第四百二話 とりあえずネルドへ
「何故、爆発が起きるのですか?」
真顔で問い掛けて来たユークリッドに
俺は何と返事をすれば良いのか
何も思い浮かばなかった。
何で爆発なんだろうね。
火を噴いて特攻してくるストレガに対し
俺は土壁を並べて対処した。
焚火のお陰で僅かに露出した地面のお陰で発動した。
土壁ならばダメージ無しで減速させる事が出来る。
そう考えたからだ。
甘かった。
並べた土壁全てを破壊し
ストレガは突っ込んできて
屋根替わりにしていた二枚の大岩に
激突し爆発したのだ。
「まぁお陰で居場所が分かったのですがねぇ
居場所を知らせるために一々爆発を起こしていては・・・。」
いや、一回目も今回も
狼煙替わりに爆発したわけでは無い。
爆発に気が付いたミカリンと
司教二人を運んでいたブリッペも
駆けつけて来てくれたのだ。
「ストレガーっ!!」
ヨハン号泣だ。
見ればストレガは骨が露出して燃えていた。
何か終わり間際のターミネーターみたいだ。
まずはストレガの救助だ。
ウォータシュートで炎を消し
回復呪文は俺と同じで厳禁だ。
魔神と同じで良いだろう
半魔化状態で悪魔力を注入していくと
衣服以外は見る見る回復していった。
人の事は言えんが
こいつもいい加減デタラメな体だな。
元はスケルトンだが
いまや新種と言って良い程
完成されていると
前回ゲカイが言っていたな。
能力で言っても魔神級に迫るだろう。
もうストレガという新たなモンスターだ。
「うっ・・・お兄様?」
「気が付いたか、人間なら死んでるぞ。」
・・・人間は衝突しても爆発しないか。
「あ・・・あの・・・。」
自分の状態を確認したストレガは
顔を赤くした。
俺はストレージから毛布を取り出して
被せてやり、補給を続けた。
「もう少し補充した方が良いな。
少し大人しくしていろ。」
両手で毛布を摘まんで顔半分を
隠す様にして頷くストレガ。
ずっとこう大人しいなら
最高にカワイイのだが
あの野獣のような性格は
どうにかならんもんか。
天使二人には司教と女神を頼み
先にキャリアに戻って貰った。
これで全開で治療が出来る。
やはり神と悪魔の同行は不便なだけでなく
互いに力の制限がキビシイ。
「結合が弱いなぁ。」
14年前の作成時の肉体
基本的に入れ替え無しで
使い続けているとの事
俺と違って補充による新陳代謝は出来ないそうだ。
流体として扱うので
金属疲労は起きないと思い込んでいたが
そうでも無いようだ。
丁度良いので
オーバーホールだ。
記憶を受け持っていると言う
頭蓋内の金属以外は総入れ替えだ。
気持ちが良いのか
ストレガはあんあんよがっている。
これどんな絵になっているんだ。
終了しデビルアイで走査してチェックだ。
俺のボディも久々の80度まで上がったせいで
立ち上る蒸気がすごい。
うん。
完璧だな。
「ああ、私の中がお兄様でいっぱいに」
変な言い方やめろ。
具合は良さそうだが火薬は使い切った。
俺が担いでキャリアまで飛んだ。
「ドルワルドか、成程な。」
復活したストレガにお茶を入れてもらい
安堵したヨハンは俺の計画を聞いて
そう漏らした。
「だったらネルドで使者を立てれば穏便に事を運べるぜ。
俺がネルドまで同行すれば、教会の変な横やりも
心配いらねぇだろ。」
教会に動向を知られたく無かったのだが
この二人に発見されてしまった今では
もう無意味だ。
この申し出は正直言って有難かった。
「何だ一緒に来てくれるのか。
ベレン空けても良いのか」
「どうせ戻れないつもりだったんだ。
それが戻れるんだから少しくらい良いだろう」
