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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第四百三十九話 青春ドロップキック

「真の姿は、確か・・・もっと、こう

何と言うか、凛々しいお姿だったような・・・。」


「回りくどいぞテーン。一言

こんなブサメンでは無かったと

言ってやるがイイ。」


そうか、この二人には

冒険者ゼータ姿でそう言ったんだっけな。


「真の姿は人目を引き過ぎる。

隠密活動には向いていないんだ。」


「成程、確かに。」


「うむ、リディ坊やが無駄な人生を歩んで

そのまま年を食ったような冴えないその姿には

誰も注目しない程、見るべきモノが無い。

お忍びにはもってこいと言うワケだ。」


深く頷いて感心する二人。

防御担当より攻撃担当の方が

当たりがキツい。


それにしても人気無いな

本当の真の姿、宮本たけしは


「私は、どちらの姿も

それぞれ違った魅力があると思いますよ。」


姫様ーっ

言うて下さるか。


関所付随の騎士団の詰め所

そこの殺風景な大部屋で話は事の発端となった

キャラバン壊滅から始まった。

唯一の生き残りとなったディーンは

俺に語った襲撃の様子を再び説明した。


ディーンの身分を証明するモノが無いが

話の内容と先程の剣の腕前から

冒険者に雇われたサイドキックを疑われる事は無かった。


「よくぞ生き延びてくれました。陛下に替わり

労いの言葉を送ります。」


ディーンを労うウリハルに

周囲のライデン以下は

牢にぶち込んだ事を咎められはしないかと

内心ヒヤヒヤしているのが

漏れて来る感情から分かった。


「いえ、自分にもっと力があれば・・・。

無念でなりません。」


正直に本心を言うディーン。


そして先程の先頭で親玉が討たれ

メタボ問題は完全決着した事を

俺は説明した。


「バングの時といい、この度もまた

魔勇者様に助けて頂いたのですね。」


バングに関しては

相手側が既に終わっていたので

放置でも支配種ドミネーター権が失われる事は無かったかも知れない。

まぁ被害を減らした事は間違い無いので

遠慮しなくてもイイか。

しかし、全滅とは言えない。

バング側の重要戦力0型の一体が

バッタ怪人として残存しているのだが

使用者がこちら側の司教なので

これもあえて言う必要はないか。


俺は素直にウリハルの賞賛を受けた。


「まぁな、ついでだ。」


俺は国を救うなどと

そんな大層な大義名分で動いていたワケじゃない。

目の前に助けが必要な人が居て

何とかしてあげたかっただけだ。


「ハッ!ついでにで救世主か。流石だな」


嫌味で無く本気で感心してクワンはそう言った。

憧れの感情も漏れていた。


姫であるウリハルと

騎士の名家であるシキとキニの者が

揃って賞賛している。

これもまたライデン以下に緊張を増加させた


俺も牢にぶち込んだからな。


「済まない、少し用を足しに席を外させてもらう。」


王家や貴族に馴れていないせいか

緊張から消化器官に影響が出たのか

ディーンはそう申し出て来た。


「あ、俺も行くわ。」


関東出身の俺も

御多分に漏れず連動した。


「ふぅうう出る出る出る。」


俺達はそう言いながらたっぷりと放尿した。

ここのトイレは間隔が広めで

何かを引っ掛けて置けるフックが

アチコチにやたら設置されていた。

騎士の装備の為だろう。

排泄行為に及ぶ際にきっと便利だ。


「若いとは言え、やはり王家の人間

纏っている気が違うな。」


ディーンは気圧されていた様だ。

俺は呑気に答えた。


「ああ、声からして普通じゃないよな。」


人の耳では捉えられない域の

高周波も混じってそうだ。


「ソレ・・・言うなよ。縛り首になるぞ」


洋服越しとは言え、イチモツをニギニギさせた時は

本当に殺されるかと思った。

この体で無ければ死んでいただろう。


「ああ、ここだけ話さ。」


どこでもそう言ってます。


用を足し終えて外に出ると

待ち構えていたいた人物がいた。

テーンだ。


「リディ殿、少しよろしいだろうか。」


「先に戻っているぜ。」


テーンの言葉を聞き

気を利かせるようにディーンはそう言って

スタスタとその場から離れて行った。


「何だ、用を足すのに鎧を脱がして欲しいのか。」


勿論、冗談だったのだが

テーンは真っ赤になって抗議して来た。


「ばばば馬鹿者!そんな事を貴殿に頼むモノか」


イイんですよ。

頼んだって。

そう言おうかと思ったが

コレ以上は本当に殺されるので止めて置いた。


「・・・ネルド一件はご存じか?」


気を取り直して真面目な表情に戻ると

テーンは声のトーンを落として

そう聞いて来た。


「ネルネルドまでもが同種の敵に壊滅状態だよ。」


俺も同様に声のトーンを落として

そう答えた。


「やはり周知か、その事なんだがバリエアでは

まだ一部の者しか知らなく、箝口令が敷かれている。

上層部の判断待ちだ。どうか他言無用でお願いしたい。」


ここで更に声のトーンを下げて

テーンは顔を近づけて囁いて来た。

俺は思わず匂いを嗅ごうとしてしまう。


「特に姫様には絶対知られたくない。」


うーん、無臭だ。

何だって?


「さっきの連れションの奴には言っちまったぞ。

ライデンその他にはメタボの話だけだ。」


「そうか、私からも釘は刺して置くが

リディ殿からも改めてお願いしていてだけないだろうか」


すんごい顔近いのに

テーンには嫌がる様子が無い。


どの位近づけるんだろう。


俺は植物の成長スピード(イメージです。)で

最接近記録に挑戦してみた。


「ああ、分かった。で

何かご褒美は無いのか。」


どんどん近づく俺。

気のせいかテーンは頬を少し紅潮させている様に見えた。


「えっ?ほ褒美か、私はには埴輪庭鰐」


キョドってバグり始めるテーン。

翻訳機能も面白い変換をするんだな。

それにしてもカワイイ。

普段は凜としているだけに

砕けた時のギャップは破壊力抜群だ。


「ちょっとジッとしていればいい。」


俺はそう言って更に顔を近づけた。

テーンは何か口を波線みたいに

力んで閉じ、目を瞑った。


イケる!


そう思った時に物凄い衝撃が俺達を襲った。


「抜け駆けしない協定破りは死刑ーだーっ!!」


廊下を全速力で駆けて来たクワンのドロップキックが

テーンの横顔に炸裂した。

顔を近づけていた俺も被害を被った。


ドロップキックは

飛ぶ事より

当てる事より

何より放った本人が落下する際に

床に叩きつけられるダメージを

如何に最小限にするか

キレイな受け身が出来るか

一番難しい。


蹴り飛ばされ、宙に浮く俺の視界に

空中で体を綺麗に180度反転させていく

クワンが見えた。

あれなら背中を強打し呼吸困難に陥る心配は無い。


上手いな。


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