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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第四十二話 カルエルのその後

エルフ里長は人型の寿命を迎えると

樹木化が訪れる。


それは巨大な樹木に成長し

その実が次世代のエルフ達そのものになる

彼らは動き話す木の実なのだ。


歴代の長は規則正しく

碁の目のように並び

その重ね合わせた枝の上に

床を作り、空中に広場を設け

そこで暮らしていた。


一人一人に精霊が付き

エルフを全力サポートしている。

死後は魂を長の樹木まで

運ぶのだ。

本人が強く希望していれば

生前の記憶や人格を

ある程度残して新生する。

生まれ変わりが出来るのだ。


この大陸のアチコチに

集落はあるが

交流は無い。

基本的に里以外の樹木には

宿れないので

里から離れて旅する事はしないのだ。


この集落は

前回の降臨の際

風の大天使ラハのついで攻撃で

長の樹木を全て失うという

致命的ダメージを負った。


長の樹木無しでは

もう新たなエルフは産まれないし

生き残ったエルフの魂も

帰る場所が無いのだ。


辛うじて生を拾ったエルフも絶望だ。

今滅ぶか

やがて滅ぶか

その違いだった。


そんな中

エルフでプレイしていた

大学時代の同級生が樹木化を果たし

辛うじて絶滅を免れる事が出来たのだ。


こうして新エルフの里が誕生した。


彼らは俺を救世主とし

最終決戦を終えて

俺が帰って来るのを

英雄の凱旋をずっと待っていたと言うのだ。


それは随分と長い事


「待たせたな」


大歓声の中俺達は

神輿みたいなのに乗せられ

里へと招き入れられた。


そのまま宴会だそうだ。


有難い今日は料理しなくて済む

ラッキーだ御馳走に・・・・

こいつらのタンパク源って


「プラプリちょっとだけ二人で話せないか」


大きな木造の建物。

どことなく神社を思い出す作りだ。

その中央の大広間が会場になるようで

今急ピッチで準備が進められていた。


俺達はその奥の小部屋で

待機するという事で

プラプリ里長が直々に案内してくれたのだ。


準備の指示に戻ろうとした

プラプリを俺は呼び止めた。


「うん、じゃあこっちへ」


なんか背中にミカリンとアルコの

何らかの意思が篭った視線を

感じるが前回に絡む事なので

遠慮してもらおう。


俺は直ぐ戻ると言って

プラプリと別室に来た。


部屋に入って腰掛けるなり

俺は唐突言った。


「虫は食えんぞ」


ちょっとだけビックリした顔に

なったプラプリはすぐに笑顔になった。

なんでも

以前とは違い

数が急激に減ってしまった事で

他種族との関わり無しでは

自衛もままならず

否応にも交流が生まれ

礼儀・文化など

理解が進んでいるとの事。


「お客さんには出さないよ。

以前はゴメンね。言ってくれれば

良かったのに」


そうは言うが

言えないよ。

厨房ですんごい量の料理を

準備しているのを見ているのだ

自分達、数名だけ特別料理を出せとは

悪くて言えなかった。


そういえば今回の里は

木の上のエルフの里形式では無く

通常の人里と酷似していた。


まぁ柱となる長樹木が

複数無いとあの作りは再現不可能だ。

雇い入れた職人の技術などからも

普通の建物になるのは仕方が無い。


丁度、お茶が運ばれてきたので

座って話をする事にした。


「それにしても良く俺がアモンだと分かったな」


「丁度、警備していたのが

数少ない生き残り組みでね」


「いや、外見がほら」


この通りチンチクリンだが

なんとエルフは外見でだけで

判断していないらしい。

じゃどこで判断しているんだ。

追及したが返答は理解を超えた。

ただ

年齢の差異は人ほど

常識のフィルターが掛からないのは分かった。


この人がこの年齢のハズは無い

別人に違いない。


こういうフィルターだ。


前世の人格・記憶を引き継ぐ

生まれ変わりが珍しく無いエルフならではの

感覚だ。


「後でタムラにも会ってやってくれよ」


そうか


助けた中に居なかった。

無事に転生出来たのか。

そうか

思わず涙が溢れそうになる。

これだから受肉は不便だ。


「あ・・ああ、そうさせてもらうよ」


気付かれない様にしたつもりだが

バレバレだろうな

プラプリは気を使ってツッコミを

入れては来なかった。


「そういえば。人増えたな

エルフ以外も居た様にみえたけど」


14年の間に順次、転生で

補充されてはいくのだが

如何せん赤ちゃんなので

立て直し初期の人手不足は

深刻だったそうだ。


閉鎖的だった部族だが

そんなことを言っている場合では無く

人族やベアーマンなど

頼れるつては全て頼ったそうだ。


そんな中で抜群の交渉力を発揮した

プラプリは自然な流れで里長になった。


「ガラじゃないんだけどね

そうも言ってられなくて」


「いや、堂に入ったモンだ

最初、分からなかったぞ」


イケメン男子っぽくなってるしな。


そんな中で村に常駐・移住してくれる

他人種もガンガン受け入れていった。


大人のエルフは生き残り組だけで

生まれ変わり1期組は

丁度、俺と同じチンチクリンだ。


「そうだ。カルエルは・・・。」


俺のセリフにプラプリの顔に

苦悶の色が浮かぶ。


覚悟はとうに出来ているのだろう

直ぐに説明をしてくれた。


「それなんだけど・・・すまない」


立ち上げ初期の頃

バングが現れた事が有り

カルエルは里を守る事と引き換えに

散ったそうだ。


「謝ってもどうにもならない事は

重々承知している。本当に」


「ああ、大丈夫。あいつ天使だから

死なないから気に病まないで」


謝罪に下げた顔をハッと上げるプラプリ。

今度はそっちが泣きそうだな。


「え、本当」


「先に教えて置くべきだったゴメン」


俺は天使のカラクリを説明した。


「で、あいつは上位天使だから

一度戻るとそうそう来れないだ。」


「そう・・・なんだ。ハハ良かった」


十年以上も良心の呵責に

苦しませていたのかと思うと

自分の不手際を呪いたくなる。


「謝るのは俺の方だった。スマン」


「体を張って里を守ってくれた恩に

なんの変わりも無いよ。感謝はそのままさ」


俺を責める事もせず

微笑んでいる。

イケメンは絵になるなぁ。


となると

もう一人、木になってしまった小梅が

気になる。


下らな過ぎる

普通に聞こう。


俺はプリプラの現状について聞いて見た。


プラプリは行ってみるのが

一番だと言い、ついて来るように

俺を促す。


俺は里長の後をついて

建物の外に出た。



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