第四百十話 持て余す色々
気になった箇所以外は
流し読みで細かい内容を覚えていない。
シンアモンさんから複写してもらった悪魔図鑑は
リスタートに受け継がれなかった。
うろ覚えながらも魔神アモンの能力
今思い返してみても盛り盛りだった。
前回、自分自身でテストして
表記は大袈裟だ。
これはシンアモンさんの見栄だと
クスクス笑いながら納得していたのだが
そうでは無かった様だ。
ヴィータに刻まれた聖刻での制限
これは俺の予想以上の抑制だったのだ。
加減速、方向転換などのテストを行いながら移動した。
傍目には豪快に遊んでいる様に見えるだろうが
本人はおっかなびっくりの非常にデリケートな操作だった。
「飛ぶだけでこれじゃあ。他の能力はどうなるんだ?」
呪い解除後の他の行動はアベソーリ作成で
金属生成を行ったくらいだが
違和感は・・・
今にして思えば妙に調子が良かった感じだ。
センサー系も軒並み向上している様だが
俺自身の確認能力が追い付かない
読み切れない文字数を一気に表示されても
人は読まないモノだ。
何かインストールする時の同意を求める画面とか
あの注意書きを全部読んでる人っているのだろうか
そんな感じなので
センサー系はあえてカットした。
飛ぶ事の集中が途切れるだけで
今は余計だ。
慣れてから見る事にしよう。
さて
問題は戦闘だが
それはこれからハッキリするだろう。
そうこうしている内にネルドが見えて来た。
ネルドの要塞は半壊していて
煙も複数個所から立ち上っているのが見えた。
周囲には大型弩砲の矢が刺さった状態の
ワイバーンが数多く息絶えて雪原に伏していた。
「矢、刺さるんだな。」
砦だけあって、かなり善戦したようだ。
転がっている死体の夥しい数から
これは大型弩砲の矢が尽きて
防衛の手段が尽きたと思われる。
これだけ倒して尚
敗走しなければならないのだから
一体どれだけの数のワイバーンに
襲撃されたと言うのだろうか。
俺はアベソーリの残弾数が心配になったが
アベソーリにはミカリンがいる。
俺と別行動なら存分に活動出来るだろう。
寒い場所は苦手とか言っているが
いざとなれば爆発的破壊力を発揮してくれる。
そんな確信があった。
ネルネルドの方角を見た。
戦場は直ぐに分かった。
ワイバーンが何匹も旋回している空域があった。
俺は超音速加速で現場に向かった。
ものの数分で空域に到達。
減速しながら低空飛行に移行した。
悪魔光線の射角を空に向ける為だ。
これなら関係無い相手に被害は無いだろう。
「やって見るさぁ。」
さっきの山で金属粒子の在庫は豊富だ。
俺は小手調べ的に悪魔光線を放った。
撃った瞬間に違いに気が付いた。
光線の発色自体が異なった。
赤みが失せ白に近い桃色だ。
音も派手になっていた。
空を切り裂く様にキレイにまっすぐ伸びた光線。
その軌道上に遅れて幾つもの爆発が発生し
大小さまざまな落下する物体が見えた。
何枚か抜いた様だ。
俺は調子を確かめるべく
威力などを色々調整しては
試し撃ちを繰り返し接近した。
殿を務めていたのか
それとも本隊そのものなのか
馬車の集団、その真上まで来ると
俺を見上げるゴンドの姿が
最後尾の馬車に見えた。
大きな弓を持っていた。
現役冒険者を退き
もう結構なお年だろうに頼もしい事だ。
アイリの無事も気になったが討伐が優先だ。
俺は上昇し残りを掃討した。
「こんなモンかな」
周囲に飛行している物体は無い。
終わった様だ。
今になって後悔した。
俺達が遭遇したワイバーンと同じだったかどうか
一匹ぐらい捕獲すべきだったか
ベアーマンや蜂人をデストロイした頃から
まるで成長していないな俺は。
ただ悪魔光線の威力、コスト、連射性能など
軒並み向上している事は体感出来た。
全開出力はちょっとテストするのが怖い。
前回も俺が溶解しないギリで撃てたが
先程の飛行の様に
制御出来ず
撃った瞬間に俺自身が蒸発とか
洒落にならない事がマジで起きそうだ。
これも飛行同様、継続しながら
出力をゆっくり上げるテストが良いだろう。
足元で歓声が上がっていた。
降りて挨拶でもしたいトコロだが
そうもいかない様だ。
ネルネルド方面の上空に
飛行物体が幾つも確認出来た。
「ヤレヤレだ。」
俺はすぐさま
ネルネルド方面に飛んだ。
なんかベレンから離れるつもりだったのに
戻ってないか俺。




