第四十五話 その手を離さない
生け花やイジメなどに使われる道具で
剣山と言う物がある。
変電所で適当に拳を振り回していたら
右腕にフェイバリットブローが宿って
しまったアイツでは無い。
その剣山を裏返しにして
四隅から足を生やしたような恰好。
その正方形さと足の長さの比率から
コタツを連想した。
四つん這いの状態
高さはざっと10m程度だ。
全長全幅は20mと言った辺りか
そんな地獄の巨大コタツが
例によって関節の存在しない
タコの足のような動きで
道幅いっぱいいっぱいで
えっちらおっちら歩いていた。
コタツ布団を求め彷徨っている
・・・・じゃないよね。
被害が無いのなら
ユーモラスに感じる動きだ。
足の下の空間は6m
胴体下部の針が2m
中央に仮面を付けた
平たい本体の厚みが2m
で合計の高さが10mだ。
マズい
バフ掛けまくりで暴走陣まで使用して
スパイクの長さは5m程度だ。
これでは
頭のゆるい女子となんとかいたそうと
粘るAV男優だ。
先っちょだけ
御願い
先っちょだけだから
届いたとしてもスパイクの
先っちょが胴体下部の針に
当たるか当たらないか程度だ。
致命傷は望むべくもない。
先っちょだけと言いつつ
全部ぶち込んでしまう分
AV男優の方がまだ
優れているではないか。
前回出会ったハンプティ・ダンプティ型が
対人追走用なら、今回のコタツ型は
集落強襲用だろう。
足元に来たらボディプレスだ。
それを繰り返せば集落を壊滅させる事が
出来そうだ。
俺がそう考えていると
仮面が俺を見た。
穴の中に眼球に当たる物は無いのだが
俺を認識した事が理解出来た。
その瞬間、コタツは歩みを止め
勢いをつける為しゃがむ。
20m四方の剣山が
ジャンピング・ボディプレスを仕掛けて来る。
先に回避すればそれに合わせて
ジャンプを調整するかもしれない。
散れば3人は助かるかもしれない。
ジャンプしてからの回避では
余程高く舞い上がってくれなければ
間に合わなさそうだ。
しゃがんだ瞬間にそれらが頭をよぎった。
俺は結論を叫ぶ。
「俺に集まれ!落とし穴で下に逃げる」
すかさずデスラーホールを
自分の足元に展開する。
間に合ってくれよ。
深さは4m、針が伸びたらお陀仏だが
それは無いと踏んでいた。
簡単に伸縮自在なら普段は仕舞っているものだ。
コタツはジャンプした。
意外に低い
でも間に合うもんね。
「あばよーとっつぁん。デスラーホール」
「下品な男は要らん」
ミカリンが嬉しそうに
被せて来た。
言いたかったのね。
俺を中心に光る魔法陣の中に
全員が居る事を確認した
が
俺は驚愕した。
プルの挙動だ。
一人だけ月面にいるかのような
動きだ。
エルフは個別に頭上に精霊がいて
エルフを全力サポートしている。
高所からの落下
それも風の力で補助し
彼等は完全飛び降り自殺耐性を有しているのだ。
ダークエルフも同様だとしたら
その落下耐性が仇になり
針の餌食になってしまう。
俺は咄嗟に手を伸ばし
プルを抱え込んだ。
その瞬間、魔法が発動した。
内蔵が体内で浮き上がる感触。
タマタマが縮みあがるのを感じた。
「キャ!!」
悲鳴はプルだ。
ミカリンもアルコも
俺の練習に付き合い
デスラーホールを散々味わっている。
一番人気のアトラクションだ。
馴れたモンで声など
もう出さない。
腕に引っ張られる様な負荷が掛かる。
予想通りプルも落下耐性を有していた様だ。
周囲が暗くなる。
コタツはもう頭上だ。
まだ明るい夕方の光を遮った。
マズい
感触からいって
落下耐性が勝ちそうだ
俺が重しで引っ張るより早く
針が襲い掛かって来る
この感触から
この
感触
本当なんです。
わざとじゃないです。
普段は
はい
わざとです。
いつも意図的に行っていました。
はい
はい
いけないと分かってはいるんです。
はい
ごめんなさい
はい
でもこの時ばかりは本当に偶然だったんです。
本当のラッキースケベだったんです。
指と指の隙間を柔らかく刺激する何か。
俺は
プルのおっぱいを
思いっきり
鷲掴みしていた。
はぁああぁぁっうああぁあ
やややわらっけぇへえええ
縮みあがったタマタマが瞬間的に
息を吹き返していく
離さなきゃ
バカ言うな
謝らないと
後ででいい
揉んでいいろうか
もう実行犯だ
何を躊躇う
まるで宙にういているみたいだ
まるでじゃなくて実際に浮いている
高速思考が開放されたようだ。
コタツがジャンプした時の数倍の速さで
俺は思考していた。
ミカリンが凄く冷たい目で見ているのを
感じる。
そんな事より優先事項は
迫る針への対処だろうが
考えろ俺
だめだ
柔らかい
考えられない
くそ
ピンチだ。
やわらか
いやもう死んでもいいか
はぁやわらかい
俺が固まっている間に
盾を構えたアルコが
俺と針の間に割って入って来た。
どうもアルコは常々俺の挙動を
監視というか注目しているようだ。
でなければ間に合うハズが無い。
落下中は移動出来ない。
落下する前のタイミングで
俺を庇うべく
地面を蹴っていたのだ。
キン!
鋭い金属音は
盾に針が当たった証拠だ。
空中で踏ん張る事は出来ないので
注射器の様にそのまま俺ごと押して来た。
受け身の取れない状態で背中から
落ちたが今度はプルの落下耐性に
助けられた。
大した衝撃は無かった。
それよりも続いて上に被さってきた
アルコの衝撃の方が痛かった。
「申し訳ございません!」
謝るアルコ。
「いやナイスガードだ」
本当に助かった。
しかし音からして
バングの針の硬さは相当なモノだと
推測できた。
それを相手にしてもキズすらついて
いないであろう大地の盾も
相当なモノだ。
「ミカリン!垂直にファイアボールを
打ち上げろ、脱出口を作ってくれ!!」
俺はおっぱいを掴みながらも
辛うじて残った冷静な思考で
ミカリンに指示を出す。
デスラーホールは
発動から5秒後に元に戻るのだ。
バングに穴を開けないと
ああ
今度はこっちから
針に特攻してしまう。
やわらかい
いつ離そう
いや
離したくない。




