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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第四百三十七話 今度こそ決着

上半身と下半身のそれぞれの切断面

そこから溢れて来たのは

カイカイの血でも臓器でも無かった。


不自然に急成長する葡萄の様なモノは

見る見る大きく膨れ上がり

遂には分離して次々と転がっていった。


メタボだ。


「私だってねぇ!好きでこんな体になったんじゃあないんですよ!!

増やしたく無くても勝手に増えてしまうのです。」


まぁメタボってのは

そう言うモノだ。


そう叫んで狂った様に笑い出すカイカイ。

その間にもメタボは生産され続け

出来上がった順から動き始めた。


「なんだこりゃああああ!!」


「これが噂のメタボだよ。

ベレンを酸の地獄に変えた魔物だ。」


俺は火球ファイアーボールを連発して

襲い掛かろうとするメタボを手あたり次第焼いて行った。


「こいつらは斬れば死ぬ。

でも死体にも注意しろよ。

酸を帯びているからな!」


「承知!!」


気を取り直したディーンは

ミライを流れる様な連続動作で振り

次々と斬っていった。


「斬って死ぬなら怖くないさ。」


死ぬ。

その認識も正確には正しくないだろう。

こいつらは生き物では無かったのだ。

学者連中が何の種類なのかも分からないと

頭を抱えるワケだ。

あらゆる疑問の答えが

今、目の前で実証されていた。


体内で生産出来るカイカイは

わざわざボンベに詰めて背負う必要は無いのだ。

そしてカイカイだけならば

環境の最適化は必要無い。

他の連中にとって必要だっただけだ。


ここからは確証の無い推測だが

恐らく他の市民、四天王の仲間ですら

カイカイが作ったのだろう。

このメタボが成長した姿が

あのカエル人間達なのだ。


カイカイは1であり全でもあるのだ。


激しい怒りを持ちながらも

やけっぱちの特攻では無い

折角、育てた市民が全滅しても

カイカイさえ残っていれば

またやり直せるという事だ。


「そうと分かれば!」


俺はカイカイに悪魔光線を叩き込んだ。

これで終わりだ。


しかし、そうならなかった。


「何ぃい?!」


悪魔光線は倒れたままの

カイカイAパーツに命中した瞬間

威力を弱体化させ、あらぬ方向へと反射したのだ。

そしてその反動でカイカイAパーツは

ホッケーのパックの様に

弾かれ回転して宙を舞った。


「ぐおあっ!!その攻撃は痛いです。」


あのヌメヌメした表面に秘密があるのか

その下の粘膜そのものにも何か細工があるのか

とにかくカイカイの体には悪魔光線は絶対では無い。

セリフを信じるなら多少のダメージは入る様だ。


思えば

母船の破壊も悪魔光線で行った。

その中をカイカイは生き延びたのだ。


これは厄介な相手かも知れない。


対策をゆっくり考えたかったが

増え続けるメタボの処理にそれどころでは無くなった。

俺もメタボ処理を優先したが

ディーンと二人掛かりでも

メタボの増殖するペースの方が上回っていた。


「何であんな小さな体躯に

これだけの魔物が入っているんだ?!」


当然の疑問だが

今はどうでも良く無いかディーン。


時空系を使用しているフシは無い

これも恐らくカイカイの体の一部は

ごく小さな粒しか使用していないのだろう。

何かしら外のモノを利用して

生成されているのではないだろうか。


信じられない位にワカメは増えるしな

この位は食うかなと

乾燥状態での量を食べる量に見積もって

鍋にぶち込んで

味噌汁が台無しになった事がある。


これこそ

今はどうでも良く無いか俺。


「我らが剣に神のご加護を!!」


背後から声が聞こえた。

関所詰めのライデン隊長率いる騎士団だ。

この騒ぎに気が付いて加勢してくれる様だ。

押されていた流れが

一気に逆転し押し返し始めた。


渡したガラス製の盾のお陰で

惨劇は避けられたが

武器の方は数匹斬るとナマクラと化した。

勢いは初めだけで

再び流れはメタボの方に傾いて行った。


次第に劣勢になって行き

負傷者も出始めた。


ええい

面倒くさい。


ディーンに花を持たせようと

似合わない事を考えたのが

間違いだった。


俺は怒り心頭だ。

もうここからはいつも通り


ただの力押しだ。


「うおおおおおお壁壁壁壁」


酸以外にメタボ達に攻撃力は無い。

俺は土壁を連続詠唱し続けた。


突如として地面から大量に生えて来た壁は

メタボと俺達の間を頼もしく遮った。


「・・・助かった。」

「スゲェ!!」

「何と?!土系魔法か?」


安堵し膝を着く者

ただ驚く者

反応はそれぞれだったが

常にまとわりついていた死の恐怖から解放された。

騎士団及びディーンは一息つけた様だ。


「しかし、これでは倒す事には・・・。」


ディーンは苦言を呈したが

俺は無視して

つか

呪文中だ。


まぁ見てろ。


土壁は円形にメタボを溢す事無く取り囲んだ。

そうしてからは次第に中心部に迫る

波の様に内側に発生して行き

とうとう中心部付近はメタボでビッシリだ。


その状態を確認した俺は

悪魔男爵バロンに変化すると

中心部の上へと飛んだ。


「むぎゅう・・・何ですかこの壁は?」


メタボに埋もれて視認出来ないが

カイカイもバッチリ入っている。


「囲って隙間が無くなれば

素人でもウナギを掴めるのさ!!」


「「何を言っているんだ??」」


壁の中と外の全員から

そう突っ込まれた。


いいやもう撃っちゃおう。

命中している時間が長ければ

致命傷になってくれるだろう。


鋼鉄アイアン処女メイデン!」


不吉すぎる呪文故封印していたが

メタボ相手なら良いだろう。

俺は禁呪(当社規定による)を放った。


想像していた通りの魔法だった。


鋼鉄の棺桶

内側にはビッシリとスパイクが生えている。

巨大な拷問器具が中心部の地面から

メタボ達を掬う様に伸びて来て

嫌ーっな金属音を立てて閉じた。


悪魔が宙を舞い

巨大な拷問器具が

メタボを飲み込んでいた。

目の前のあまりにも

常識から離れすぎた出来事に

騎士団達は声も出せなくなっていた。


「悪魔光線!!」


俺は直上から鋼鉄アイアン処女メイデン

継ぎ目を狙い撃った。

狭い範囲で長時間照射だ。

見事、継ぎ目を貫通した悪魔光線。

見る見る内に鋼鉄アイアン処女メイデンは真っ赤に

輝き出し、直ぐに溶けた。


数万度の蒸し焼きだ

光線は弾いてもコレは只では済むまい。


俺はセンサー系を稼働させ

カイカイが生き残って居ないか確認したが

溶けた鉄と炎しか感知出来なかった。


勝った。

今度こそ勝った。


「喝采せよ!!」


俺は叫んだが

誰も乗って来なかった。


みんな本気で怯えていた。


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