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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第四百三十四話 瞳そらさないで

街道の周囲の木々を吹き飛ばし

大岩までもが蹴鞠の様に宙を舞った。

その半分だけの爆風はキャラバンの前方で

何の前触れも無く発生した。

馬はいななき暴れ、御者も騎士も

目の前の突然の出来事に言葉を失った。

あと少し進んでいればキャラバンが

その爆風に巻き込まれていたのだ。


その幸運に皆は神に感謝を捧げた。

しかし後になってみれば

その爆風で死んだ方が

苦しまない分まだマシだったのだ。


「許さんぞぉおお下等生物どもめー!」


燃焼可能な物には全て火が点いた。

その火炎地獄と化した目の前の街道に

仁王立ちになり叫ぶ者がいたのだ。


「あのまま全力で引き返せば・・・

いや、散り散りに逃げていれば

助かった奴も居たんじゃないかな。

後の祭りだが・・・。」


それは対象が危険なモノだと

認識出来たからの発想だ。

何も知らなければ

救助に向かってしまうのも仕方が無い。


俺はそう言ってディーンを慰めたが

焼石に水のようだ。


火炎地獄の中、佇む人型の物体は

キャラバンに気が付くと

猪突猛進で襲い掛かって来た。

勇敢にも炎の中へ救助に向かおうとした

騎士と司教が最初の犠牲者になった。


「あれは酸だったのかな。

そいつが指さすと、その先から

強力な水鉄砲が発射され

それを浴びたモノは人でも馬でも

何でも溶けちまった・・・。」


炎の中から現れた敵は

どう見ても人間では無かった。

全身が金色で光沢に覆われていたが

その光沢は所々途切れ、その下の皮膚

というか粘膜は焼けただれていた。


「妙なんだ。爆風で攻撃するのかと

思いきや、そいつ自身も爆風でダメージを

負っていたように俺には見えた。」


すいません。

仕留め損ねました。


その時点で相手を敵だと認識したディーンは

愛刀を手に一足飛びで居合の間合いまで

飛び込むと油断しきっている相手に

必殺の居合を叩き込んだ。


「必殺の間合いだった。

しかし手応えは、かつて味わった事の無い感触だった。」


相手の右脇の下から左肩上まで

軌道は淀む事無く一気に通過した。

相手は飛び込んで来たディーンを

目で追うのがやっとの反応だった。


「刀が・・・刀身が無くなっていたんだ。」


振り切った際に感じた異常な得物の軽さ

目に入ったのは短い金属片が

ブーメランの様に回転しながら飛んで行く光景だ。


相手の体に触れなかった切っ先部分だったのだ。

触れた場所は瞬間に溶けてしまったのだ。


「何ですか今のは?」


カエルが人型になったようなその生き物は

そう言ってディーンを睨んだ。


「体格は・・・子供程度だが

声は大人だった。目はカエルのそのもので

ええと・・・。」


その瞬間に恐怖のマントに包まれたディーンは

逃亡に全てを掛けた。

生存率を上げる為

速度を少しでも上げる為

刀も鞘も投げ捨て、炎の合間を

全力で駆け抜けた。

背後で聞こえ始めた大勢の人の悲鳴からも

ディーンは振り返る事無く全力で走って。

逃げたのだ。


「ハハ・・・そんなんで。

容姿を詳しく思い出せないな。情けないぜ」


「いや、良くぞ生き残った。」


涙を浮かべてお道化るディーンに

俺は真顔でそう言った。


「お前が出会った相手はな、メタボの親玉だ。」


「メタボ?手も足も無い丸い肉塊の様な魔物では無かったぞ。」


「だからソレ下っ端な。そいつらの親玉なんだよ。」


「な何でも溶かしちまうワケだ・・・。」


俺は先にディーンにメタボの知識を尋ねた。

ディーン自身は遭遇経験が無く

冒険者やキャラバンの騎士達から

噂程度に聞いていたようだ。

俺は間違っている箇所を訂正しながら

メタボ壊滅の内容を説明した。

荒唐無稽な話だったが

実際に遭遇しているディーンは

茶化す事無く真剣に聞き行っていた。


「というワケで仕留めたと思い込んでいたんだ。」


「お前・・・何者なんだ。」


おふざけタイムは終了だな。

俺は返事替わりに冒険者ゼータ姿にチェンジして

ついでに悪魔光線で牢の扉を吹き飛ばした。


「げぇえええええええええ!!」


ディーンのあまりの良いリアクションに

俺はつい噴き出してしまった。


さて

相手は間違い無くカイカイだ。

確かそんな名前だった。

これから奴はどうする気だ。

俺はディーンから聞いた話を踏まえ

自分が奴だったらどう動くか考え始めた。


俺の攻撃で自分の母船が爆発した。

その時の何かの弾みでココに出口がずれて

放り出されてしまったのだろう。

キャラバンは憂さ晴らしで攻撃された感じだ。

その後取るべき行動は・・・。


まず負傷の手当てだな

そうしてから

他にも母船があるなら救助を要請し

帰還してしまっている可能性がる。

その場合はすぐに攻めては来ないだろう。

俺とユークリッドに軽くボコボコされたのだ。

大戦士の量産でもしない限り勝機は無い。


母船がもう無い孤立無援だった場合は

捨て鉢の特攻だろうな。

その場合目指すとすれば・・・。


「何事だ!!」


看守でなく関所詰めの騎士達が

牢屋の前に数人なだれ込んで来た。

悪魔光線での爆発だ。

ただ事出ないと判断したのだろう。


「誰だお前は?!何の特徴も無い

冴えない男はどこに行った?!」


殺すぞテメェ。


急いだ方が良い

説得するより諦めてもらおう。

俺は宮本たけし姿に変化してやった。


「ま・・・魔法か?!」

「バ・・・馬鹿なここでは魔法は」


俺は返事代わりにスパイクで

扉以外の鉄格子を破壊した。

強度的にスパイクの方が弱いので

へし折れながらも

質量と勢いで鉄格子を

書き損じた原稿のようにグシャグシャにした。


「わぁ!!」

「ヒィ!!」


俺は悪魔男爵バロンに変化し

騎士達の前で胡坐をかいて座り込み言った。


「俺からは何もしない。

牢に放り込んで見ろ。

諦めたら話を聞け。」


オーラは抑えたのだが

騎士達は震えあがっていた。

互いに顔を見合わせどうするのか牽制しあっていた。


「我が剣に神のご加護を!!」


1人の騎士が声を震えながらも

そう叫ぶと、他の騎士達も抜刀し

俺に襲い掛かって来た。


5分くらいかな


俺の目の前には折れた剣と

息が上がってOTL状態で

オリジナル俺の話だと今は誰も言わないらしいが・・・。

とにかくOTL状態で這いつくばっている騎士達が居た。


「は・・・話を聞こうじゃないか。」


1人だけちょっと装飾が豪華な騎士

多分こいつが隊長なんだろう

そいつがそう言うと

俺は宮本たけし姿に戻って立ち上がった。


「あーディーンの言う事は本当だ。

敵はメタボの親玉だ。

ここに攻めて来るかも知れんぞ。」


「メタボ?」


そう言って顔を見合わせる騎士達。

首都の騎士には話が行っていないのか。


「め・・・メタボだと?!」


そんな中、隊長だけは反応があった。


「知っているのですか!ライデン隊長!!」


俺は思わず吹き出してしまった。


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