第四十四話 ダークエルフ
「よりにもよって、こんな
目出度い日に」
珍しく怒りを露わにするプラプリ。
「いや丁度良かったぞ」
俺のセリフの意味が分からないと言った
様子のプラプリ。
「攻撃魔法の使い手はいるか?」
多いに越した事は無い。
「攻撃魔法?・・・一人だけ
居るには居るんだけど、意味が無い
弓の方が飛距離も破壊力も上なんだ」
「バング相手に限っては別だ
あいつら魔法が弱点なんだ」
「どうしてそんな事が言えるんだい」
聞いた事が無いのだろう
にわかには信じられないと言った
表情になるプラプリ。
「ここに来る途中で試した。
既に一匹片づけてるんだ。
てなワケで俺達に任せろ。
念の為、その使い手も
呼んで来い」
俺達がここを発った後は
そいつが頼りになる。
ここで経験しておいてもらおう。
「君ってやつは、本当に・・・。」
天を仰ぐ様な仕草で
クラクラし始めるプラプリ
「ベアーマン襲撃、里の崩壊
そしてバング。ずっと助けられっぱなしで
何も恩返し出来て無いよ。」
「イイじゃねぇの救世主なんだろ」
俺達のやり取りにヤキモキが限界に
来た様子の伝令。
「里まで、まだ距離はありますが
お急ぎを!」
その通りだ。
俺達は伝令について大広間のある
建物まで移動した。
入り口に近いテーブル
せっかく出来た料理を一旦除けて
伝令は地図を広げた。
「今、この位置です。」
俺達が通って来た獣道ではなく
馬車も通行出来る道沿いだ。
この道は北側の港町ヒタイングに
繋がっているそうだ。
海か
そういえば行って無かったな
ベレンとは反対方向だ。
うーん
いつか行こう。
「里を目指しているの間違いないのか」
プラプリは念のための確認を入れる。
来なければそれに越した事は無い。
「道どおりに移動しております
このままですと、間違いなく里まで」
この前会ったやつもそうだった。
バングは道を丁寧に歩く習性でもあるのか
知的生命体をターゲットにするなら
なるほど、道を歩いていれば出会うだろうな。
「里長!呼び出しに応じ馳せ参じました」
そう言いながら一人の女性が入って来た。
俺はその姿を確認すると
狂喜乱舞した。
エルフだ。
いや
エルフって言っても今までの
性の対象にならないこの世界のエルフでは無く
オークに蹂躙されるタイプの
いわゆる普通のエルフだ。
おっぱいがあるぞ。
これは例のダークエルフさんってやつか
より動物的な変化を遂げたエルフの亜種
会いたかったぞ。
わーい、やっぱりイイぞ。
体格の細さと不釣り合いな巨乳だ。
弓引くとき邪魔になりませんか。
「アモン。彼女が例の攻撃魔法の使い手だ」
プラプリが紹介してくれた。
「プルと申します。救世主様の
足手まといにならぬよう尽力致す所存にて」
なんか変な風に堅い人だな。
「前任の長は・・・その・・・」
ダークエルフを快く思っていなかった。
差別とかその辺は大丈夫なのか。
「見ての通り、彼女はダークエルフだけど
新しい里では分け隔てなく仕事で
評価するよ。彼女は優秀だ。」
「長・・・。」
プルがウルウルしながら
プラプリを見ている。
うーん、これもおっぱい掴まない方が
良さそうだ。
「それを聞いて安心した。
俺から見ればエルフもダークエルフも
同じだよ」
「ありがとうございます。
ただ・・・その私の魔法は
お世辞にも強力とは言い難く・・・。」
プルは申し訳なさそうにそう言った。
「その辺も今回検証してみようと
思っているんだ。」
俺はここに来る途中で倒した
バングの話をした。
「つまり、魔力を含んでさえいれば
硬い表皮を簡単に貫けると?」
顎に手を当てプラプリはそう言った。
「そうだ。魔法そのものの強弱で
変化が出るか見たい。」
複数で当たる必要があるのだ。
前回は調子こいて一人で倒してしまった。
俺はストレージから簡錫を取り出すと
ミカリンに渡す。
「なので、今回の主力はミカリンね」
「OK。もし火が効かなかったら
替わってよね」
そうなんだ。
もしかしたら土系の魔法しか
効果が無い可能性もある。
「長!準備完了です。出せます」
入り口から完全武装したボーシスが
そう言って入って来た。
「ようし行こう」
俺達は表に出ると
複数の馬車に乗り込み
里の門から街道に出た。
「えー鎧着ちゃダメなの」
鎧を着ようとしていたミカリンを
俺は止める。
「魔法メインで戦うならな」
俺はミカリンに魔法効果の仕組みを
ざっと説明した。
特別な種類を除いて金属は
魔法の妨げになってしまうのだ。
「分かった。うーんなんか落ち着かないな」
いかにも戦士系の感想だ。
重く硬い金属は命を頼もしく守ってくれる
そんな実感があるのだ。
鎧さえ着ていれば何でも無い攻撃も
布の服だけでは致命傷だ。
「そんなワケで盾はアルコに渡して
アルコは防御優先でバングの注意が
ミカリンから逸れるように威嚇を」
ミカリンから大地の盾を
受け取りながら頷くアルコ。
「はい。わかりまし・・・きゃあ」
「おぉわ」
ビックリする俺とアルコ。
盾はアルコが装備する瞬間
大きくなった。
丁度ミカリンとアルコの体格差に
比例してアルコ用のサイズになった。
流石は天使の装備。
普通じゃない。
「ああ、それそいうモンだから」
あっさり言うミカリン。
先に言って置いてくれよ
つか
他にも言ってない何かが
あるんじゃないのか。
「見えました!!」
その叫びに合わせて馬車が減速していく。
「よし行くか」
三半機関とプルがバングに当たり
残りの軍勢は万が一の時の為に
後方で待機だ。
停止すると俺達は馬車から飛び出す。
街道の先に確認出来るバングを見て
俺は叫んだ。
「なにアレ?でけぇ!!」
そう言えば大きさはまちまちだって
言ってたっけなぁ。




