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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第四百一話 遭難ですか。そうなんです。

「凍え死ぬかと思ったのだわ。」


ミカリンに続いて

寒冷地に弱い奴だった。

豊穣とは程遠い地域だ。

前回は荒れ地を豊な大地に変えたりしていたが

気候まではどうにも出来ない様子だ。


「この低温でも育ってくれる

植物でもあればまだ違うのだけれども」


無いだろうな

だからこれだけ弱体化しているのだ。


予想外

そう言っては失礼かもだが

予想外にヴィータは俺達の近くまで来ていた。


ベレンを出発したヴィーターは

ネルド行きの商用馬車に乗り込み

ネルネルドで下車

そこで装備を整えて

勘を頼りに道なき道を進み

寒くて動けなくなっていたのだ。


大きな岩が二つ折り重なった隙間を

上手く利用してビパークしていたのには驚いた

アウトドアの知識があるのか聞いたが

少しでも寒くない場所に逃げ込んだだけだそうだ。

中の人が替わっても運が良さは変わらない様だ。


俺が直ぐに発見出来たのも

ビパーク前の雪原に

足跡でヘルプと描いてあったせいだ

飛行している天使がいるなら

これで分かると思った様だ。


「まさかあなたが来るとは思って居なかったわ。

これは誤算、いえ、あなたに会うのが

目的なのだから、むしろ大成功

計算通りなのだわ。」


「いや、どう計算したら凍死寸前になるんだ。」


俺の突っ込みに答える様に

目の前の焚火が軽く爆ぜた。


「計算違いなのは熱源の効果時間が

短すぎるせいなのだわ。

あの店主、良くも騙してくれたわね。」


「いや、それ点火用でな。

つっけぱなしで使うものじゃないから」


薪に火を点ける器具で暖を取るつもりだったらしい

頭が良いのか悪いのか

今一よく分からん女神だ。


上空からヘルプの文字を発見した俺は

直ぐに降下し微弱な不快感を感じた。

文字が無かったら

気が付かずに通り過ぎていたかもしれない

それほど微弱だったのは

岩の隙間で凍り付いていたからだ。


少しでも追加ダメージを無くしたい。

俺は人化してストレージから薪を出し

火を起こした後

回復呪文などを試し

意識を取り戻すまでに至った。


今は焚火でケトルごと沸かしたお茶と

鉄板で適当に焼いた食材を

二人で食っていた。


「相変わらず、すげぇ食うなぁ。」


中の人が違うので

前回とは違い仕草が上品だが

胃袋は同じだ。

大食漢はそのままだった。


「はっ!しまったのだわ。

上品に偽るつもりが食欲に負けて

つい、いっぱい食べてしまったのだわ。

でも、覚えていないだけで

既に大食漢なのは承知だったのね。

先に言ってくれれば

今までも我慢しないで済んだと言うのに

ヒドイのだわ。」


えーっと

色々考える奴なのは分かった。


「お前は今まで我慢を散々してきたんだ。

これからはしなくて良いんじゃないか

少なくとも俺の前ではしなくて良いぞ。」


「そうね・・・そうさせて頂くわ。」


前回のヴィータの腹の具合から

量を予想して焼いた。

バッチリの量だった。

俺の献身っぷりは

我ながら涙が出て来るレベルだ。


「じゃあ・・・早速、寒いわ」


はいはい

俺は薪を追加するべく動こうとするが

ヴィータは違うと言って

ふくれっ面だ。


ああ、そうか。


俺達は一つのブランケットに

一緒に包まった。


「子供姿より今の方が違和感を

感じないのだわ。」


呪いが解けた事で

俺の姿は大人状態に戻った。

覚えていなくても

感じるモノはあるのだろう。


「俺もだ。」


ストレガが女子の柔肌なんたら言っていたが

今すごく分かる。

ヴィータはたちまち暖かくなっていく


ブランケットから顔だけ出した二人は

焚火を眺めた。

うん、何か何もする気が起きない。

昼食を食ったのに

付き合いで今も食ってしまい

大分、満腹だ。


「宝珠はどうしたんだ?破壊されたとかで

神々連中は俺に殺されたと思って大騒ぎだぞ。」


俺の言葉にヴィイータの体に緊張が走った。


「げっ大変なのだわ。

何て事なのかしら

事態を収拾するどころか延焼させてしまうなんて」


何でも魔物から逃げる途中で

落としたらしい。

噛砕かれたっぽい。


「ほ報復に赴かないと言う事は

まだ傷が癒えていないのかしら・・・。」


「ああ、アレはただの脅しだ。

頭に来たから勢いで言っただけで

攻撃する気は無い・・・

仲間に被害が出たら、また話は別だがな。」


緊張がほぐれ

元通り柔らかくなるヴィータ。

わーい。


「傷の方はどうなのかしら

私も治癒が行えるのだけれども・・。」


「止めてください。死んでしまいます。」


「悪魔のあなたには、やはり逆効果なのね。

つくづく役に立たない自分が恨めしいのだわ。」


シュンとするヴィータ。

言葉遣いのせいで横柄な印象だが

実際は殊勝なんだな。


「お前は前回の功労者だ。

今回は休めよ。

何でまた人身御供なんて割を食う事に・・・。」


これだけでも戦う理由になりそうだ。


「これは自分が言い出したのだわ。

皆は止めたの」


「そこまで責任を感じる必要は無いぞ。」


「責任は感じていないのだわ。」


ありゃ

そうですか。

気合が抜ける俺に対して

ヴィータは逆に真剣さが増していく

何だ?


「自分でもそう言っていたのだけれども

嘘だった事が今なら理解できるの

責任という耳障りの良い言葉で

誤魔化していたのだわ。

私は

私はただ

あなたに会いたかっただけなのだわ」


何てカワイイ事を言うんだ。

よし可愛がってあげようじゃないか

二人の熱い情熱で雪が解け

雪崩になったらゴメンね。


俺はズボンを降ろそうと

金具を手探りで弄った。


「じゃ・・・じゃあ・・・。」


その時、遠くから迫る爆音。


この岩の隙間から見える風景は

視界にしておよそ10度程しかない。

その隙間を一直線にこちらに向かって

何か飛んでくる。

そいつの後ろで雪柱が激しく立ち上っていた。


「お兄様!奴との戯言を止めろ!!」


「しゃ・・・シャア?!」


突然の事態の急変にヴィータは

目を丸くした。


「な何事なのだわ?!」


「奴が来る!」


逃げなければ

立ち上がろうとした俺だが

中途半端に下ろしたズボンに足を取られ

ヴィータに覆いかぶさるように転んでしまった。


「いけないのだわ。許して」


いや

今そんな事をする余裕は無いぞ。

大物だな。


見えたのだろう

再びストレガは悪魔になった。

黒いオーラを纏い何か叫びながら突っ込んで来た。



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