第四百十五話 キャラバン編成
ブリッペとヨハンの追加のお陰で
重傷者及び蘇生可能だった者達は救われた。
それでもネルド、ネルネルドの人口は半分以下だ。
明日中にも残った物資を活用し
教会のある大きな村までの
キャバンが形成されるとの事だった。
無事だった建物
その中でも大き目の屋敷が
仮設の司令部となった。
人化で治療呪文を使ったので
早目に寝たかったのだが
俺はそこに呼び出された。
「処遇?」
昼間ビビビに暴行を働いた連中を
どうするのか。
それについて俺の意見が聞きたいそうだ。
ヨハンもユークリッドも
怒りを隠している様子では無い。
こう言う事態だ。
そんな事も起きる。
その事は良く分かっている様だ。
「うーん。ビビビは何て言ってるんだろう」
ブリッペの鎮静の効果もあり
ビビビの立ち直りは驚くほど速かった。
元々気が強いのか
心配を掛けまいと無理をしているのか
根掘り葉掘り聞いたり探ったりも嫌だったので
俺はビビビとじっくり話してはいなかったのだ。
「聞けねぇよ。」
ヨハンがトーンを落として返事した。
同じか。
「アモンさんの言いつけを破った罰だと
言っていましたが、本心は計りかねますねぇ。
ただ自分の要求を強く出して来る事は無いでしょう。
変に責任を持たせず
我々が強引に決めた方が彼女の負担も無いと思いますよぉ。」
ユークリッドは普通の調子で言った。
聞いたのか
スゲェな。
今後の予防の為にも
罰があった方が良いだろう。
無罪放免となれば「やらなきゃ損」となってしまう。
「罪状を書いた板を首からブラ下げて
強制労働で良いんじゃないのか。」
死刑では無いが
社会的には死だな。
「自殺すんぞ・・・。」
もし自分がその立場なら
ヨハンそうするのだろう。
しかし、そんな潔い人間なら
そもそもこんな卑劣な真似はしないと思った。
「その自由ぐらいは残してやって良いんじゃないか。」
俺は例の気持ち悪い笑顔でそう答えた。
自殺は無い。
恐らく「冤罪」或いは首謀者に脅されたなど
被害者を装う行動を必死に行うだろう。
首謀者辺りになると「あいつが誘ったんだ」的な
開き直りぐらいする。
基本
性犯罪者は性犯罪を犯罪だと認めていないフシがある。
無銭飲食などは食わなければ死ぬので
命の危機から来た行為だ。
暴力などはその行為に至る理由
自分ルールを破った者への制裁だ。
正しいかは別で理由は存在するのだ。
性犯罪は違う。
しなくても死なないし
頭に血が上ったのでもない
むしろ下半身に血は行ったのだ。
そんなに悪い事だと思っていないので
行為に及んでしまうのだ。
これを正すのは多分無理だ。
成功するかどうか分からない再教育より
こんな目に遭うならしない方がマシだ。
そういう罰の方が効果があると思った。
「ですねぇ。キャラバンの準備、道中も
労働力は必要です。彼等には
皆が嫌がる仕事をメインでやってもらいましょう。」
良い笑顔でユークリッドは言った。
俺のは半分冗談だが
この人の場合は100%本気だ。
取り合えずの急ぎの相談はそれだけで
後はドラゴンについて
二人は色々と聞きたかったようだが
眠気を理由に失礼する事にした。
「あ、アキュラ姉妹は今夜は
アベソーリに泊まらせよう。」
アリアやブリッペ
大人化してしまったがミカリンも居る。
心強い知り合いと一緒の方が良いと思ったのだが
司教二人は疑いの眼差しで俺を見た。
「俺はアモンキャリアで寝るから・・・。」
慌てて冗談だと二人は言って来たが
これは二人に言われたからでは無く
元々そういうつもりだったのだ。
広めに作ったとは言え
流石に人数が多く
寝床は潜水艦並みになってしまったのだ。
1人なら断然アモンキャリアの寝床が良い
慣れてるしな。
司教二人は仮設司令部で
俺はアモンキャリアで
そう言うワケでアベソーリは女の帝国になった。
仮設司令部の大き目の個人住宅前
庭も結構広めだ。
そこに巨大戦車と馬無しの馬車が並んだ。
もう時代もクソも無いシュールな光景だ。
「1人だと結構広いな。」
俺はキャリア内を見回し
取り合えずブラインドを降ろして目隠しをし
全裸になった。
「1人じゃなきゃ出来ない事をしないと損だと
意地を張って見たが、面白くも何ともないな。」
思えば全裸って不便だ。
持ち歩く収納が無いので常に手が塞がりがちだし
家具の角とかでもこすれば怪我したりもする。
「へーくしょん。」
後、冷える。
言わずもがなだが
思った以上に冷えたのだ。
「着るか・・。」
料理をしようと思ったが
フライパンを扱っている最中に
くしゃみでもしようものなら
そこら中にぶちまけてしまう。
汚れるだけならまだしも
皮膚に油が飛ぶとマジ痛い。
諦めて服を着用しようとした時
アモンキャリアの扉が開き
アリアが顔を覗かせた。
「アリア。」
俺は優しい笑顔でそう言うと
腰を振りながら出迎えた。
絹を裂くような悲鳴の後
アリアは涙ぐんで訴えた。
「何でいっつもそう言う事するんですか!!」
俺も首から罪状を書いた板を
ブラ下げられるのだろうか。




