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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第四百五十二話 トシを食うと説明書を読まない

索敵能力からしてケタ違いだった。


「そう言えばババァルも東の果てのデスデバレイズから

西の果てのバリエアに居る俺を探知して移動して来たんだっけなぁ。」


俺達を襲ったと思しき古龍は

今ノシノシと山中をバリエア方面に向け

のんびり歩いて移動していた。


ヴァサーの防空網をどうやって抜けたのか

その疑問が解決した。

翼はあるものの飛行は得意で無いタイプなのか

空は危険である事を知っているかのいずれかだろう。


「どっちでもいいや。

取り合えず試運転に付き合ってもらうとするか。」


俺は洞窟の真上に滞空していた。

ここから加速して飛行すれば

直ぐに追いつく事は可能だが

今までの性能でも持て余し気味だった。

何か今全力飛行を行うと

壮絶なオチが待っていそうな気がする。


こう言う嫌な予感は

大体当たるので飛行テストは止めよう。

被害を考えれば海上が望ましいだろう。


なので悪魔光線のテストに切り替える事にした。

内圧の上昇スピードも最大圧数値も

段違いに上がっているので

当然、射程も伸びていると思われる。

これもいきなり最大は危ないので

軽くジャブ程度から始めよう。

外れても

仕留められなくても

挑発の効果はある。

向こうから向かって来てもらえれば

格闘のテストも行いやすい。


俺は最低出力の悪魔光線を古龍に向け発射して見た。


あらゆる事で俺は複数の驚きを感じた。


まず感じたのは負荷の軽減だった。

今までは一発撃つのに

咳程度の負担があったのだが

今の俺は瞬き程度の負荷とは呼べないレベルまで

低減されていた。

これなら連射も可能だぞ。


二つ目に感じたのは

放たれたプラズマのコントロールが可能だった事だ。

今までは他の射撃と同様に

放つ瞬間までしか制御下に無いが

今度の悪魔光線は撃った後の

プラズマにも俺の意志が反映された。

それだけでは無くプラズマの手ごたえと言おうか

状況もフィードバックされたのだ。


通過している大気の湿度などで

損耗していく威力やズレていく軌道が

手に取るように分かった。

このままでは古龍の左脇3m程に着弾する。


そして三つ目に驚いたのが

射撃後の微調整が可能だ。


曲がるビームだ。


込めた悪魔力の量によると推測されるが

ある程度の軌道修正が出来た。

流石に急激な方向転換は無理だが

カーブやシュートの様な変化球程度は出来た。


「やはり後頭部か。」


俺は悪魔光線の軌道を修正して

丁度、後ろ向きなので

後頭部に命中する様に悪魔光線の

軌道を補正した。


そしてこの一連が

刹那の瞬間での出来事だ。

高速思考の速度上昇もヤバいレベルで上がっている。


「さぁ激昂して反撃してこい!」


反撃は無かった。


命中した悪魔光線は古龍を熱と光に

瞬時に変換してもなおエネルギーが余り

貫通してその先の地面に潜り込んだ。

悪魔光線の余剰エネルギーを受け取った

大地は瞬間で数百倍の体積になり

命中していない周囲の大地を捲り上げ

周囲に飛び散った。

引き裂かれた大気は爆音を衝撃破を発生

周囲の木々を放射状に押し広げると

数秒後には強烈な引き戻しだ。


地面は真っ赤に光り、ただれた状態の大穴が開き

キノコ雲だけがのんびりと上昇していった。


「・・・えーっ。」


その光景に目を奪われ

しばし呆然となる俺は

降り注いでくる小石などに打たれる頃

やっと声を出した。

空間転移の予兆を感知した。

ヴァサーだ。


「何事だい?!」


常にクールで余裕の表情なヴァサーが

血相を変えて俺の隣に現れた。

興味深かったのは

翼を展開し飛んでいるのではなく

まるで見えない台に降りた様に

空中に着地した事だ。


オーラも放出していた。

ヴァサーは臨戦態勢だ。


「あ・・・お騒がせしてスイマセン。」


買ったばかりのオーディオ機器

操作方法を良く理解しておらず

ヘッドホンで聞いていたつもりが

スピーカーからも音が出ていて

それに気が付かず

隣の部屋から怒鳴り込まれた人みたいに

俺はなってヴァサーに事情を説明した。


「・・・加減しようよ。」


したつもりだったのだが

これは言っても言い訳だ。


「・・・ハイ、すいません。」


ヴァサーは怒っていたワケでは無く

緊急事態に驚いていただけだ。

俺が原因など分かると

直ぐにクールな通常モードに戻って

爽やかな笑顔で機嫌を取り戻した。


「私の屋敷まで揺れたよ。

時空を超える影響が出る物理攻撃とはスゴイね。

まぁ流石に被害が出る程では無いがね。」


そう

これは全開で撃ったらヤバいかな・・。


後は普通に挨拶程度の雑談になり

ヴァサーは戻っていった。


俺も戻ろう。


「大激戦だったようですね。

ここも大揺れでした。」


ゲカイの隠れ家は振動で

調度品から家具から

えらい事になっていた。


ウリハルは片づけようとしているのだが

何処に何があったのか分からないので

取り合えず倒れた物を起こしていた。


「まぁ・・・な。」


俺も片づけを手伝った。


ウリハルの体の状態を尋ねると

本人は大丈夫と言っていたが

今からナンドに赴いても

ディーン達がまだ到着していないだろう。

俺も人化して休みたかったので

その日はその隠れ家に泊まる事にした。


入り口は念のため土系魔法で塞いでおいた。

ゲカイが居てくれれば

こんな手間は無いのだが

もう彼女の助力は無い。


俺は

今になって胸に穴が空いた様な

寂しさを感じた。


翌朝、俺達は隠れ家を後にし

人目に付かない辺りまでは飛行

勿論、おっかなびっくりで微調整しながらだ。


ナンド付近に着陸すると

偽馬車でナンドへと向かった。


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