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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第四百四十一話 待ってて摩天楼

エラシア大陸の西端

神聖帝国バルバリスの首都バリエアは

かつての降臨の際、地震と津波で壊滅した。

当時の皇帝も教会の最高指導者も失う大災害だ。


当時、皇太子であったエロル・バルバリスは

幸運にも新大陸への遠征中で

その難を逃れていた。


遠征先で亡国の危機を知ったエロルは

急ぎ帰国し戴冠式もそこそこ

一大復興事業に着手した。


新皇帝の指揮の元、欠員を補充した

9大司教は他国の力も借り

僅か十数年で首都を新たに築き上げた。


この世界で一番大きいと言われる建築物

王城は城壁に囲まれ、その周囲は堀で守られ

高低差も相まって騎馬では侵入不可能だ。


城下町の規模もベレンの数倍

その街も高い外壁に守られていた。

この城下町はいわゆるアップタウンで

貴族とそれに連なる者達が生活している。


対してダウンタンは壁の外側で

流石にここまで広がると

壁では覆えない。

一般人が暮らしていて

農地や工場なども存在していた。


ダウンタウンと言っても

スラム臭は全く無く

なんとも健全な状態だ。


クワンから聞いたが

憲兵が組織されていて

秩序を乱す要因になるモノは

徹底的に排除されているそうだ。


ベレン同様、入りやすく隠れ難い仕組みだ。

要は悪い事さえしなければいいので

敷居の高いトコロでは無く

復興の一大事業につぎ込まれた

金額に見合って人も大勢集まる事になった。


ドワーフの技術を駆使して

新設計された都市は

野ざらしの荒野からスタートが

不幸にも幸いしてインフラとしては

見事に整った環境になっていた。

後付け増設の繰り返しで

二進にっち三進さっちもいかなくなった

某国の首都高速とは大違いだった。


二車線と二車線が合流して二車線だ。

渋滞するに決まっているだろ。


ここまで聞くと防衛に関しては

市民街が被害になりそうな気がするが

実はここまで戦線が伸びて来るとは考えにくい体勢だ。


首都から離れると草原が広がるが

南側の山脈から川が陸路を分断していて

その川向こうに砦を擁する大きな軍事拠点が

山の麓と海側と、その中間の三か所ある。

陸路を進軍すれば必ず挟み撃ちされる格好だ。


山を行くには大群は移動出来ない難所だ。

船で海を進むのが最適だが

もっとも造船技術に長けたヒタイングは

既に吸収済みで心配は無い。

他の国が強力な海軍を所有しようと試みれば

一朝一夕にはいかない。

戦力が整う前に必ずパウルの影が

情報を伝え、何らかの圧力を掛けて牽制する事が可能だ。


防衛は盤石の構えと言っていい。


更に新しい事もあって

どの建物もピカピカで統一感がある。

大理石を基本とした石造りは

潔癖で荘厳な雰囲気を醸し出していた。


とても酔ってゲロをぶちまけられる環境では無い。

すんごい清潔感だ。


城の最上階

天に一番近い場所、スカイスクレーパー。

祭壇としても使用される、その部屋で

俺は城下町から、その先の砦まで見える絶景を

目にして言った。


「ダメだ。こりゃ」


自慢の都市だ。

自信満々で腕組みをして、ふんぞり返っていたエロルは

俺の言葉にズッコケた。


「へ陛下!!」


慌てる侍従長その他は狼狽えた。


「っつとぉ、魔勇者殿、何がダメだというか。」


素早く立ち直るエロル

いくつだか知らないが身体能力は若者の様だ。

身軽な動きをする。


「陛下、その前にお人払いを・・・。」


離れた位置で跪いていたテーンが

俺が返答する間もなく

即、そう言った。


「あー、良いだろう。シキ嬢以外は下がれ。」


頭も悪く無い。

テーンの言葉から極秘扱いの

竜の案件である事は察しが付いたようだ。


「お言葉ですが陛下!」

「いくら凡庸な平民とはいえ危険でございます。」


食い下がる侍従長以下


おいおい

俺が魔勇者というのは

どうも信じられていないようだな。

まぁ魔勇者自体が一般的に知れていない存在だからな。


「私が平民に遅れを取ると?」


テーンが眼光鋭くそう言った。


「いえいえいえトンデモナイ。」

「万が一でも可能性があっては・・・。」


慌てふためきながら弁明を始める侍従長以下

俺はその背後でテーンを挑発すように

カモーンって音を立てない様にジェスチャーした。


折角の精悍なキメ顔が一瞬揺らぐが

騎士の根性で噴き出さず封じ込めるテーン。


ちぃやるな。


「下・が・れと言ったのだぞ・・・。」


声のトーンを一段階落として

エロルはゆっくりとそう言うと

蜘蛛の子を散らす様に侍従長以下は

謝罪をしながら撤退していった。


俺も合わせ出て行こうとしたが

テーンに襟首を掴まれ阻まれた。


すんごい握力だ。


「面白い男だとは聞いていたが

想像以上の様だな。」


エロルは気を悪くするどころか

むしろ上機嫌でそう言った。


俺は俺の噂を

誰がどんな風にエロルに伝えたのか気になった。


「テーン。陛下にドラゴン種の説明は」


「私が知っていた内容までしか・・・。」


食人の件は知らないと言う事か。


「ど・・・ラゴン、そう呼ぶのかね。」


「陛下、魔勇者殿はドラゴンに関しての知見をお持ちです。

そしてネルドでも戦闘経験がお有りで・・・。」


テーンはそう切り出して

俺の教えたドラゴン種の説明を

エロルに始めた。


そしてワイバーンの説明の辺りでエロルは叫んだ。


「何と!それでは侵入を防げないではないか。」


「だからダメだこりゃ と」


今、俺達が居るスカイスクレーパー

俺がワイバーンなら真っ先に標的にする。

ここがぶっ壊れれば

その瓦礫が落ちるだけでも下の被害は甚大だろう。


「どうすんだーっ建てちまった後だぞーっ」


この陛下

たまに陛下っぽくない。


「防空体制を構築すべく魔勇者殿の

お力を借りるべきだと愚行する次第であります。」


テーンはエロルにそう申し出た。


「良いアイデアはあるのかね。」


ヴァサーが守ってる以上

ここまで飛来するとは思えないが

バルバリスに忠誠を誓う騎士では無い

悪魔サイドにより重要な事件でも起きれば

気軽に放棄するだろう。

やはりここは魔王抜きでも

戦える体制にしておいた方が良いだろう。


「無い。この塔を守り切るのは不可能だ。」


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