第四百二十一話 ぷりぷりにしちまいな
アホらしくなって来たので
帰る事にした。
帰る前にナナイとダークに
召喚の解除を申し出て見たのだが
断られてしまった。
今は俺の魔力でほぼ完全に稼働出来るのだが
召喚で無くなってしまうと
降臨の少ないリソースの割り当てになってしまうので
弱体化は確実だそうだ。
俺が許す限り継続して欲しいと懇願された。
俺の方には特に問題無いので
そのままで行く事になった。
まぁもっとも解除の方法
それ自体を知らないんですけどね。
山脈沿いに飛行した。
前回の降臨場所
今は土砂に埋まってしまったが
もしかしたらそこに誰か
出てきているかも知れないと考えたのだ。
外れだった様で
何も感知しないままだった。
ついでなので
山に残ったベアーマンの集落と
湖の妖精キャスタリアの所にも
顔を出したが、どちらも竜の話には
はてなマークだった。
やはり人間種以外の所へは
出現しないようだ。
そのまま北に進み
クリシアまで足を伸ばした。
黒い教会付近なら人化しなくてもいいか
このまま悪魔男爵の姿で黒い教会正面まで着地した。
「なんか、また増えて無いか・・・。」
悪魔男爵像が並んで通路を形作っている恰好だが
前よりも数が増えた気がした。
相変わらずココは何がしたいのか
よく分からないトコロだ。
「これはこれはアモン様。」
像を眺めていると
背後の空から声を掛けられた。
ベルタだ。
人の姿だが背中からは翼が生えていた。
実はベルタの服の背中は翼を出す為に
セクシーにパッカリ開いていて
普段はマントで隠している構造だ。
服ごと生成する俺と違い
下等悪魔は色々と苦労するな。
たまにスカートめくりのように
マントをブワァってして
そのセクシーな背中を露わにして遊ぶのだが
かなり嫌がっていた。
「ベルタか、こっちは変わりないか。」
この平和な状態だ。
竜はまだ出現していないようだ。
しかしここにも人間は居る。
必ず来るだろうし
ネルドの噂もカジノに入り浸る
聖騎士や司教などからいずれは耳に入るだろう。
どうするかはともかく
先に教えて置こうと思ったのだ。
そして何よりここは
大量の悪魔市民を移民させた場所だ。
降臨の影響を受けているか
或いは俺の知らない降臨の情報が聞けると思っていたのだ。
「はい。変わった事と言えば実は・・・・。」
魔神と名乗る不届き者を捕獲し
今、説教中だそうだ。
俺は嫌な予感がしたので
そいつに会わせろと頼んだ。
「些末でございます。アモン様の御手を煩わす様な」
「いいから連れてけ、興味がある。」
「はぁ構いませんが。」
教会内の拷問部屋
・・・ヨハンここの教会にはあったよ。
で
今拷問中だそうだ。
なんでそんな事をするのか聞いたら
「結構、美味しい感情をお持ちなもので」
と何とも悪魔らしい返答だ。
清々しささえ感じた。
拷問部屋は地下で
召喚の洞窟とは方向の違う
回廊の先だった。
女子複数の掛け声と悲鳴が耳に届いて来た。
何してるんだ。
何か怖くなって来る俺をヨソに
ベルタは普通に扉を開けた。
「こちらです。」
扉の向こうに見えた光景。
縄で縛られた男が逆さづりにされていた。
真下には水を満たした桶だ。
縛った縄は天井まで伸び
滑車を経由して数人がかりで宙づりにしている。
緩めればそのまま下の桶に顔が浸かる構造だ。
「ぷーりぷりっ!ぷーりっぷり!!」
「ぎゃああああああ」
竹の棒をもったアンナが
嬉しそうに吊るされた男を
何度も何度も打ち付けていた。
かわいい笑顔だ。
でもやっぱり悪魔なのね。
ぷりぷりだ。
ダイヤモンドの方では無いプリプリだ。
江戸時代に実際に有ったといわれる拷問で
正しくは「ぶりぶり」と発音するらしいのだが
説明を聞いても全く理解出来ない。
イクメンの侍でこのシーンがあるが
余程強烈に印象に残ったのか
近年のアニメでカワイイ女子キャラが
主人公に施していた。
スタッフいくつなんだ。
唖然としている俺に気が付いた。
掛け声が止まると
アンナは打ち付ける手を止め
俺を見て声を上げた。
「「アモン様!!」」
被った。
吊り下げられていた男も
同じ様に声を上げたのだ。
そこで拷問組全員の血の気が引いて行った。
俺の知り合いを拷問しちまったヤベぇ
そんな声が聞こえて来そうだ。
オールバックの髪型は無様に乱れ
決め決めの衣装もヨレヨレの痩身の男
上唇の上に綺麗に刈り揃えられたヒゲも
口に合わせて変な形に歪んでいた。
「何やってんだ。ダッソ」
俺は指をさして大笑いしてやった。
拷問組の安堵のため息が合唱になった。




