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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第四百五十八話 そう言えば会った事無かった

帰りの道中でも魔物に出くわした。

低レベルのモノばかりなので

俺とウリハルで余裕だ。


この辺りの平時の出現頻度を知らないので

多いのかどうか分からない俺に

ワインは明らかに増えていると断言した。


ワインもリキュールも負傷に懲りた様で

戦闘に参加してくる事はなかった。

始めは釘を刺して置くべきかとも思ったのだが


十分に思い知った相手にやるのは

イジメに近い行為だと


俺は思って居るので

参加してくる様なら

改めて釘を刺す事にしていた。


その不安は杞憂に終わった。

二人共、大人しく自重していた。

ただウリハルを戦線に出す事は

いくら敵が低レベルで心配要らないとは言え

生きた心地がしない様だ。

俺に重ね重ね「よろしく頼みます。」と

懇願に近い状態で言って来ていた。


俺は余裕の表情で任せろと答えておいた。


道中で馬車の修理も行った。

損傷した馬車の姿を目にすれば

親御さん達はハラハラだろう。

要らぬ心労を掛けても仕方が無い。

修理ついでにベアリングやサスなども

さり気無く追加しておいた。


途中の大き目の町で一泊し

バリエアまで帰還した。


ドラゴン種との遭遇は無かった。

ヴァサーとベネットは良くやってくれている様だ。


ウリハルをガバガバに引き渡すと

俺は別行動だ。

防空体制構築の為の設計責任者との打ち合わせだ。

なんと相手はガウだった。


「居ないと思ったらバリエアにいたのか。」


一番最初に会ったドワーフで

ベレンの冒険者教会の役員だった。

規約を無視してまで

俺の持ち込んだミスリルを入手しようとしてたっけな。

ちなみにドーマでアモン2000を

勝手に解体したゲアは彼の弟だ。


ドワーフは基本良い人が多いのだが

決まりとかルールをあまり尊重しない傾向がある。

良い事、悪い事を分かっていて

結果的に良い事になるなら

平気でルールを無視する。

この辺りの気質も長年バルバリスと

にらみ合いを続けた理由だ。

バルバリスは反対で規範意識が高い

元の世界で例えるなら

誰も居ない真夜中の

見通しの良い交差点でも

信号が青になるまで待つタイプだ。


「本物かね?髪の色が違う気がする。

それに年齢も当時のままじゃ。」


俺はソフィの毒針を

とばっちりで食らった模擬戦エピソードを

語り始めた。


「分かった分かったそこまで!

どうせならもっとマシな昔話が良かったわい。」


広めの会議室

ガウの後ろで壁際に控えている

部下と思しき者達を振り返りながら

ガウは俺の話を止めた。


結構な地位を与えられている様だ。

威厳は大事だな。


「しかし建築とはな。

元冒険者の鉱石マニアだとばかり思って居たぞ。」


「ん、その通りじゃ。」


ガウは俺を否定するどころか

力強く頷いて肯定した。


聞いて見ると

兄弟で共に招致され

基本設計は全てゲアの手に寄るモノだそうだ。

後は職人達の監督なので

ドーマも担当していたゲアは早々に引き上げ

監督役を引き受けて残っているそうだ。

ドワーフの中でも最も早く

人と交流し、高い地位(ドワーフはそう思っている)を得た

ガウは先駆者としてカリスマがあるそうだ。


「なので細かい事はワシじゃ分からんのじゃよ。」


「何で出て来た?」


俺の突っ込みに豪快に笑い

俺の肩をバンバン叩くガウ。


「はっははワシもそう思うが

これも人の風習、まずワシを

通してから専門の部下を付けるでな。」


そう言ってガウは振り返り

手招きをした。

ドワーフにしては少し小柄な者が

俺達の席まで進み出て来る。


「と言うワケで今の設計担当じゃ。」


「マリリンと申します。」


そう言って頭を下げた。

俺はずっこけそうになった。

名前だけでなく

声も女性のような高い声だ。


「女みたいな名前だな。」


言ってしまってから俺は焦った。

そのセリフだけで

空手家にぶん殴られたエリート軍人がいるらしい。


そして衝撃の事実。


「は?ワシ女ですけど。」


「はっはは人間種には

そう見えんからしゃーないわな!!」


マリリンと紹介されたドワーフも

特に憤慨している様子は無い。

もう慣れっこの様だ。


「たー・・・大変失礼をしました。」


あんぐりと開いた口を

何とか動かし俺は謝罪したが

謝っている最中でも


俺は担がれているんじゃないかとの疑惑が拭えない。

だって髭が生えているだぜ。

それで女性って

えーっ

外見上男性と差が無いぞ。

どうやって見わけてんだ?

あれか

人間の目には同じに見えるが

ドワーフの目には色が違って見えるのか

モンシロチョウみたいに


『ねぇ疑ってる?疑ってるわねですわ』


幻聴ババァルがアイギスの口真似で

楽しそうにそう言っていた。


あまり似てない。


ショック冷めやらぬまま

会議を終えた俺は

今まで感じた事の無い疲労を抱え

やっと解放された。

これ

何が、どこが疲れたのだろうか。


「何か食うか。」


疲労の正体は不明だが

食事は効果があるはずだ。

俺は食事をすべく城の内部をウロウロするが

良く考えたら売店なんてあるはずが無い。


出るか

もう帰るか。


そう思った辺りで

見覚えのある執事に捕まった。

捜索に出発する時に案内した奴だ。


エロル皇帝がお呼びだそうだ。


「嫌だ断る!俺は空腹だ!!」


廊下を通行している使用人達が

信じられないモノを見る目で

一斉にこっちを見た。


だよな。

皇帝の呼び出しを

腹が減っているからと断る人間が

この世に居るなどとは想像もつかないわな。


俺の激昂にも

全く動じる事の無い

良く訓練された執事は

笑顔を崩さず答えた。


「それは丁度良かったです。

格式ばったモノではありません。

ランチ形式の無礼講です。

お気軽にご参加下さい。」


そう言って有無を言わせず俺を連行した。

すんごい力だ。

存在の力。

執事としての責務がこいつを強化しているのか

本気になれば逃げるのは容易いが

非戦闘員の執事相手に

本気になれば

その時点で俺の負けだと思ったので

大人しく連行される事にした。


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