第四百二十三話 最強の生物
「鱗があるということは爬虫類でございましょうか。」
1人だけ珍味を発せず
冷静に俺の絵を分析していたベルタが
そう漏らした。
厳密には違うのだろうが
「まぁ外見は爬虫類の親分って感じだな。」
「フムフム、では・・・。」
そう言うとベルタはチョークを取り
俺に色々と質問しながら
それぞれの改訂版を横に書いて行った。
こいつ絵が上手い。
ダークの浮世絵調とは異なり
小説の挿絵調だ。
「おぉ」
とか小さな歓声が上がる程
良く描けており
同じ物を描いたとは思えない。
くそ
でも助かった。
関係ないが
何でUFOとか犯人を目撃する人って
絵が下手な人ばっかりなんだろう。
ベルタは最後に古龍を描き終えると
赤のチョークでハンコ調に四角く囲った
鐘多とまるで印の様に付け加えた。
こいつもか
つか絵の上手い悪魔はみんなやるのかそれ
「助かったぞ。ベルタ」
「差し出がましい真似お許し下さい。」
俺の言葉に
行儀よく頭を下げ答えたベルタ。
嫌味でなく本当っぽい
「お大きさはどの位なのでしょうか。」
「これが一般的な成人男性な。」
総理の質問に俺はそう言って
棒線と〇だけの人マークを
ベルタの竜の横にそれぞれ追加した。
これは上手い下手ないだろう。
それでもちょっとドキドキしながら書いた。
「お・・・大きい」
「そんな・・・。」
爬虫類と先に聞いてしまったせいか
人の何倍もデカいと思っていなかった様だ。
総理以下人軍団は珍味から一転
恐怖をまき散らし始めた。
「で、なんで人間を襲うかと言うとな、食う。」
チョークを置きながらそう言うと
恐怖は更に増した。
「美味しいのでしょうか。」
「竜的にはご馳走のようだ。」
ふざけているのか
真面目に言ってるのか
ベルタも今一判断に迷う堅物キャラだが
俺はどっちでも可な返答をしておいた。
「ここに来るまで獣人の集落なども
訪れて調べたが今の所、被害はおろか
目撃例も無い。人を目指してやって来るぞ。
つまりココにもいずれはだ。」
一度言ったセリフだが
知識を得る前と後では
反応は如実に異なった。
要点だけ言っても伝わらない。
理解してもらう為の情報
それだけを先に言っても
飲み込もうとしない。
要点を先に言い
補足したところで
改めて要点を理解してもらうのだ。
面倒くさい様だが
これが一番速いと俺は思って居た。
予想通り
漏れて来る恐怖は最初とは
各段に違った。
これでも実際に遭遇すれば
もっと恐怖が漏れるだろうが
知らないと何も出来ずに硬直してしまうが
知っていれば知識が体を動かすモノだ。
生存率が少しはマシになるだろう。
避難訓練は真面目にやりましょう。
「じゃ・・・弱点は?」
そうだな
対峙するとなれば
それを知りたいよな総理。
「特に無い。相手の防御を上回る力で攻撃し
相手の攻撃力を上回る防御で守るしかない。」
絶望していた。
でもしょうがないんだよ。
伊達に最強の生物と呼ばれていないんだ。
特殊能力を持っていない通常の個体で
一対一でコイツを倒せる生き物は居ないんだ。




