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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第四百五十五話 ナンド到着

「これで本当によろしかったのでしょうか?」


ベネットと別れ

ナンドを目指す俺達。

ウリハルは御者席まで出て来て

そう聞いて来た。


「これでのコレが分からん。

ベネットを置き去りにして来た事か?

それとも奴の功績を横取りする事か?」


俺はベネットに倒した竜は勇者の仕業にする様に

頼んで置いたのだ。

ベネットは二つ返事でOKしてくれた。


「両方です。」


普通の人間なら悪魔を嫌悪する所だ。

悪魔がどんな酷い目にあっても

誰も同情なんてしない。

だがウリハルの目には

ベネットは優れた高貴な戦士に写ったようだ。

気が引けるのだろう。


「まず、置き去りからな。

アイツも言っていたが特命を受けていて

俺達と同行は出来ない。

それにお前は平気だから分からんかもしれないが

奴の放つ闘気は平民には毒と同じだ。

俺達が今向かっているのは人里だ。」


悪魔を嫌悪しないのは

悪魔オーラへの絶対耐性と

親から聞かされた魔勇者の刷り込み

この両方から来ていると思った。

特に幼少期からの教育

これはデカイ

日本兵なんて会った事も無いのに

被害だ賠償だ真顔で喚く連中も

教育の賜物だからな。


「それは分かりますが

せめて食料や水など分けて差し上げても・・・。」


この辺の理解は難しいだろう。

俺はソレが必要だからな

悪魔だが俺は必要でベネットは不要なの

そう言っても説得力が無い。


「戦士を支えているのは

その何倍もの非戦闘員の支援だ。

戦闘の被害から守る為に隠れているが

あいつ1人であそこに居るワケでは無い。

無用な情報漏洩で守るべき者達の

危険度を上げても仕方あるまい。」


曇っていた表情が一瞬で輝くウリハル。


「あっそうか、そうですよね」


「そうだ。」


ゴメン嘘です。


「では手柄の横取りも・・・。」


「むしろそうする事で彼等は隠れやすくなる。

元々名声を高めるつもりも

収益を得るつもりもない。

しかし戦闘の痕跡は残ってしまう。

そこを引き受けるんだ。」


理屈は分かったが納得しきれない様子だ。

ウリハルは戸惑いながら言った。

ズルいと感じる引け目が消えないようだ。


「ふ複雑なのですね。」


「一見、手柄の横取りと美味しい話に見えるが

良い事ばかりでも無いぞ

反撃の牙は勇者に向けられるんだからな。」


「はい。それは甘んじて

いえ、喜んでお受けします。」


今度は気合の入った戦士の顔だ。

コロコロと表情の変わる子だ。

声はずっと変なままだ。


不利益は気にしないが

利益には気が引けるのか

真面目な奴だ。


「魔勇者様!」


相変わらず反応が速い。

進む街道の先に魔物がいる。

しかしこの反応は地竜では無い

低レベルのモンスターだ。


「飛ばすぞ捕まれ!」


俺はそう言って偽馬車を加速させた。

全速で飛ばすと

偽馬の歩行ギミックが間に合わないので

明らかに歩幅以上の距離を移動してしまい

不自然極まりない光景だ。


そういえば昔カール君という・・・

また余計な事を考えた。


現場まで到着した。

荷馬車がスパイクリカオンの亜種

毛がふさふさしたタイプに襲撃されていた。

車輪と馬がやられ走行不能になった荷馬車は

護衛の冒険者と思しき者が奮戦しているが

多勢に無勢、戦局は思わしく無かった。

非戦闘員達も農耕具を手に構えているが

冒険者の助けを待つまで耐えているのが

精一杯の様子だ。

スパイクリカオンの方は

無理に攻める事はせず

冒険者の反対側が常にちょっかいを出し

冒険者が来ると退くと言う事を繰り返していた。

冒険者さえ倒れれば労無くして勝てる。

その事を理解しているのだ。

賢いが今回は裏目に出たな。


「魔法で援護する。行け!」


このレベルならウリハル1人でも

大丈夫だろう。

俺は衝突しないように減速を開始しつつ叫んだ。


「参ります。うおおおおお!」


偽馬車の勢いと跳躍の相乗効果で

弾丸の様に発射されるウリハル。


危ない場面なら魔法で助けるつもりで

俺は待機していたが

その必要な無かった。

ウリハルは瞬く間にスパイクリカオンを

次々と葬って行った。

不利を悟ったスパイクリカオン達は

素早く撤退を選択したのだ。


元々魔物と言うよりは

野生動物の側面の強い生き物だ。

獲物が自分達より強いと分かれば逃げる。

ウリハルも追ってまで退治する気は無い。

以前も人が襲われてさえいなければ

見逃すみたいな事を言っていた。


「怪我人の方はいますか。」


スパイクリカオンの撤退を見送ると

ウリハルは納刀した。

ウリハルを守る様に滞空していた

四本の刺突武器は納刀に

追従、合体し鞘になった。

その光景を口を開けて驚いて見ている。

襲われた面々。


まぁこれが普通の反応だよな。


「お見事です、姫様。」


俺は偽馬車から降りると仰々しく言った。


「・・・姫?」

「ああああ!ウリハル・ヒリング・バルバリス殿下じゃあないか?!」

「何でこんなトコロに??」


ホッとしたのも束の間

今度は雲の上のお方が目の間にいた。

荷馬車の面々は慌てて跪いた。


「師匠!怪我人をお願い出来ますか。」


人々に表を上げるように言った後

ウリハルは俺にそう言って来た。

引っ掛かれた怪我人が数名いただけだ。

人化して回復呪文を掛けてやった。


ウリハルが人々から事情を効いている間に

俺は壊れた車輪を修理した。

人が見ていないのを確認しては

金属操作で車軸をベアリング化しておく

サスはいいか

流石に応急修理としては不自然だし

自分が乗るワケじゃないからな。


馬の方はどうしようか

蘇生すべきなのかと思ったが

車輪の修理中に既に処理され

食材と化していた。

後でスタッフが美味しくいただくのだろう。


普段から食用品を運んでいる馬車で

モンスターもいる地域なので

護衛の冒険者も雇っていたそうなのだが

ここ最近では山に居る魔物を

良く見かける様になり

恐れていた事が起こったと言う事らしい。


これも竜の被害の一環だろう。

山側から進行してくる地竜に

縄張りを追い出され

食うに困っているのだ。


「馬を失い、さぞお困りでしょう。ここは・・・」


ウリハルの申し出のまま

俺は荷馬車をけん引し

そのままナンドに入る事になった。


本当にお人好しだな。

しかし人々から羨望の眼差しを受ける

金髪鎧の少女は

何か絵になるので良いか。

横取りじゃない実際の手柄なんだしな。


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