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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第四百五話 てぇっ!!

完璧な密閉が仇になった。

まさか内部から浸水があるとは思っていなかったのだ。

最大加速で向こう岸に上陸すると

ミカリンはアベソーリを停車させ

皆で開けられるハッチを全て開けた。


新たに作成したテーブルセット一式

それの中の一つであるビーチベッドに

ヴィータを横にして

今、ブリッペが麻痺解除の応用呪文である

酔い覚まし魔法の治療を行っていた。


そして治療希望者が列を作っていた。

なんとかガマンしていたのだが

こういうのは匂いで不幸の連鎖が始まってしまう。

列にはユークリッド、アルコ、アリアと並んでいた。


サスペンションには拘ったので

乗り心地は悪く無いハズだが

聞いて見たトコロ

風景が全く見え無い揺れ続ける密室。

コレが宜しく無いようだ。


清掃ついでに大幅改修だ。


清掃は匂いに影響されない俺とストレガが

主に担当した。

ストレガにはそのまま改修の手伝いをしてもらう。


装甲版を開閉式にして

その内側はガラス窓にした。

正面装甲の強度は落としたく無かったのだが

ミカリンの「前が見えない」という苦情と

どうせこの世界にアベソーリの防御を

脅かす攻撃自体が少ない事もあって

正面も同様の改修を施した。


カーボンパネル自体が軽量なので

支柱も充分な強度を確保出来た。

普段はこのまま走行しよう。

ただ強風には煽られそうな気がした。


「断然こっちの方が良いよーっ」


再出発の際にミカリンがそう喜んだ。

左右のキャタピラのカバー部に

増設したサイドミラーも好評だ。

戦車っぽさからどんどん離れて行って

俺の内心は複雑だが


「やはり景色が見えると違いますねぇ」

「外気を入れやすいのも良いですね」


と生身組が喜んでいるのを見ると

俺の拘りの方がおかしかった事を自覚した。


これで良いんだ。

アベソーリはアベソーリだ。

馬車とか戦車とかじゃない

アベソーリという新しい乗り物なんだ。


ミカリンの操縦も見違えるほど安定した。

やはり見える見えないというのは

運転に関して重要だ。


もう横に付いている必要も無さそうなので

暇な道中に砲撃のテストと調整を行った。


元の世界の戦車を知っている者が見れば

アベソーリの砲台は小さくカワイイ。


この世界では敵の戦車がいないのだ

岩や城壁、騎兵やモンスターの防御値を考えると

過剰な威力になってしまうよりは

砲弾を小型化し弾数を多めに搭載出来る方が

有利だと判断したのだ。

弾の小ささに合わせて砲台は小さく

砲身も短くて済んだ。


それでもこの世界の大型弩砲バリスタに比べれば

別格の破壊力と飛距離と発射音だ。


射出で馴れているストレガですら

アベソーリの主砲、その初弾に驚いていた。

他の面々に至っては魂が抜けた様な表情になっていた。

とにかく轟音に耐えられない。

そう訴える者に急遽ヘッドホン式の耳栓を

作成し配る事になってしまった。


「こんなモンかな。」


調整を終えた俺は、そう独り言を呟いた。

有効射程1km

最大は15km程度だが射角を45度に取るので

これはもう狙いもクソも無い。

停車して初弾の着弾地点を参考に調整して

撃つしかないな。


「さぁみんな。使い方を教えるよ。」


俺はそう声を掛けたのだが

軒並みブーイングだ。

凄く嫌がっていたが


「そうだね。アモンと同時出撃が出来ないから

僕は覚えた方が良いよね。」


とミカリンの一言で

非戦闘員の表情が変わった。

渋々指導を受け入れる事になった。

1人1人射撃の指導をしていったのだが


「絶対に無理なのだわ!操縦で許して!!」


一発で泣きながら根を上げたヴィータ。

豊穣を冠する女神には

この破壊兵器の扱いは無理だろう。

運転の交代要員となった。


「ぶええブリッペ槍ガンバルから許して!!」


こいつも一発で泣きながら根を上げた。

槍を頑張るのではなく

槍が頑張っているのだが

まぁその辺は突っ込まずに

元々回復要員だ。

頭も良く状況判断も優れている。

その撤退の見切り速さは後に続く者がいない程

ぶっちぎりの実力だ。

なので戦車長、指揮官を任せた。


「イライラしますっ!!」


ほんの僅かな操作で着弾地点は数メートル変化する。

その細かい操作と命中の低さに

アルコは癇癪を起した。

なので装填手、弾頭を詰める係りだ。

それをお願いした。

アルコの腕力なら楽勝だ。


「こんなモンかなぁ。」


ミカリンは及第点だ。

なんでもこなすな。

ただ運転手としての重要性の方が高い

出来れば砲手は他に・・・・


「うふふ壊れて千切れて割れてしまえ。」


砲手決定。

アリアだ。

俺より当てるし

性格も向いているようだ。

楽しそうだった。


「辞退しても宜しいですかね。」

「俺もだ。途中で抜けるしな。」


司教二人はそう言って来た。

俺は快諾した。

この二人は俺と天使軍団と

どちらにも同時出撃可能だ。

篭ってアベソーリの運営をするより

外に出て戦ってもらった方が良い。


ストレガは何でも出来るように

全ての役割習得に熱心に取り組んだ。

七並べのジョーカー的役割を担ってもらおう。

本人もそれを希望していた。


「あらゆる事態でもお兄様の役に立ちたいです。」


なんとカワイイんだと

一瞬そう思ったが

瞳の奥に光る怪しい輝きを見て

これは

裏を返すと

あらゆる事態でも俺から離れないという

決意にも思えた。


「お、おう・・・頼りにしてるぞ。」


「はいっ!」


笑顔は素敵だった。

信じよう。


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