第四十三話 プリプラのその後
大き目の石が幾重にも積まれ
壁となり木を二重に囲んでいた。
この石もカルエルが運んだそうだ。
壁の外から火矢は届かない恰好だ。
唯一の長樹木だ。
警備はいくら厳重でも足りないくらいだろう。
この里一番の聖域なのだ。
警備の者達は、一様にプラプリを見ると
礼をして道を開ける。
ノンストップで最終防壁の内側
木の元まで辿り着いたって
でけぇえ
確かに14年経ってるから
木も成長はするだろうけど
それにしてもでけぇ
階段替わりの蔦が螺旋状に絡みついた
前回の里の入り口の樹木と同じくらい
でかくなっていた。
俺はプラプリの方に振り返った。
プラプリはどうぞとジェスチャーで促す。
会話は接触しないと行えないのだ
あまりの厳重警備に気軽に触れるのは
躊躇われたのだ。
「女は変わるっていうけど
お前変わり過ぎだぞ・・・。」
そう言いながら樹木に手を当て
会話を試みた。
「・・・・。」
居ない。
一発でそう感じた。
返事が無いのではない
居ないのが分かった。
前回行った交信方法は体で覚えている。
方法というより一方的に小梅の
方から語りかけて来た。
あの時は本当に怖かった。
オカルトはちょっと苦手なのだ。
「えっと・・・。」
俺は手を当てたまま
プラプリの方を見た。
「出来る者がいるとすれば
アモンだけだったのですが
やはりダメですか。」
話せない事は分かっていたようだ。
プラプリは教えてくれた。
樹木化とは文字通り
精神も樹木になっていくそうだ。
なりたてほやほやの時は
誰でも会話が可能だったが
月日が経つにつれ
それは途切れ途切れになり
遂には感じられなくなった。
縁の深い者は長目らしい。
カルエルだけは
最後まで、かろうじて意志の
疎通が可能だったが
それもやがて出来なくなった。
それでもカルエルは
毎日、樹木に手を当て
その日の報告を欠かさなかったそうだ。
しかし、バングが現れ
それ以降、語り掛ける事を
する者は居なくなった。
寂しく笑いながら
樹木に語り掛けるカルエルの
幻が見えた気がした。
俺はダメなのを承知で
樹木にこれまでの報告をした。
「なわけで、今回の目的はハーレム作りだ。
バングは、そうだな・・・ついでに滅ぼしとくわ」
プラプリに礼を言い
宴会の予定されている建物に戻ろうとすると
壁の所でアルコとミカリンが
心配そうにこっちを見ていた。
「待ってろって言ったのに」
本当は聞かずに流したいが
聞かずには我慢出来ない。
そんな躊躇いたっぷりで
ミカリンが聞いて来た。
「お友達は・・・?」
「遅すぎた。二人共もう居ないや」
俺の言葉に瞳を涙でフルフルさせるミカリン。
なんでお前が泣くんだ。
俺だろ。
「だ・・・大丈夫?」
あーまた顔に出てるのかな。
アルコはアルコで一杯話したいが
上手く言葉に出来ずに
気持ちだけがオーバーブースト状態だ。
こいつも泣きそうになってる。
だから俺だろ。
「ああ、大丈夫だ。」
「本当?大丈夫、おっぱい揉む?」
はい
いや
「・・・揉む程無いだろ」
「バカー」
アルコが名乗り出る。
「私のは揉めると思います」
確かに成熟ボディだ。
しかし、なんか
こう言っちゃあ失礼千万なんだが
アルコの硬そうなんだよね。
「倫理的に出来ない」
もっともな理由を言った。
10歳だもんな。
すかさずミカリンが食いついて来た。
「僕には倫理適用されないの?」
「奴隷の時点で倫理もクソもないだろうが」
「あ、そうだね」
そのやり取りを聞いて
それまで微笑ましく見ていた
プラプリが血相を変えて参戦してきた。
「奴隷?!駄目だよアモン
なんでそんな事するの」
「いや、俺がしたかったワケじゃなくてな」
「理解出来ないよ。勝手に奴隷が
出来たっていうのかい」
こういう事にはうるさそうな善人だ。
俺は説明をした。
「呪いを返したらこうなったんだ」
ミカリンも補足してくれた
「そう、僕がアモンを奴隷にしようとして
返り討ちされたんだ」
「ねー」
「ねー」
呆気に取られているプラプリ
彼の中の奴隷のイメージが
今、音を立てて崩壊しているのだろう。
「それなんですが・・・・私は
奴隷にしてもらえないでしょうか」
何か悔しそうに言うアルコ
んー面倒くさい事になってきたぞ。
賑やかなな雑談を邪魔する様に
鐘の音とラッパが鳴り響いた。
音の不快感からして緊急事態が予想された。
俺は咄嗟にプラプリを見た。
その顔には里長の威厳が溢れる
のと戦慄が同居していた。
やはり緊急事態のようだ。
ただ脳内アラームは鳴っていない。
「里長ーーー!」
俺達の方に大人のエルフが
すごいスピードでやって来る。
大人という事は生き残り組で
精鋭の戦士だ。
精霊から風のサポートを受けて
走るその姿は歩幅と移動距離が
一致せずに異様に速い。
違和感がスゴイ。
「何事だ?!」
凛々しい声で言うプラプリ。
「敵襲です!」
伝令はもう俺達の所まで辿り着いた。
「相手は分かるか」
「はい。あの黒いやつです」
ミカリン
レベル上げようか。




