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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第四百三話 とりあえずとりもろす

「兄貴・・・これも元の世界とやらじゃ普通なのか?」


「まぁどこの国でも数十台は持ってるな。」


全長10m

居住性を重視したためボディの高さ3m

更に屋根に鎮座した砲塔まで含めると4mを超えた。

使用可能な場所にかカーボンをふんだんに使用したが

それでも車重は40tを超えた。

しかしコレでも大きさから見れば規格外に軽いのだ。


「ちょっと待って下さい。何と戦う為に

こんなモノが必要になるんですか。」


小刻み震えるユークリッドはそう言った。


「まぁ良く斬れる剣に対抗するのに

頑丈な鎧が出来てだな、更にそれ切る為の

剣が作られ・・・の、いたちごっこの慣れの果てだ。」


陸上最強マテリアル

そう


戦車だ。


「あなたの居た世界は

私が懸念している地獄の世界そのものです

最終的には誰も生き残らないのでは・・・。

よく滅ばないものですね。」


珍しくユークリッドから感情が漏れた。

それも軽蔑と尊敬が入り混じった珍味だ。

俺はつい、ほくそ笑んでしまう。


「まぁいつ滅んでもおかしくない

戦力を保持したまま継続中だ。」


正面装甲に爪で攻撃していたアルコは

早々に諦めて獣人化を解き

俺の所に戻って来た。


「本当に歯が立ちません。あんなに軽い素材だったのに

なんであんなに硬いんですか?」


組付けを手伝ったアルコは

カーボンパネルの軽さに不安を覚えた。

なので完成したらテストがてら

攻撃して見ろと言って置いたのだ。


「何でって、うーん

そういうモノなんだよ。」


ただアルコの不安は一転した。

この頑丈さは頼もしい。


「常識の範囲での攻撃はもう通じない車だ。」


通用しそうなのは

シロウの蹴りや天使や神の専用装備

俺の悪魔光線とかだろう。

そして、この場にその殆どが揃っている。

本当はそっちの方が恐ろしい事なんだが

見慣れぬ巨大車のインパクトの大きさに

皆はその事に気が付いていない様子だった。

なので、俺はユーと天子二人に

注意をしておいた。

苦労して作ったのに

すぐ壊されてはたまらん。

F1のピットクルーはどんな気持ちなんだろう。


「しませんよ。」

「槍折れたらヤダ。頼まれてもしないよ」

「斬り甲斐がありそうなんだけどね。」


三人の反応は分かれた。


「まぁ如何にドワーフが怪力でも

コイツには何も出来まいフハハハ。」


笑う俺にアリアが聞いて来た。


「そういえば当初は強行突破する計画でした。

これで耐えきるつもりだったのですね。

ネルドを介する今では普通の馬車でも良かったのでは」


普通よりも頑丈に作った

先の馬車もラハの攻撃一撃で沈んだ。

偽装を諦め開き直った新車両は

そのリベンジの気持ちを込めて

絶対壊れないレベルにしてやろうという

単なる俺の意地と趣味だ。


「ドワーフが攻撃をしてこなくても

ドルワルドには大型飛行生物など

危険な魔物も多いからな

頑丈に越した事はないのさ。」


正直に言うより

こっちの方が好感度が高いだろう

俺はそう言った。


「成程です。」


特に疑問に思わず

納得してくれるアリア。


「お兄様、これで良いですかーっ」


ストレガにはペイントを頼んだのだ。

出来た様だ。

脚立にのぼり戦車の四方にドワーフの文字で

「アモン在中ゴウ謁見希望」と書いてもらった。

弓も槍も投石も効かない

巨大な馬無し馬車にこう書いてあれば

先兵から上司へ更に指揮官へと

いずれはゴウが俺を召喚したがっている

国賓だと気付いてもらえる算段だったのだ。


ネルドを介すると決まった時から

必要は無くなったと思ったのだが

完成に近づく車両を見たヨハンが


「こんな得体の知れないモノが迫ってきたら

ネルドも砲撃してくるぜ」


と意見してきたので

結局、書く事にしたのだ。


「ナイスだ。ストレガご苦労」


と俺は読めもしないドワーフ文字なので

ロクに確認しないでストレガに答えた。

コイツが文字を間違う可能性はほぼ無い。


履帯、キャタピラを覗き込みながら

ブリッペが呟いた。


「理屈は分かったけど

本当に動くのかい?

キチンと曲がれる気がしないよぅ」


接地面積が多いと

どうしてもソリの底を連想してしまうようだ。

細い車輪の方が刺さって良いと

ブリッペは主張していたが

悪路にはキャタピラが最強なのだ。

同じ説明を何度するよりも

実際、動いている姿を見せた方が良いだろう。

百聞はなんたらだ。


俺は単独で乗り込み

履帯の動きにおかしな所が無いか

左右で見てもらう様に頼んだ。


エンジンは最新型だ。

投石の呪文はストレガの協力で

魔法陣化に成功したので

キャリアその他、既存のエンジンも

この方式にしてあった。

俺以外でも動かせる様になったのは

このお陰だ。

当然、戦車も同様だ。

キングクリスタルに充填した魔力を

魔法陣に流す事で投石魔法を発動させ

磁鉄鉱のピストンが動くのだ。

化石燃料を燃焼させないので

吸気・排気の必要も無く

殆ど熱を発しないので廃熱も考慮しなくて良い。

戦車の場合この廃熱の為の機構が

どうしても装甲が薄くなり弱点となるのだが

こいつにはその死角が無いのだ。

完璧な戦車だフハハハ・・・って

敵になる戦車もヘリもいない世界では

あまり意味が無いか。


俺は微速前進させた。


「ぶぇえ動いた気持ち悪い!!」

「なんかベルトが生き物みたいだよ」


危ないので頑丈な天使二人に

キャタピラの目視を頼んだのだが

もっとちゃんとした説明が出来ないものか

まぁ、不具合はなさそうだ

駄目な場合は即、履帯は切れるか

外れてしまうからな


俺は巻き込まれない様に

注意を促しながら

一通りの動作、前後進、左右転回を試した。

問題無いようなので

全員、搭乗してもらって出発だ。


アリアが操縦席の横に来て聞いて来た。


「この車、何て名前にするんですか?」


「名前かぁ・・・。」


どうしようか

元の世界の戦車の名前を思い浮かべた。

数字だけの奴とかもあるが

スターリンとかエイブラハムとか

指導者の名前を付けたりする戦車もあったよな。

そっちの方が味があるだろう。

俺は名前を決めるとアリアに告げた。


「アベソーリだ。」


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