第四百四十五話 ウリハル捜索隊セカンド
翌朝、それも日が昇り始めたばかりの早朝だ。
俺は欠伸を掻きながら指定された場所に連れられていった。
王城の裏、出入りの業者が使用する門
そこには何の変哲も無い標準的な馬車が一台停まっていた。
「「おはようございます。」」
聞いた事のある声だ。
知り合いなのか。
俺は寝ぼけた頭を急速に立ち上げ
半分閉じたままの瞼を擦りながら
待っていた人物を見た。
学園の制服では無く
普通の庶民の恰好になってはいたが
誰だか直ぐに分かった。
「おぉお前らかぁ、よろしくな。」
俺は挨拶を返した。
「大変、心強いです。」
男性の方が歩み出て来て握手を求めて来た。
ワインだ。
俺も笑顔で握手を受ける。
その横で深々を頭を下げる女性。
リキュールだ。
「毎回お世話になりっぱなしでスイマセン。」
「いや、お前らじゃなくてウリハルが問題なんだろ。」
この二人は幼少の頃から
影でウリハルを守り続けて来た二人だ。
ガルド学園に入学の際も当然
学園に入り影ながらウリハルをガードするハズだったんだが
俺の行動力とデタラメな広範囲のせいで
ギブアップしてきた経緯がある。
今思えば恨まれてもおかしくない。
怒って無いのだろうか。
「それにしても、本当に大人だったのですね。」
「子供に化ける魔法・・・あっ秘密なんですよね。」
学園滞在時は呪いのせいでチンチクリンだった。
それが解除された今は宮本たけし姿なのだが
事前に聞かされていた事もあって
二人は違和感少な目で俺を迎えてくれた。
「知っている人の間ならいいさ。」
ウリハル失踪。
宴の最中にもたらされた情報
表向きは平穏を保ちつつも
王家は裏ですったもんだだった。
俺はなんとなく想像がついていた。
ウリハルの目的と
俺に降りかかる依頼の二つだ。
なので今は、ゆっくりと料理を味わい酒も頂き
早目に就寝した。
寝る前に「何でも協力するから今夜は寝かせろ」と
セドリックの執事に告げておいた。
夜の内に極秘も極秘でお忍びの捜索隊が編成され
しっかり俺も面子に組み込まれていた次第だ。
その事は予想出来たので驚かなかったが
まだ暗い内に俺の部屋で
その依頼をして来た人物には
少々驚いた。
エロル・セドリック・ガバガバ
そしてウリハルの影武者の四名だったのだ。
四人とも目の隈がスゴイ
寝ずに思案、打合せ、手配とこなしたのだろう。
苦労が窺える。
ウリハルの影武者には一番驚いた。
帰って来たのかと勘違いする程似ていたのだ。
だが、話すと別人と分かった。
「あの声は・・・・流石に・・・。」
影武者に罪は無い。
あんな変な声、二人といるものか。
この四人は
行けるモノなら自分が行きたいと
最も強く願う四人だったのだろう。
しかし、皇族と言う立場と
姫が失踪などとは平時でも言えない。
ましてやこんな時期だ。
国内の混乱を避ける意味でも
他国に隙を見せない意味でも
皇帝一家は安定していてもらわねばならない。
外せない公務だってある。
申し訳なさそうに
かつ真剣に頼んで来る四人に
俺は二つ返事で快諾すると
四人は拍子抜けしたように安堵した。
安堵すると
その次は怒涛の感謝ラッシュだが
俺はそれをせき止めて言った。
「俺なら、あいつを探すのは簡単だ。
ちょっと特別な手段がある。
直ぐ連れ戻すから少し寝てろ。」
身支度をしてから執事に同行者の説明を受け
案内されて、今だ。
「さて、時間が惜しい。
準備が出来ているなら直ぐ出発しよう。」
俺がそう言うと
二人は困った様子で答えた。
「それが・・・馬車の準備は出来ているのですが・・。」
「後、1人同行者が来ると今しがた急に告げられまして・・・。」
俺以外の誰だ。
そう聞いても誰なのかまでは
二人にも知らされていないとの事だった。
俺を案内した執事も首を横に振るばかりだ。
参ったな。
誰だか分からんのじゃ
呼びに行く事も出来ない。
もう一回寝るか。
俺は馬車の客室、ベンチシートに横になった。
目立つのは厳禁だ。
なので最小限の人数に絞るハズだ。
能力的には俺は最善だろうが
バリエアの地理や常識などで不都合が生じる可能性大だ。
それを補佐し、この問題に関して
機密を保てる人材となれば
ワインとリキュールは適任だ。
となれば
その急に決まった追加の1人は何なんだろう。
そんな事を考えていると
そのもう一人が現れた。
「待たせて済まない。
こちらも急だったモノでね。
これでも最速で準備したんだ。」
これまた聞いた声だ。
「なんだ、お前か。」
俺は馬車の窓を開け
遅れて来た人物にそう声を掛けた。
「ゲェッ!!!お前は・・・。」
大袈裟に驚く男
のけ反った際にロンゲが揺れる揺れる。
ディーンだった。
「おいおい、コレ俺要らないだろ。」
聞いて見ると
危険な旅になる可能性が高いので
護衛を依頼されたとの事だ。
「この世で一番危険な奴が
すでに同行しているじゃあないか。」
呆れた様にそうボヤくディーン。
失礼な。
俺は安全だぞ。
変態かも知れんが




