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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第四百九話 15歳の夜は恥ずかしい思い出が多い

秘術通信の内容は

未知の大型飛行生物の大群に襲撃され

ネルドは陥落したと言うモノだった。


「今、ネルネルドに撤退中だそうだが

掃討を食らってるらしい。

そんなワケで勝手ばっかり言って

悪いんだが俺とユーは救援に向かいたい。」


依頼する恰好ではあるが

断れば強引に行く覚悟だ。

今すぐにでも駆け出したくて

ウズウズしているヨハンだ。


「未知の大型飛行生物って・・・。」


俺の問いかけにはユークリッドが答えた。


「今、皆さんの腹に入った奴の

お仲間だと思いますよぉ。」


「予定変更だ。」


俺は女子軍団に振り返って宣言した。


「救援に向かう。ストレガ」


「はい。お兄様」


反論は無い様子だ。

本当に助かる。

良い妹だ。


「道案内任せた。ネルド経由で

ネルネルドに回れ。」


「分かりました。」


俺はブリッペを見つめて続けた。


「負傷者が残っていた場合は全て回収、治療任せた。」


「て事はアモンは単独で先行する気だね。

任されたよ。」


読むな。

手間が掛からないで助かる。

俺は頷いて答えた。

司教二人に向き直ると

俺は言った。


「走っていくのも止めないが

アベソーリに同乗するのも自由だ。

戦闘を考慮するなら乗るのをお勧めする。

無駄に体力を消耗しても良い事は無いだろう。

話している時間が惜しい、もう行くじゃあな。」


俺はそう言うと悪魔男爵バロン化して上昇した。


飛び過ぎた。

雲の上まで一瞬だった。

皆の動きを確認する間も無いが

見るまでも無いだろう。


行くか。


俺はネルドとネルネルドの中間地点辺りを

目指して下降しながら超音速飛行に入った。

急ぐぞ!

いきなり全開だ。


行き過ぎた。

山に刺さった。


「何だ?おかしいぞ・・・。」


困惑した。

こんな高速移動はした事が無いのだ。

俺は山の側面に深く突き刺さっていた。

周囲には金属反応が多い

丁度よいので補給しておく

ドルワルドの山々には良質の鉱石が多いのだ。


補給の最中に俺はMAP画面を開き

自分の居場所を確認した。


「嘘だろ。」


誰も聞いていないというのに

俺は声を出してしまった。

俺の刺さった山はネルドを遥かに超えた山脈だ。

もう少し頑張ればバリエアが見えそうな位置だ。

俺は自分の体表を確認した。

赤く光っていた。

大気操作を用いなかったので加熱する。

それは分かっていたが溶解寸前まで

加熱した事は無い。

この事は俺がかつて体験した事の無い速度で

飛行した証拠になる。


異常事態だ。


俺は自分の速度を把握して操作出来ていない。

某懐かしのシューティングゲームで言えば

青いベルを3個一気に取った感じだ。

速すぎて制御不能だ。


何が起こった。


今までの自分と何が変化したのだろう。

俺は腕を組んで考えた。

最後にバロン化したのは

ウル・ラハ戦だったが

やられっぱなしで

何も自己を改造してはいない。

その後

アリア達に偽馬車の残骸の鉄骨を

補給してもらい再生したが

偽馬車の素材は得に変わった事の無い

ごく普通の真鉄だ。

その後は肉体の回復でひたすら寝てただけだしなぁ


何でここまでの変化が

他に変わった事と言えば・・・・。


不意に脳裏に浮かぶ懐かしい声。


「そんな状態のあなたに勝ったなどと

自慢になりません。」


対ベネット・リベンジ戦の時

俺は腕の聖刻を見せた。

それを見たベネットの一言だ。

女神ヴィータに刻まれた聖刻は

俺の能力を弱体化させていたと言う事だ。


ミカリンとの呪いが解除された。


前回と違い

掛けられたのでは無く

返して掛けた方なのだが

本来、相反する属性を繋ぐモノだ。

俺の能力を制限してしまっていた可能性はある。


思えば前回から今回のリスタートの今まで

俺はずっと呪い状態だったと言える。

その縛りが無くなった状態は初なのだ。


「慎重に行こう。」


言って見れば

乗っていたバイクが変わった。

性能がまるで違う物なのだ。

50ccの原チャリ

信号から信号までアクセルは常に全開で

通勤していたのに

突然750ccにバイクが変わったとしたら

アクセル全開など自殺行為だ。


俺は補給を中断すると

自分が開けた穴を逆戻りで

恐る恐る脱出した。


穴の外壁はまだ高熱を保っていて

赤く光っていた。

立ち上る煙も凄い。

酸素が必要な生き物で無くて良かった。

この煙は絶対、肉体に良く無いモノだ。


穴の出口まで来ると

俺はMAP画面を開きっぱなしにして

ゆっくりと丁寧に重力操作を開始した。


浮く、微速移動

この操作は今までと変わりない様だ。


「加速してみるかぁ?」


怖い。

生まれて初めての2サイクルのスクーター

何も知らずにアクセルを開け

ウィリー走行で悲鳴を上げた。

15歳の夜の出来事を思い出していた。


俺はジェンガの終盤並みの慎重さで

加速していった。



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