリハルはどちらを選ぶのだろうか。
気にはなるが
ここは問いたださない方がカッコ良さそうだ。
聞かないでおこう。
ここでエロルが言葉を漏らした。
「魔勇者か・・・成程
魔を冠する勇者とはそういうものなのだな。」
「誰かにとっての良い事は
他の誰かに迷惑な事にもなる時がある。
今の内に俺を亡き者にしておくかい。」
言ってから焦った。
バリエアの中心部では悪魔化出来ない。
襲われたらどうしよう。
「ふふ、その時が来たら
我もバルバリスの皇帝として
覚悟を示そう。
そして今は縋る!!
バルバリスと孫を頼む!!」
何て正直な爺さんだ。
俺は笑って受諾した。
そして交換条件を持ち出した。
断りづらい最適なタイミングだろうと思ったのだ。
「その替わりお願いしたい事がある。」
「む?申されよ。」
「二つある。一つは・・・。」
バリエアへの出入りの不便さだ。
また牢屋にぶち込まれてはたまらない。
前回のローベルトの指輪みたいな免状があれば
行き来も楽になる。
俺はそう持ち掛けた。
「お安い御用だ。
と言うかこちらからお願いしたい事だ。
不便を掛けては良く無いからな。」
エロルは二つ返事で了承した。
やっぱり同じような指輪があるそうだ。
「二つ目はちょっと厄介なんだが・・・。」
俺はそう前置きして話した。
「か・・・神を?ですかな・・・??」
流石のエロルも威厳が剥がれ
驚愕の表情だ。
「ああ、神と言っても権能を失い
人となんら変わりない者も数名いる。
今の所3名だが今後増える可能性大だ。
全部、ここで保護してもらいたい。」
悪魔をクリシア側にまとめるなら
神は一番離れた西端のバリエアが良いだろう。
何と言っても一番安全な場所だ。
ミネバはともかくカシオやヴィータの
避難所として申し分無い。
「し・・・しかし相応しい建物を建てる時間が・・・。」
エロルはしどろもどろになって狼狽した。
「この城内で良い。部屋なんていっぱいあるだろう。」
ゲッペの教会に比べれば
ミネバも文句言うまい。
大体、神なんだから授ける方なのに
与えられる処遇に文句を言うとは
どう言う事だ。
「詳細は・・・9大司教の誰かから聞いてくれ。」
誰になるか分からないが
絶対マークが付くハズだ。
俺もそいつに丸投げしよう。
「・・・ユークリッドではないだろうな。」
驚愕から訝し気な表情に変化したエロルはそう言った。
俺も同じような表情で答えた。
「・・・・かも知れない。」
その可能性もあるがハンス、ヨハンと
戦線に出張るかも知れない。
可能性としてはパウルが一番高そうだ。
エロルは二つ目の条件も了承した。
ウリハルの出発には数日を要した。
その間に姫として進める準備があるそうだ。
俺の都合をやたらと心配して来たが
指輪のお陰で出入りに問題が無いので
行ったり来たりするから問題無いと言っておいた。
折角なので少しバリエアの観光を楽しむか。




