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ぞくデビ  作者: Tetra1031
427/524

第四百二十六話 魚民

嫌な予感程

良く当たるものだ。


目撃される事を避けて

ヒタイングの港町を横目に

海岸線を飛行していた俺は

上空にワイバーンの姿も無く

港町も平常運転だった事でホッとした矢先だった。


王城付近の上空に

ワイバーンだ。


「何で?!」


襲うなら人の多い港町の方だとばかり

思って居たのだが

現れたのは何故か王城のある地域だ。

元々戦争での疎開用だった

あの辺りに集落は無い。

人が居るのは王城だけだ。


俺は超音速加速に切り替えると

一気にワイバーンの群れに迫り

片っ端しから悪魔光線で退治していく

知能はそれ程でもないのか

力量差も考えず反撃を仕掛けて来るワイバーン。

まぁ追いかけなくて済むので楽なのだが

如何せん数が多い。

あまり近いので

俺は攻撃を近接に切り替える事にした。

悪魔光線だと流れ弾で

思わぬ被害が出るかも知れないからだ。


「私と踊ってくれーぃ」


俺はクワン先輩の口真似をしながら

創業祭を装備し

見よう見まねのミカリン空中剣術を試した。

多分、全然なっていないだろうが

腕力と創業祭の破壊力と

飴に群がる蟻の様なワイバーンのたかり具合から

傍目には無双している様に映るだろう。

何かモグラの方から特攻してくる

モグラ叩きだ。


「ふーっ何匹居やがったんだ。」


最後の一匹を倒した後

呼吸をしていないと言うのに

ため息と共にそう独り言を呟いた。

ダメージが入る事は無いのだが

ブレスを浴びせられたり

爪で引っ掛かれまくられるのは

気持ちの良いモノでは無かったのだ。


「・・・しまった。」


項垂れた事で気が付いた。

足元の地上では地竜の大群が

王城へ向け大移動中だった。


空と陸の二面作戦だったのか。


「先頭から叩かないと!」


そうボヤキながら

悪魔光線で焼き払いつつ集団の先頭を目指し飛んだ。

そして先頭集団まで追いついたトコロで

異常に気が付いた。


王城方面から登る土煙

地鳴りの音は足元の地竜と同じ感じだ。

つまりこれは

大型生物が大群で走って移動しているのだ。

一瞬、地竜の別動隊かとも思ったが

それにしては王城を通り過ぎてこちらに来るのは妙だ。

だとすれば王城からの出兵なのだが

それにしては凄い地響きだ。

騎士団は色々なのを生で見て来たが

ここまで派手な音は出さない。

更に言えば

騎士団ならば装備が揺れで奏でる

独特な金属音が聞こえるハズだ。

それが無い。


何なのか想像つかない。

地竜も俺と同じ考えなのか

進軍を止め

前方を注視していた。


そして土煙の隙間から正体が見えた。


「いやああああああああああ!!!」


俺は思わず悲鳴を上げた。

大群の正体は何と


ダガの群れだ。


マーマン

メスはお馴染みの人魚形態だが

オスは魚のボディに筋骨隆々の人の手足が生えた

4m程の魔物だ。


そいつらがアスリートの疾走フォームで

こちら向かって走って来ていたのだ。


もう魚

魚魚魚っ

乗りたくないビックウェーブだ。

魚は苦手な方では無いが

これはキモい

キモ過ぎる。


「掛かれーっ」

「「ボォォォォォオオオ!!!」」


低音の雄たけびと共に

地竜の大群に真っ向正面からなだれ込んでいく

大激突だ。


「ハッ!!!ッシ!!」


ある者は見事な剛腕で

地竜を殴り倒した。


「あなたソウスケって言うんでしょ」


ある者は勢いそのまま

地竜に噛みついた。

いや

歯が折れ・・・・ない

やだ地竜食いちぎってるヤダー。


地獄図だ。

手足の生えた巨大ピラニアが

見る見る地竜を食い散らかしていっている。


俺は加勢する事も忘れ

ただ呆然と足元の惨劇を眺めていた。

つか

加勢しなくて良さそうだ。


「おぉこれは救世主リディ殿ではないか!!」


大群の後方にいるマーマンの

1人が空中に居た俺に気が付いて

そう声を掛けて来た。


名前を呼ばれた事で

そいつの方を向くが

回りの奴もそいつの言葉に

何事かと俺の方を向いていた。

つまり何十という魚の視線に

俺は晒された。


誰が呼んだのか分からん。


呆然としていると

再び声を上げ手を振ってアピールしだした。


「俺だ!ダガだ!!」


いや

ダガなのは想像がついたんだ

ただ

どれがダガなのか分からなかったんだ。


「おおー久しぶりだな。」


手を振っているマーマンの所に着地した。


「俺の顔を忘れるとはヒドイぞ。」


いや

魚の顔なんてみんな同じだろ・・・。

分かるかっつーの


「再会を祝したいが今は有事

戦の後でもてなさせてもらおう。」


「ああ、その通りなんだが・・・

手伝う事はなさそうだな。」


ダガの言葉に俺も戦闘再開を試みようとして

戦況を見たが

圧倒的だった。

敗走をしない地竜は次々と葬られていく

前線から後退した分だけ

後方から交代要員が上がっていくスタイルで

常に最前線には一定のマーマンが

途切れない様になっていた。


更にヒドイ事に

後退したマーマンは負傷したのではなく


「もう食えん。・・・ゲップ」


と重たそうな腹を抱えて帰ってくる有様だ。

凄い生物だ。

以前、ドラゴン種を最強の生物と表現したが

俺の知る世界が狭かっただけかも知れない。


「ダガっ!!」


近くのマーマンが声を張り上げた。


「何事だデガ!!」


「いえ、私はグバです。」


自分も見わけ付いてねーじゃん。


「何事だグバ。」


「アレを!!空にもやはり」


グバが指さした方向の空にワイバーンの

第二陣の群れが見えた。


「むぅ先程の軍団が消えたので

不思議だと思っていたが

迂回して来たという事か。」


いや

第一陣は俺が・・・まぁいいか。


しかしこれはマズいかも知れない。

大地で踏ん張る肉弾戦ならともかく

空を飛べないマーマン達では

今度は逆に一方的に狩られる側になってしまうかも知れない。


俺はワイバーン討伐を

俺に任せるように進言しようとしたが

それより早くダガは指示を出した。


「全員、放射用意ーっ!!」


何すんの。


ダガの指示で周囲のマーマンは

何か深呼吸して腹を膨らませ始めた。

すごいすごい

ハリセンボンなどフグの仲間の魚は

膨らむ事が出来るが

マーマンもその能力がある様だ。

あっという間に体積は倍以上になった。

ただ丸いので強くなった様には見えない。


「てーっ!!」


ダガの号令で一斉に何かを噴き出し

元のサイズに縮んでいくマーマン達。

噴き出した何かは空中のワイバーンを

ことごとく切断していった。


ある一匹の口元から垂れたモノを見て

俺は確信した。


マーマン達の噴き出したモノは

高圧で噴射された水だ。


鉄砲魚の化け物というワケだ。

完全に出番を無くした俺は

ボーッと戦況を眺めていただけだった。


程なくして

戦いはマーマン側の圧勝で終わった。


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