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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第四百五十六話 ナンドと言う村

ナンドの村は古くてショボかった。

最新の技術で建造されたばかりの首都

バリエアを見た後だけに余計にそう感じた。

何か昔のバロードを思い出す。


この辺りは前降臨の被害も少なく

古い建物が古いままだ。

主な街道からも外れていて

農地にも適していない。

南の山脈に登山するモノ好きと

新たな狩場を開拓したいハンターや

冒険者相手の為の村と言っていい。


なのでウリハルの来訪は

村がひっくり返る程の大騒ぎになった。


「村長!!お湯が沸きました。」

「誰が沸せと言ったぁ!!お産でもするのか」


まぁ分かる。

何か取り合えずお湯を沸かしたくなる人って居る。


相応しい宿泊場所が無い。

一番まともな村長のお屋敷でも

バリエアのダウンタウンの以下だった。


「お構いなく、野宿で構いませんよ。」


素敵な笑顔と変な声でそう言うウリハル。

いや

それじゃ村人全員打ち首だろ。

俺はウリハルを制して村長の厚意に感謝をした。


その日の夜は急遽、歓迎の宴が開催された。

無理に物資を消費して

後が困るのでは無いかと俺は心配になったが

出て来た料理は肉料理

材料は先刻のスパイクリカオンと

例の馬君だ。

合掌して頂いた。

結構、美味かった。


後、この村には漬物があり

豪華さに欠けまくりで

出した村人は恐縮しまくりだったが

俺とウリハルは大層喜んだ。


俺達の喜びようを見た村人達は

それでまた大騒ぎになった。


元々農業に向いていないこの村では

野菜の保存技術が発達したようだ。

生き延びる為の技術故

真剣に打ち込んだのだろう。

絶品に仕上がっていた。


食後は村の観光・・・と言うか散歩だな。

俺とウリハルは村を練り歩いた。

村人はみすぼらしく恥ずかしいから

止めて欲しがっていたが

偽りの無い民の暮らしを知る為の

これも皇族の勉強だと言って

強引に決行した。


「鍵が・・・無いのですね。」


村長の屋敷ですらそうだった。

勿論、村人の家から小屋まで

扉には一切の鍵が見受けられなかった。


「必要無いんだろ、泥棒が居ないんだ。」


村人全員で100人居るかどうか怪しい規模だ。

全員顔見知りなのだ。


「まぁ何て素敵な事でしょう。」


マジで感動しているウリハル。

他人の悪行に心を痛めるタイプだからな。

俺的にはエネルギー補給に事欠くので

悪人が蔓延る都会の方が快適だ。

ずっとこの村にいれば

俺は干上がるだろう。


後、驚きだったのが

農耕具を始め馬車など、道具が全て共用だった。

個人の持ち物は服や食器ぐらいらしい。

村が一つの家で村人は全て家族といえば

しっくり来る感覚だ。

これも小規模ならではの事だろう。


大分ガタが来ている道具が多かったので

俺は適当に作成すると


「これは姫様から寄贈品である。

未来永劫大切に扱うように!!」


そう言って渡した。

新品を始めて見る者が多く

偉く感謝されてしまった。


偉そうにふんぞり返る俺に対し

笑顔で「世話になるお礼です。」と言うウリハル。

うん

良い感じで好感度が上がっている。

この調子で行こう。


そうして井戸や溜池などインフラ関係を

中心にメイドイン俺にしていった。


ほとんど共用と言ったが

ただ例外が二つ。

教会と冒険者協会だ。

どちらも慎ましい規模だが存在していて

教会は本国とのやり取りから

村人の健康を守る医療も兼ねていた。

冒険者協会は依頼を受ける場所と言うよりは

他での依頼でここを拠点や中継として

訪れ利用する冒険者と

ここの防衛を担う駐在する冒険者の為の設備だ。


まず教会を訪れたが

規模が規模なだけに

頑張れば半魔化出来そうなレベルのプレッシャーだった。

常駐している神父もこの村の者で

年に一度程度訪れる教会の使者に

現状を報告する程度

また教会からの情報を受けるだけだそうだ。

色々見て見たがパウルの影が配置されているような様子は無い。

こう言っては悪いが価値の無い村なのだろう。

逆を言えば平和そのものと言う事だ。


「これは姫様から寄贈品である。

未来永劫大切に扱うように!!」


イタズラ心が疼いた俺は

あの伝説のスーパー生徒会長バイスの銅像を勝手に設置した。

「素敵だよ。」銅像バイスは早速、喋り出した。

これもまた大騒ぎを引き起こした。


冒険者協会も同様で

常備している武器防具は酷いレベルだった。

豪華で派手なのは反って恥ずかしい環境なので

装飾の無い質実剛健な鉄製を寄贈しておいた。


「これは姫様から寄贈品である。

未来永劫大切に扱うように!!」


「私だと思って使って下さいね。」


いや無理だろ。

姫様で攻撃を受けたり

姫様で殴りかかったり

悪逆非道な中ボスだよ。


みすぼらしいと辛辣に批判されると

思い込んでいた村人達は

その素振りも見せず笑顔で接する

ウリハルに心頭していった。


ふふ

ちょろいモンだ。

ナンド掌握完了!!


・・・掌握してどうすんだ。

まぁ

きっといつか何かの役に立つ・・・

いや、無いな。


そんな事を思って居る俺をよそに

ウリハルはこの素朴で純情な交流に

本気で喜んでいた。


「これが一番の収穫かな。」


楽しそうなウリハルを見て

俺はそう呟いた。


さて

俺の予想通りなら明日辺りには

ディーン達が訪れるだろう。


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