ヨハンは返り討ちにされ
俺の怒りを鎮めバルバリスを守る計画だったのだ。
「そうか助かる。」
ここは世話になっておこう。
「暖かい所が良かったのですけどねぇ。」
「同意なのだわ。」
何を言っているんだこの二人は
「何でお前らの希望が関係するんだ。」
そう突っ込む俺にユークリッドは一つの提案をして来た。
権能の分配をほとんど受けていないヴィータは
戻っても正直、戦力にならない。
足手まといで居心地の悪い中で過ごすより
神の再攻撃を予防するための人質として
このまま同行したほうが良い。
「皆の為に人質として、この身を捧げるのだわ」
そんなキラキラした目の人質が居るのか。
「人質なら私で十分です。」
おい妹よ。
公式的にはお前はもう死者だ。
人質にならんぞ。
「そうか。よろしくなヴィータ」
「えーっ?!」
俺の返事にブーイングの
大合唱になるとでも思っていたのか
不満の声はストレガだけだった。
珍しく慌てるストレガは
一人一人に聞いて回った。
「憧れのヴィータ様とご一緒なんて夢のようです。」
アルコはすっかり浮かれていた。
「天使は神に攻撃出来ないからねぇ」
「これ以上ない肉の盾だね。」
制御の外れた天使二人は
不敬モードのままだが
言っている事は理にかなっていた。
「えっと、安全な方が・・・。」
ストレガの目がアリアの迷いを見抜いた。
アリアの耳元で何かを囁くと
アリアは表情を変え反対派になった。
「わ私は反対ですっ!!」
何を言ったか知らないが
ストレガの悪魔化が著しい。
早目に封殺するか。
俺は冒険者ゼータに変化すると
アリアに詰め寄った。
「アリア、頼む。」
「はい。分かりました」
激昂するストレガ。
「ちょっとぉ!!」
そのままストレガに振り返り
同じ様にしてやる。
「また補給してやるから、なっ」
「はい。お兄様」
面倒くさいのか
やりやすいのか良く分からん娘達だ。
「解決ですねぇ」
呑気に言うユークリッドに
俺は突っ込んだ。
「いや、ヴィータは良いとして
ユークリッドの同行は別だろ。」
「人質の安全の為の御目付ですよ。」
何か絶対について来るつもりだな。
ヨハンは呆れた調子で行った。
「まぁネルドまではどうせ一緒なんだ。
道中ゆっくり決めりゃ良いだろ。」
同意するその他の面々。
とりあえずこの人数で出発は仕方が無いか
つか何人だ。
俺、ストレガ、アリア、アルコ、天使二人
司教二人に神様で9人かよ。
キャリアキャリーオーバーだよ。
この気候じゃ御者席にずっとは無理だ。
屋根の風呂に入りっぱなしなんてどうだ。
加減速でお湯がザバーッだ。
無理だ。
うーん、どうせ作成するつもりだったし
9人ぐらい収容出来るサイズで作るか。
「進行方向は変わったが行先は同じだ。
豪雪地帯を走破出来る車両を作成する。
野郎二人は手伝え」
快諾するヨハン。
首を傾げるユークリッド。
「これから作る?のですか」
ユークリッドは俺の生成を
個人用の武器防具レベルでしか見た事無いか。
説明するより見て手伝って貰う方が
理解が早いだろう。
「ホントに作れるのかい?」
疑いの眼差したっぷりのブリッペ。
ミカリンはウキウキしていた。
「僕も手伝うよ。」
天使化されると俺が活動しにくい
そうなると人化のままだが
非力な女子には危ないので遠慮してもらった。
「と言うワケでよろしくなアルコ、ストレガ」
「はい」
半獣人でやる気満々のアルコだ。
これは頼もしい。
「お兄様、私も非力な女子なんですが」
いや
非力でもなければ
厳密には女子でも無い。
有無を言わせず手伝わさせた。




